不当労働行為97(芳賀通運事件)

おはようございます。

今日は、組合員の転勤指示を時代とする団交と不誠実団交に関する命令を見てみましょう。

芳賀通運事件(中労委平成26年6月18日・労判1097号93頁)

【事案の概要】

平成21年8月、Y社は、海上コンテナ運転手であって東京都内の自宅から東京営業所に通勤し、貨物自動車運送事業関係法令により実施が義務付けられた乗務前後の点呼を受けていなかったXに対し、今後は八千代市に所在する八千代事業所で点呼を受けるよう指示した(転勤指示)。

その後、Xは、組合に加入し、組合はY社に対し、団交を申し入れた。

Y社と組合は、平成21年9月から平成22年1月までに5回の団交を開催し、組合は、Xの現職復帰を求めたのに対し、Y社は、法令に則り八千代事業所でXの点呼を行う必要性や東京営業所は法令に則った拠点として点呼を行える場所でない旨および東京営業所を法令に則った拠点とすることができない事情を述べ、Xの原職復帰要求に応じられないことを説明した。

平成22年1月29日、Y社は、組合に対し、これに以上正常な団交を行うことはできなくなった旨の通知を行い、組合が同月30日から同年3月12日までに申し入れた4回の団交に応じなかった。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 Y社は、本件団交においてXの原職復帰要求に応じられない理由を説明し、八千代事業所に転勤する場合の経済的負担の軽減策及び職種変更により東京営業所で勤務する方策を提案しており、これらの対応が不誠実であったとはいえない。

2 加えて、本件団交においては、組合員による会社を罵倒ないし恫喝するような発言や、組合員が口々に大声で発言して発言内容が聞き取れない状況ないし会社の発言が遮られる状況や、XがT社長に殴りかかろうとする場面などがあり、正常な交渉の実施が確保されていたとは言い難い状況で交渉が行われており、Y社は、そうした状況にあっても、Xを原職復帰させられない理由を繰り返し説明し、八千代事業所に転勤する場合の経済的負担の軽減策及び職種変更により東京営業所で勤務する方策を提案し、これらに応じるよう求めていたものである

3 よって、本件団交におけるY社の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たらないとした初審命令の判断は相当である。

上記命令のポイント2のような団交での様子をしっかり記録しておくことが大切です。

節度を欠く団体交渉が続く場合には、会社側は、団体交渉を打ち切ることも検討しましょう。

不当労働行為だと言われますが、あまりに酷い場合にはやむを得ないでしょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。