セクハラ・パワハラ33 パワハラ被害者が会社の調査に非協力的な場合の慰謝料額への影響(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、上司の不正を内部告発した准教授へのパワハラと損害賠償に関する裁判例を見てみましょう。

国立大学法人金沢大学元教授ほか事件(金沢地裁平成29年3月30日・労判1165号21頁)

【事案の概要】

(1)Y社が設置するY大学及びY大学院の准教授であるXが、Xが所属する教室の主任であったAに対し、①Aから度重なるハラスメント行為を受けたと主張して、不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、1920万円+遅延損害金の支払いを求めるとともに、②前記のハラスメント行為により、Xは本件大学及び本件大学院において、平穏かつ充実した環境の下で研究教育活動を行うことを妨げられていると主張して、人格権及び准教授の学校教育法上の地位に基づき、Xが本件大学及び本件大学院で行う研究、学生に対する教授、研究指導活動についての妨害活動及び名誉毀損行為の差止めを求める事件(甲事件)、
(2)Aが、①Xによる上記(1)の提訴は、存在しないハラスメント行為について損害賠償及び差止めを求めるものであり、Xもハラスメント行為が存在しないことを熟知していたか、通常人であれば容易にそのことを知り得たのに敢えて提起したものであるから、訴えの提起自体が違法である、②Aは、Xの暴行により顔面打撲等の傷害を負ったなどと主張して、Xに対し、いずれも不法行為を理由とした損害賠償請求権に基づき、200万円+遅延損害金の支払を求める事件(乙事件)
(3)Xが、Y社に対して、①Y社が、AのXに対するハラスメント行為に加担し、またはこれを放置したとして、労働契約上の内部告発者の保護義務ないし職場環境の整備義務違反の債務不履行に基づき、又は、②Aの行為について民法715条ないし国家賠償法1条1項に基づき、合計1500万円+遅延損害金の支払いを求めるとともに、労働契約上の職場環境整備請求権に基づき、Xが本件大学及び本件大学院で行う研究、学生に対する教授、研究指導活動について、Aが妨害活動及び名誉毀損行為をすることをY社において防止すること及びY社がこれらに加担しないことを求める事件(丙事件)である。

【裁判所の判断】

1 甲事件のうち、差止請求に係る訴えは却下
2 甲事件Aは、Xに対し、165万円+遅延損害金を支払え
3 甲事件XのAに対するその余の請求は棄却
4 甲事件AのXに対する請求は棄却
5 丙事件のうち、XのY社に対する行為請求及び差止請求に係る訴えは却下
6 Y社は、甲事件Xに対し、220万円+遅延損害金を支払え
7 Xの丙事件Y社に対するその余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 Aの行った違法な行為のうち、①Xの使用する機器室とセミナー室との間に間仕切り状のホワイトボード等を設置させた行為、②本件鍵の管理に係る行為、③本件発言をした行為、④D事務部長に「X助教授の勤務実績について(報告)」と題する書面を提出した行為及び⑤平成24年度以降の授業の割当てに係る行為については、国会賠償法1条1項の適用があるため、Y社は、上記①ないし⑤の行為によって生じた損害について、Xに対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負う。

2 ・・・このようなAの行為の態様、継続された期間等に鑑みれば、Aの上記行為によるXの不利益は座視できないものがある。しかしながら、他方、Y社の職員らによるハラスメントを調査するための面談にXが応じなかったことが、Aによるハラスメント行為が長期化したことの一因となったことも否定できない(Xの行動は、Y社職員らによるハラスメント調査に対する不信感を拭えなかったことも影響していたと解されるけれども、事態の解決に向けた対応・態度をとることは可能であったと思われる。)。
これら本件に現れた一切の事情を総合考慮すると、Xが、Aの上記行為による受けた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の額は、150万円をもって相当と認める。

ハラスメントを受けた従業員が会社の調査に応じなかったことが慰謝料算定に影響を及ぼしているようです。

影響を及ぼした結果、具体的にいくら金額が減額されたのかまでは明らかではありませんが、参考になる判断ですね。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。