Daily Archives: 2014年8月8日

解雇148(富士ゼロックス事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、勤務成績不良などを理由とする中途採用者の普通解雇に関する裁判例を見てみましょう。

富士ゼロックス事件(東京地裁平成26年3月14日・労経速2211号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として稼働していたXが、Y社から解雇されたことから、同解雇は、解雇権を濫用するものとして無効であると主張して、Y社との間で雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社に対し、雇用契約に基づき、賃金、賞与の支払いを求め、併せて、不法行為に基づき、損害賠償金600万円の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、事前に指示事項を明確に取り決めていたにもかかわらず、訪問営業の計画と行動報告を上司が確認することを目的として作成を指示された行動管理表の作成及びこれをめぐる上司への報告や連絡等について、何度となくこれを怠り、あるいは、なおざりな記載、対応をしていたものといえ、服務上の問題を強く生じていたといえるほか、これらが繰り返されていたことに照らせば、およそ改しゅんの情もみせていなかったといえる
上記説示の点に照らせば、Xは、銀座支店とNB第三支店に配属されていた平成21年10月から平成22年7月までの間に、多数の服務上、能力上の問題を生じていたこと、そして、警告書によるものやこれによらないものも含め、度重なる注意、警告等を受け、あるいは、職場環境を替え、研修も受け、自らの服務姿勢を改め、改善するといった機会も持ったのに、こうした服務上、能力上の問題はなお改まらない状況にあったことを指摘することができる。…本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるものとはいえない。

2 Y社人事部の社員が平成22年8月2日、本件解雇の解雇理由に関してXと面談をした際、同社員が、Xに対して信を措けなくなっている経過について話すくだりの中で、「身障者としては用済みですよ。」といった発言をしたことが認められる。
もっとも、同発言は、Y社が、Xの申告していた障害を踏まえてXの採用を決定していたものであるのに、Xが、認定に係る障害を変更させ、しかも、それがY社に対して特段の報告や連絡のないまま、Xの随意になされたものであったこと、以上の点を踏まえ、同社員において、そのような対応は問題ではないかと問題視する発言をしていたところ、Xが、「はあ、障害がなかったら用済みということなんですか。」などと申し向けたことに伴い、そのようなことであれば、Xの年齢等にかんがみXを採用するなどしなかったことを言明する趣旨で発言したものであることが、同証拠における前後の会話内容から明らかである。
そうしてみると、上記発言が、その措辞、表現において不適切であるとはいえても、上記の点にも照らせば、直ちに社会的相当性を欠くものとはいえず、不法行為が成立するとまでは認められない。

成績不良や能力不足を理由とする解雇の場合には、上記判例のポイント1のように、教育・指導をし、改善の機会を与えてあげることが必要です。

解雇事案に限りませんが、裁判所は、プロセスを重視しますので、「いろいろやったけど、改善しなかったので、やむなく解雇しました」ということを明らかにする客観的証拠を用意しなければなりません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。