Monthly Archives: 8月 2017

本の紹介704 お金を稼ぐ人は何を学んでいるのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
お金を稼ぐ人は何を学んでいるのか?

いろいろな本の名言を引用している感じの本ですね(笑)

タイトルと内容の関連性は薄いですが、そんなことはよくあることなので問題ありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ここで重要なのは『読書と体験』のバランスです。読書に明け暮れても、実地に知識を試す機会をつくらなければ意味がありません。じつは成功を手にしている人は、知識の蓄積を実地にフィードバックすることによって、成功を引き寄せている場合が多いのです。・・・『成功』している人は、見識を行動に変えるスピードが優れているのです。」(130~132頁)

まあ、やっている人からしてみたら、ごく当たり前のことです。

本をどれだけ読んでも、セミナーをどれだけ受けても、実際に実行に移さなければ、現状は1ミリも変わりません。

そりゃそうですよね(笑)

いつの世も「知っているか知らないか」ではなく「やるかやらないか」で差がついているわけで。

人生を変えたいならば、行動に移す以外に方法はないと確信しています。

賃金136 就業規則の不利益変更と労働者の同意の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、就業規則改訂の無効及び差額賃金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

ケイエムティコーポレーション事件(大阪地裁平成29年2月16日・労判ジャーナル63号43頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xらが、主位的請求として、Y社に対し、平成11年4月1日施行給与規程に基づいて、本件給与規定に基づいて計算された賃金と現実にY社から支給された賃金との差額賃金の支払、本件給与規定に係る賃金額を前提として、平成11年4月1日施行の退職金支給規定に基づいて、同退職金の支払を求め、そして、Bが、Y社に対し、深夜勤務に係る時間外割増賃金の支払とともに、労働基準法114条に基づく付加金等の支払を求め、予備的請求として、Xらが、Y社に対し、平成12年給与システム及び平成22年10月の給与システムに基づいて差額賃金の支払及び退職金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

就業規則の改訂は無効
→Xらの主位的請求をすべて認容

【判例のポイント】

1 Y社が、仮に、就業規則の不利益変更に該当するとしても、Xらは、本件誓約書に署名押印していることから、同不利益変更に関して、Xらの同意があった旨主張するが、本件誓約書への署名押印というXらの行為がXらの自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはおおよそ認められない

2 平成20年就業規則及び平成21年就業規則と平成11年就業規則及び本件給与規定を比較すると、同変更による労働者側の不利益の程度は大きいと認められるところ(変動の具体的な基準や決定方法等も規定されておらず、Y社の恣意的な運用を許す内容といわざるを得ない)、他方で、同変更に至る経緯、同変更の必要性等その合理性を基礎付ける個別具体的な事実に関する事情が明らかとはいえず、同変更については、合理性があったとは認められないから、同不利益変更は、無効である。

労働条件の不利益変更をする場合には、近時の判例の傾向を踏まえた上で慎重に行いましょう。

特に労働者からの同意については非常に厳しくその有効性を判断されますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介703 自分が信じていることを疑う勇気(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
自分が信じていることを疑う勇気

帯には「『思い込み』を疑うことで無限の可能性が広がる!」と書かれています。

タイトルからもわかるように、常識や固定観念を疑ってみることを説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちは大きな間違いをしています。それは因果関係です。心が現実を映し出す鏡なのではなく、現実が心を映し出す鏡なのです。なぜなら現実が何かを決めているのは私たちの心だからです。にもかかわらず、私たちは現実の方を変えようと必死になります。例えば、他人の意見や社会を変えようとします。人によって対象こそ違えど、多くの人が自分ではなく環境を変えようと試みるのです。・・・変えるべきは現実世界ではなく、自分の心です。自分の見方、考え方を変えれば、現実の在り方が変わります。」(200~201頁)

これも考え方の習慣の問題ですね。

どうもうまくいかない現実を変えるために必要なのは、環境ではなく、自分の心、見方、考え方、もう一言加えるならば、日頃の習慣です。

他人や周りの環境のせいにするくせがついていると、なかなか今のうまくいかない状況から脱することは困難です。

うまくいかない理由は他人や周りの環境が原因ではないからです。

うまくいく人はどこにいたってうまくいきますし、その逆もまたしかり。

すべては自分の心、見方、考え方、習慣の問題だと考えるところからしか何も始まりません。

不当労働行為172 不当労働行為を理由とする会社に対する損害賠償請求と慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ユニオン等の会社に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

引越社事件(名古屋地裁平成29年3月24日・労判ジャーナル63号19頁)

【事案の概要】

本件は、X組合の支部長であるAが、Y社によって、名誉を毀損され、かつ、プライバシーに属する情報を公開されたなどと主張し、また、X組合が、Y社の上記行為は、ユニオンに対する不当労働行為に当たると主張して、いずれも不法行為に基づき、慰謝料ないし無形の損害として、Aにつき300万円、X組合につき100万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はAに対し30万円+遅延損害金、X組合に対し20万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Aは、X組合Y社支部の支部長の地位にあり、X組合とY社の紛争について大きな影響力を持っていること、公表された情報の種類は、前科や個人の内面に関わる思想などプライバシーに係る情報の中でも保護の必要性が高いものではなく、また、住所については、市町村までの情報にとどまっていること、Y社自らが広く第三者に公表したものではなく、報道機関である物流タイムズ社に対し、同社からの取材を受ける過程で伝達したにすぎないことが認められ、平成27年2月以降、X組合とY社との間には激しい対立があり、運送業界の業界紙を発行する物流タイムズ社がこれに関心を抱き、少なくとも支部長の地位にあるAの個人情報を伝達することの社会的な意義、必要性は高いと認められるから、Aの個人情報を公表されない法的利益がこれに優越するとはいえないこと等から、Y社が、物流タイムズ社に対し、Aのプライバシーに係る情報を公表したことについて、不法行為は成立しない

2 本件掲示行為は、Aの名誉を毀損するものであり、これにより、Aが精神的苦痛を被ったことが認められ、そして、本件張り紙はY社及びY社グループ会社の店舗という特定の場所に掲示されたものであり、新聞、週刊誌、書籍などのマスメディアによる名誉棄損と異なることを考慮した上で、本件張り紙が掲示された店舗数及び掲示されていた期間等から、Aに対する慰謝料は30万円と認めるのが相当である。

3 本件掲示行為について、本件張り紙は、読み手であるY社の従業員をして、X組合への参加を躊躇させ、又は、既にX組合に加入済みの組合員をして、同組合との信頼関係を低下させるおそれがある内容であること、Y社は、現に、X組合から脱会した従業員との間では、個別の和解を成立させるという切り崩し的な手法を用いており、本件掲示行為についても、X組合の活動を妨害し、又は、X組合の組織の弱体化を図るというY社の意図が推認できることなどの事情が認められること等から、Y社による本件掲示行為は、X組合に未加入の従業員に対しては、同組合に加入するか否かという、既にX組合に加入している従業員に対しては、同組合を脱退するか否かという、労働者ないし組合員が自主的に判断して行動すべき事柄に対する支配介入行為に当たると認めるのが相当である。

慰謝料額でいうとこの程度です。

名誉棄損の訴訟は、金銭的には見合わないため、目的は「お金じゃない」ということを明確にしておくべきですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介702 人生をひらく100の金言(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
鍵山秀三郎 人生をひらく100の金言

イエローハット創業者の本です。

帯には著者が道路のごみを掃除している写真が載せられています。

「凡事徹底」がいかに重要か、この本を読めばよくわかります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間の喜びで最たるものは、人に頼りにされ、人にあてにされることです。これが喜びの中でなによりも大きい。どれだけの財産を持つよりもこの喜びがいちばん大きい。」(107頁)

まさにその通りだと思います。

どの仕事でも人に頼りにされ、人にあてにされることこそが最大の喜びなのだと思います。

私たち弁護士の仕事もそうです。

トラブルに巻き込まれたときに、あまたいる弁護士の中で私を頼りにしてくれたことがなによりの喜びですし、だからこそ情熱をもって仕事に取り組めるのです。

お盆も正月もゴールデンウィークも仕事をし続けるのは、私を頼りにしてくれる方がいるからです。

仕事をしている意味、生きている証は、そういうことからしか感じることができない人種なのです。

人に頼りにされることがなくなり、また、人にあてにされることがなくなったら、引退しようと思います。

セクハラ・パワハラ31 指導とパワハラの境界線は?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司によるパワハラの存否と賃金仮払いの可否等に関する裁判例を見てみましょう。

バイエル薬品(仮処分)事件(宮崎地裁平成28年8月18日・労判1154号89頁)

【事案の概要

本件は、Y社の従業員であるXが、平成27年4月1日以降、上司のパワーハラスメント等を原因とした心身の不調により出社困難になったとして出社しなかったところ、Y社は、同年9月分までの給与を支払ったものの、その後、退職を促すのみで給与の支払を行わないなどと主張して、Y社に対し、主位的に、雇用契約に基づき、平成28年2月分以降本案判決確定に至るまで、毎月末日限り55万8883円の賃金の仮払を求め、予備的に、労働基準法26条に基づき毎月33万5330円(賃金の6割)の休業手当の仮払を求める事案である。

【裁判所の判断】

申立て却下

【判例のポイント】

1 ・・・しかし、同陳述書によれば、B所長は、①会議の際、XがB所長の話に集中していない様子であったことから注意指導を行った、②取引先建物内において、Xが担当先について十分把握していなかったことから今後の営業活動に関する指示を行ったというのであり、部下であるXに対する注意指導、指示として合理的理由に基づくもので、その態様も一般的に妥当な方法と程度にとどまるものであるといわざるを得ない。
・・・以上によれば、本件において、Y社の「責めに帰すべき事由」(民法536条2項)、又は「責に帰すべき事由」(労働基準法26条)によりXが出社できなくなったということはできない。

2 なお、Xは、労働基準法26条の「責に帰すべき事由」は、民法536条2項の場合よりも広く解される旨判示した最高裁判所昭和62年7月17日判決(ノースウェスト航空事件)を指摘するも、本件は、同最判とは事案を大きく異にする上、そもそも本件においては、上記のとおり、B所長によるハラスメント行為自体の疎明を欠くといわざるを得ない以上、同最判の判示について特別の検討が必要であるとはいえない

パワハラと指導との区別については、評価の問題ですので、いつまでたっても争いはなくなりません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介701 成功したければ、自分より頭のいい人とつきあいなさい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
成長したければ、自分より頭のいい人とつきあいなさい グローバル人材になるための99のアドバイス

著者は、NHKラジオ「実践ビジネス英語」の講師の方です。

そのため、英語に関する格言が多く書かれており、英語学習者にとっては二重の意味でよい本です。

なお、タイトルと内容が整合していないように思いますが、やいやい言うようなことではありません。

そんなこと、よくある話ですから。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

時間は最も乏しい資源であり、それが管理できなければ他の何事も管理することはできない。
Time is the scarcest resource, and unless it is managed, nothing else can be managed. -Peter F. Drucker」(143頁)

汝は人生を愛しているか。それならば時間を浪費するな。人生は時間から成り立っているのだから。
Dost thou love life? Then do not squander time, for that is the stuff life is made of.-Benjamin Franklin」(151頁)

年を重ねる毎に時間を無駄にしたくないという気持ちが強くなってきます。

どうでもいい会議には出たくない。

単なるお付き合いだけの会合には行きたくない。

もともとわがままなのに、輪をかけてわがままになっていくのがよくわかります(笑)

でも、いつまで生きられるかわからないのに、時間を浪費したくないじゃないですか。

やりたいようにやりたいし、生きたいように生きたいのです。

完全にわがままです。

解雇240 最低保証のない完全歩合制は法律上許される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、客室乗務員の期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

デルタ・エアー・ラインズ・インク事件(大阪地裁平成29年3月6日・労判ジャーナル63号31頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成17年10月16日、業務を航空機の客室乗務員とする期間の定めのある労働契約を締結し、これを約1年ごとに継続的に更新してきた元従業員Xが、平成26年12月5日付でY社から解雇され、平成27年3月31日以降の契約更新も拒否されたため、同解雇が無効であり、また労働契約法19条により労働契約は更新したものとみなされると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成27年4月以降の未払賃金及ぶ賞与等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 ①そもそもY社が人員削減の必要性として挙げる本件サービス変更は、平成27年1月1日から実施するものであるのに対し、本件解雇は平成26年12月5日付けでなされたものであり、本件サービス変更と本件解雇の日が一致しているとはいえないこと、②Y社は、本件サービス変更の結果、運航時間総数が月5060時間になると見込まれるとして、削減する人員を20名と算出したと主張しているところ、そもそもIFSRの契約において、月70時間のACFHが保障されているわけではないこと、③その点を措くとしても、本件サービス変更の月である平成27年1月の運航時間総数は5060時間を割り込んでいるものの、同年2月及び3月は、月5060時間を超過しており、この3か月の運航時間総数の平均値は月5164時間であって、Y社見込み時間数である月5060時間を上回っていること、 ④本件サービス変更の結果、5名で機内サービスを提供することが可能であるとしても、従前6名の乗務員が乗務していたことに鑑みれば、過渡期の対応として、5名を超える乗務員を乗務させる余地が全くないとも認め難いこと、⑤Y社は、本件解雇に当たり、本件契約の終了日までの基本給を支払っており、本件解雇をしなくても、Y社に新たな経済的負担が生ずるものでもないこと、以上の点が認められ、これらの点に鑑みると、本件サービス変更がY社の経営判断に属するものである点を考慮したとしても、これをもって、平成26年12月の時点において、平成27年3月の契約期間満了を待たずに、IFSRを8名削減しなければならない程度に切迫した必要性があったとまでは認められない。そして、全証拠を精査しても、このほかに契約期間が満了する前にXを解雇しなければならなかったことを根拠付ける具体的な事情があったことを認めるに足りる的確な証拠は認められない
以上によれば、Y社の上記主張は理由がなく、本件解雇は無効であると解するのが相当である。 

2 Y社は、Xの賃金は、最低保証のない完全歩合制であるから、現実の乗務がない以上、賃金額は0円となる旨主張する。
しかしながら、そもそもXが現実に乗務していないのは、Y社がXの就労を拒否したからであって、Y社が拒否しなければ、Xは、平成26年12月以降も乗務員としての業務に従事していたと認められる
したがって、Y社は、Xに対し、民法536条2項により、賃金支払義務を負っていると解するのが相当である。

3 Y社において、賞与の支給に関して定めた契約条項や支給規定は見当たらず、Y社がこれまでXに対して基本給3か月分に相当する額の賞与を支給してきたとの事実をもって、賞与支給に関する黙示の契約が成立したと解することもできない。
また、賞与については、プロフィットシェアと異なり、一律に支給率等を定めた上で全従業員に対して支給されていたことを認めるに足りる的確な証拠は認められない。そうすると、Xは、Y社に対し、賞与の支払を求める請求権を有しているとはいえない

整理解雇の必要性が否定された事案です。

また、上記判例のポイント2の「最低保証のない完全歩合制」は労基法上は採り得ない賃金体系なので、ご注意を。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介700 やり抜く人の9つの習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学

既にやり抜く習慣ができあがっている人にとってみたら、目新しい内容は書かれていません。

日頃無意識にやっていることや考えていることが文字になっているという感じです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

成功とは『正しい選択』『正しい戦略』『正しい行動』によってつかむものです。決して生まれつきのDNAで決まるものではありません。知能指数のように、これまで『生まれついてのもの』と考えられてきた指標は数多くあります。しかし、これらの指標では『誰が成功し、誰が成功しないのか』をまったく予測できないことが、多くの研究によって証明されてきています。誰が将来成功するかを予測しようと思ったら、知能指数を見るよりも、その人の戦略性や持続性を見る方がよほど的確です。」(114~115頁)

ここに書かれていることはこれまでの経験から感じていることなので特に驚くことではありません。

生まれついてのものよりも日々の「正しい選択」「正しい戦略」「正しい行動」の積み重ねが重要であることは言うまでもありません。

「面倒くさい」とか「飽きる」とか「時間がない」という壁を毎日乗り越えられるかどうかだけです。

敵は他人ではなく弱い弱い自分です。

有期労働契約73 不十分な調査等によるいじめ認定に基づく雇止めが無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、他の従業員らをいじめたことに基づく雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

大同工業事件(名古屋高裁平成29年2月16日・労判ジャーナル63号45頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、期間の定めのある雇用契約を締結して繰り返し更新してきた元従業員Aが、Y社の雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、無効であるとして、Y社に対し、労働契約に基づく同契約上の権利を有する地位の確認並びにY社による雇止め後の平成26年4月以降の賃金等の支払をも遠めるとともに、Y社の従業員であったCが、Xを根拠なく罵倒した上、自己の信仰する宗教をXにも信仰するよう強要したことによりXが精神的苦痛を被ったとして、Y社及びCに対して、Cについては不法行為(民法709条、710条)、Y社については使用者責任(民法715条)に基づいて、慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

原判決は、XのY社に対する賃金等の請求を一部却下一部棄却し、損害賠償請求を棄却したため、Xが控訴した。

【裁判所の判断】

雇止め無効
慰謝料として150万円を認めた。

【判例のポイント】

1 Y社は、十分な調査もせず、Xの弁明を真摯に聞いてそれを検討することもなく、Xが他の従業員をいじめて辞めさせたという誤った事実を主たる理由として本件雇止めを行ったものであって、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから無効であるといわざるを得ず、Y社は、平成26年2月初旬には早々と、ハローワークに対しXに代わるパート従業員の求人申込を行い、同月27日には、同パート従業員の採用を正式に決め、同月28日には、Xに対し、上記のとおり客観的に合理的理由を欠く理由に基づく本件雇止めを通告し、Xによる労務の受領を将来にわたり予め拒否したものといえるから、Xは、Y社の責めに帰すべき事由によって労務の提供ができなかったものと認められること等から、Xは、平成26年4月1日以降もY社に対する労働契約上の権利を有する地位にあり、かつ、同日以降のY社に対する賃金請求が認められる。

2 Y社の工場長たるCは、十分な調査もせず、Xに弁明の機会を与えないまま、複数の従業員をいじめて辞めさせたものと一方的に決めつけ、大声をあげるなどして、強い調子でXに反省を命じ、かつ、事実無根の事柄を記載したC作成書面及びXが恰も不道徳極まりない人物であることを前提とするかのようなC交付書面を手渡してこれらをXに閲読させるなどしたことによって、Xに対し休職を伴う療養を要する適応障害の傷害を負わせ、精神的苦痛を与えたものであるから、Xに対し民法709条、710条の不法行為責任を負い、Cの上記不法行為は、その使用者であるY社の業務の執行につき行われたことは明らかであるから、民法715条の使用者責任を負い、Xの精神的苦痛に対する慰謝料額としては、150万円が相当である。

上記判例のポイント1は注意しましょう。

いじめやパワハラ、横領事案等で加害者とされる者の弁明を十分に聞かず、また、冷静な調査をすることなく、最初から決めつけて対応にあたることは避けなければなりません。

刑事事件の冤罪の多くは「決めつけ」から生まれていることを忘れてはいけません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。