Daily Archives: 2015年9月18日

不当労働行為119(甲労働者組合事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合に対する情宣活動の差止め等が認められた裁判例を見てみましょう。

甲労働者組合事件(東京地裁平成27年4月23日・労経速2248号12頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y組合の情宣活動により平穏に生活を営む利益(人格権)を侵害されたなどと主張して、Y組合に対し、人格権侵害に基づく妨害排除請求権により、Y組合の行為の差止めを求めるとともに、Y組合の違法な情宣活動により精神的苦痛を被ったなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償として、損害金275万及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

情宣活動の差止めを認める。

Y組合はXに対し、55万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 ・・・以上の点に照らせば、本件行為は、いかにそれがA社の不当な措置等に関し、Bから納得し得る説明を求める趣旨に出たものであったとしても、元配偶者であり私邸たる本件居宅に居住するにとどまるXにおいて、本件行為を受忍すべき理由はなく、本件行為は、Xに対する関係で、その私邸で平穏な生活を享受するというXの人格権を侵害するものであったといわざるを得ない

2 使用者の代表者であっても、私生活上の権利は尊重されるべきであるから、仮に本件居宅にBが居住していたとしても、私生活の中心なる場である本件居宅において、Y組合がBに対し団体交渉に応じるよう要求し、本件行為を行うことが正当化されるわけではない。まして、本件では、本件居宅にはBは居住しておらず、元配偶者であるXには本件居宅において本件行為を受忍すべき理由はないから、Y組合が主張する事情は、本件行為の違法性を否定する理由となるものではない。それのみならず、使用者であるA社の破産開始決定後になされた本件行為に係る団体交渉の申入れ等の行為(B宛に解雇や労働債権等に関して団体交渉を申し入れる行為)の正当性は、Bが代表者の地位を失い(会社法330条、民法653条1項)、破産財団に関する権限が破産管財人に専属する(破産法78条1項)こととなったことに伴い、そもそも容易に是認し難いし、その実効性にも疑問がある
さらに、本件仮処分決定が効力を生じた後になされた本件行為については、法の定める手続に則ってなされた裁判を無視し、法秩序を蹂躙するものであって、到底容認することができない

3 Y組合は、平成25年10月18日以降、Y組合が本件居宅への訪問行為をしていないことについても指摘するが、Y組合は、繰り返し本件居宅で本件行為に及んでおり、本件行為のなかには、応対に出たXやD弁護士の指摘や意向にもかかわらず行われ、本件仮処分決定後にもなされたものもあること、Y組合が現時点においても本件行為は正当である旨主張し続けていることに照らせば、同日以降、訪問行為が行われていないからといって、差止めの必要性が失われることにはならない

これだけやっても支払う金額は55万円と遅延損害金ですから、まったく抑止力にはなりません。

そういう意味で、組合活動は、威力があるのです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。