Daily Archives: 2017年3月16日

不当労働行為163 組合が求めた資料を提示しない対応が不当労働行為にあたらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、年末一時金を議題とする団交における会社の対応等が不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

テーエス運輸(一時金)事件(兵庫県労委平成28年11月10日・労判1148号93頁)

【事案の概要】

本件は、年末一時金を議題とする団交における会社の対応および労使交渉が妥結していないことを理由に組合員に対する年末一時金の支給を遅らせたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 本件一時金の提案額の根拠をY社の財務状況との関係で説明する場合、財務諸表を基本として説明すれば足りると考えられるところ、本件一時金交渉において、Y社が提示した運送管理表は、損益計算書の内容と類似の内容が記載されている資料であり、・・・また、同じくY社が提示した別表は、その運送管理表に記載されている数値に係るより詳細な説明資料であるといえるので、Y社が運送管理表及び別表を提示して説明していることからすると、本件一時金の提案額の根拠や本件一時金の原資の有無について、財務状況との関係で必要な資料を提示して説明しているということができる。

2 ・・・Y社は、単に、本件一時金について、妥結できていないから支払えなかったに過ぎず、その後の経過をみても、Y社があえて組合と妥結しないようにしたとも認めることはできない。
そうすると、組合が団体交渉においてY社の財務状況について質問するという正当な組合活動を行った故に、Y社は、本件一時金を支給しなかったということはできないので、本件一時金を支給しなかったことが、組合員に対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入に該当するという申立人らの主張には理由がない。

ベースアップや賞与、リストラ等に関する団体交渉の中で会社の決算資料の開示を求められることがあります。

いかなる資料をいかなる範囲で開示すればよいのかについては顧問弁護士に確認をしてください。

理由なく開示しないと不当労働行為に該当しますので注意しましょう。