有期労働契約52(福原学園(九州女子短期大学)事件

おはようございます。

今日は、短大講師に対する体調不良等を理由とする雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

福原学園(九州女子短期大学)事件(福岡地裁小倉支部平成26年2月27日・労判1094号45頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結し、Y社の運営する短期大学において講師として勤務していたXが、Y社の行った雇止めは無効であると主張して、労働契約上の地位の確認及び未払賃金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 期間の定めのある労働契約は、期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態になったとはいえない場合であっても、労働者において当該労働契約で定められた期間の満了時に当該労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合には、解雇権濫用法理が類推適用され、使用者による雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、当該契約の期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は、従前の労働契約が更新されたのと同様の関係となるものと解される。
これを本件についてみると、以下において検討するとおり、Xにおいては本件労働契約で定められた期間の満了時である平成24年3月31日当時、更新の実績が一度もなかったものの、Xにおいて本件労働契約が少なくとも3年間は継続して雇用され、その間に2回更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めるのが相当である

2 Y社は、本件訴訟係属中である平成25年2月7日、更新されたとみなされた後の本件労働契約期間が満了する日である同年3月31日限りでの本件予備的雇止めを行った。本件予備的雇止めについては、改正後の労働契約法19条2号により、労働契約が更新されたものとみなされるかが問題となる
・・・本件雇止めについては、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものとして、本件労働契約は新たな契約満了日を平成25年3月31日として更新されたのであるから、本件雇止めのみをもって直ちに労働契約法19条2号該当性が否定されることにはならないというべきである。
そして、契約期間の満了時における合理的期待の有無については、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情を総合的に勘案すべきものと解されるところ、本件労働契約におけるXの雇用継続への合理的な期待を基礎付ける事情について変更はみられず、その他新たにこれを否定するような特段の事情も見当たらない。

3 次に、労働契約法19条が規定する更新の申込みは、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものであれば足りると解される
本件においては、Xは、本件予備的雇止めの効果を争い、本件予備的雇止め後も本件訴訟を追行して遅滞なく異議を述べたといえる以上、本件予備的雇止めに対する反対の意思表示をして本件労働契約の更新の申込みをしたものと認めるのが相当である
そして、訴訟係属中にY社が争っていることのみをもって、有期労働契約が更新されたものとみなされるか否かの判断に影響するのは不当であるから、訴訟係属中になされた本件予備的雇止めについても合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものというべきである。
したがって、本件労働契約は、更新されたものとみなされた後の平成25年3月31日の契約期間が満了した後も、労働契約法19条2号により、従前と同一の労働条件で再度更新されたものとみなされる。

労働契約法19条の規定に関する裁判所の判断です。 是非、参考にしてください。

特に判例のポイント3は、今後、労働者側としては有効に活用したい点ですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。