Daily Archives: 2014年2月27日

解雇130(乙山商会事件)

おはようございます。

さて、今日は、外付けHDDの持ち帰りを理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

乙山商会事件(大阪地裁平成25年6月21日・労判1081号19頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが懲戒解雇されたが、当該懲戒解雇は解雇権の濫用であり無効であるとして、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに解雇後の賃金及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、違法・無効な懲戒解雇により損害を受けたとして、その賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効
→平成24年1月18日から本判決確定の日まで、毎月25日限り、月額24万1400円の割合による金員+6%の遅延利息を支払え。

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 ・・・Y社の就業規則44条7号は、28条から37条までの規定に違反した場合であって、その事案が重篤なときは、懲戒解雇に処すると定めており、29条4項は、服務心得として、会社の業務上の機密及び会社の不利益となる事項を外に漏らさないことを定めている。
これを本件についてみると、Xが本件ハードディスクをXの自宅に持ち帰った事実は認められるものの、本件ハードディスクに保存された情報が外部に流出したことは確認されていないのであるから、Xが本件ハードディスクを自宅に持ち帰った行為が29条4項に該当するとはいえない

2 ・・・懲戒解雇は、懲戒処分の中でも従業員の身分を奪う最も重い処分であるから、懲戒解雇事由の解釈については厳格な運用がなされるべきであり、拡大解釈や類推解釈は許されず情報が外部に流出する危険性を生じさせただけで、情報を「外に漏らさないこと」という服務規律に違反したことと同視して懲戒解雇ができるとのY社の主張は採用できない
なお、仮にY社の主張を前提としても、就業規則44条7号は、服務規律違反の「事案が重篤なとき」に懲戒解雇に処すると定めているところ、情報漏洩の事実を認めるに足りる証拠がない以上、服務規律違反の「事案が重篤なとき」に当たらないことは明らかであるから、いずれにしても就業規則29条4項違反を理由とする本件懲戒解雇には理由がない

3 Y社は、Xによるハードディスクの無断持帰り及びY社の業務上の秘密及びY社に不利益となる事項を外に漏らした行為が普通解雇事由にも該当するとして、予備的に普通解雇の意思表示をしたものであるが、本件ハードディスクの無断持帰りによって、Y社に不利益となる情報が外部に漏洩した事実は認められないから、情報漏洩を理由とする普通解雇には理由がない。 

非常に参考になる裁判例です。

懲戒解雇の難しさがよくわかりますね。

就業規則の規定を素直に読めば、上記のような判断になるのでしょうね。

会社が、機密情報については、漏洩のリスクを極力回避するため、従業員に対して外部への持ち出しを禁止することは合理性があります。

問題は、このルールに違反した場合に、懲戒解雇を選択できるのか、という点です。

今回の裁判例は、漏洩の事実がないことを重視し、解雇を無効と判断しています。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。