Monthly Archives: 11月 2018

本の紹介857 やらないこと戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
やらないこと戦略 最大限にクリエイティビティを上げる時間管理術

サブタイトルは、「最大限にクリエイティビティを上げる時間管理術」です。

やるべきことに時間を割くためには、多くの無駄で本来やる必要のないことをやらないと決めることが大切です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

クリエイティブな人はアイデアを持っている。だから『クリエイティブ』と呼ばれている。人とは違った視点でこの世界を見ていて、ひっきりなしにアイデアが思いつく。・・・だが、そこが私たちの抱えている問題の核心でもある。アイデアはたくさんあるのに、それを実行する時間が足りないのだ。・・・とにかくアイデアをすべて実行するには時間が足りない。時間はくれぐれも有効に使うことだ。」(11頁)

同じことを思っている人は多いと思います。

いろいろアイデアは浮かんでくるんだけれど、それらを形にする時間がない。

最も必要なのは時間なのです。

アイデアを形にする時間をどう捻出するか。 ただそれだけです。

一番手っ取り早いのは、他の人に依頼をするという方法です。

何から何まで自分ひとりでやるほど人生は長くありません。

常に時間をお金で買うという発想を持って事に臨みましょう。

解雇282 唯一の事業の廃止に伴う整理解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、唯一の事業の廃止に伴う整理解雇が有効とされた事案を見てみましょう。

新井鉄工所事件(東京地裁平成30年3月29日・労経速2357号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXらが、Y社の主要な事業である油井管製造事業の廃止に伴って解雇されたことが解雇権の濫用に当たり労働契約法16条により無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、解雇後の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 まず、解雇回避努力義務として、配転の余地があったかについてみるに、Y社は、Y3等の所有不動産の管理について専門の不動産管理会社に委託しており、Y社内部では経理担当の1名がその関連事業に従事しているのみであって、もともとY社において何らの部門もそれに従事する人員も存しなかったものであるから、Y社において、不動産の賃貸をその事業として行っていたといえるにしても、これについて更に人員を配置する余地はなかったというべきであるし、専門の業者に対する不動産管理業務の委託を止め、不動産の管理を行う部門を創設するなどして、Xらを配転する義務を負っていたともいえないというべきである。
また、Y社の関連会社についても、同様に不動産事業部門に配置する余地はない上、油井管製造事業からの撤退により、同事業に従事させる可能性も失われたものであるから、Xらを転籍等させる余地はなかったというべきである。

2 被解雇者の選定については、事業撤退の判断が経営判断として合理的であり、他の事業部門等への配転可能性がない以上、油井管製造事業に従事していた従業員全員のうち希望退職に応じない者全てがその対象となるのは当然であるから、この点は本件解雇の効力を左右しない。

3 Y社は、油井管製造事業から撤退することを決定した後、平成27年12月11日から21回にわたってXらの所属する組合と団体交渉を行い、事業撤退に至る経緯について、組合の求める資料の開示に応じながら説明を重ねてきたものであり、交渉経過をみてもその交渉態度に不誠実な点は見当たらず、Y社が全従業員に対する希望退職募集を開始した時期も含めて、Xらに対する説明等が不相当であったことを基礎付ける事実を認めるに足りる証拠はない。

4 以上によれば、Y社が油井管製造事業からの撤退を決断したことはやむを得なかったというべきであって、これに伴う人員削減の必要性は高度なものであり、解雇回避努力義務という面でも、Xらについて配転可能性等他業務に従事させる余地はなく、特別退職金の支給や就職支援サービスの利用など、解雇によりXらに与える不利益を緩和する措置も採られており、被解雇者選定の面での問題もない上、Y社が組合に対し資料を開示して上記事業撤退の経緯、必要性を説明するとともに、退職に伴う条件提示を行ってきたものであるから、手続面でも問題は認められない。したがって、本件解雇は、客観的に合理的理由があり、かつ社会通念上も相当と認められるものであって有効であるから、それが無効であることを前提とするXらの請求はいずれも理由がない。

唯一の事業を廃止するときであっても、上記判例のポイントのとおり、手続をしっかり踏むことが求められます。

拙速な対応をしてしまうと、整理解雇が無効と判断されることもありますのでご注意ください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介856 世界のなかで自分の役割を見つけること(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
世界のなかで自分の役割を見つけること――最高のアートを描くための仕事の流儀

サブタイトルは、「最高のアートを描くための仕事の流儀」です。

アートの世界で生きる著者の考え方が伝わってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

当然だけれど私は現実の世界を生きていて、肉体はもちろん重要だ。体がなければ絵は描けない。手も、足も、目も使う。呼吸するために肺を使い、心臓だって使っている。この体、この心、この命を使って絵を描いている。しかし、本当の意味で私に絵を描かせてくれるのは、魂なのだ。それなのに私は、いつのまにか魂をないがしろにして作品をつくろうとしていた。いけないと思った。たとえそれで絵がもっと上手になったとしても、それは私の『役割』ではない。・・・魂は、成長する。いや、魂を成長させようー。それから、私の絵は、大きく変わり始めた。」(43頁)

どんな職業でもそうですが、スキルの前にマインドです。

何のために仕事をするのか。

どれだけスキルを磨いても、マインドが伴っていないと長続きしません。

途中で息切れしてしまうのです。

いろんな本に書かれていることですが、「どうやるか」よりも「どうあるか」が大切。

不当労働行為207 代理店主の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社と代理店契約を締結して会社の商品を販売する代理店主は労組法上の労働者といえないから、代理店主の組織する労組は労組法による救済を受ける資格を有しないとされた事案を見てみましょう。

シャルレ事件(東京都労委平成30年4月3日・労判1185号90頁)

【事案の概要】

本件は、会社と代理店契約を締結して会社の商品を販売する代理店主が労組法上の労働者にあたるかが争われた事案である。といえないから、

【労働委員会の判断】

労組法上の労働者とはいえない

【命令のポイント】

1 本件における代理店は、①会社の事業遂行に不可欠な販売組織として組み入れられており、②会社が本件代理店契約の内容を一方的・定型的に決定しているということができるが、③代理店が得る収入に労務対価性は認められず、④会社からの個別の業務の依頼に応じずべき関係にあるということもできず、⑤業務の遂行に当たり会社の指揮監督下に置かれているとも、時間的場所的な拘束を受けているともいえない一方、⑥強い事業者性を認めることができる

2 本件代理店主は、自己の裁量にて、傘下の下位販売者により形成される組織の維持及び拡大を図りつつ、本件代理店契約や会社のビジネスルールに従って商品を販売する、会社の事業取引の相手方とみるほかなく、会社との関係において、労組法上の労働者であると認めることはできない。

ときどき「え!これで労働者性が認められる?」みたいな判断がなされることがあるため、どうしてもチャレンジしたくなってしまうところです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介855 いま君に伝えたいお金の話(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
いま君に伝えたいお金の話

投資家の村上さんの本です。

タイトル通り、お金に関するお話がとてもわかりやすく書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

日本を変えていくためには、一人一人の考えが変わらなければいけません。大人になってしまってから、身についたお金の感覚を変えるというのはとても難しい。だから、子どものうちに真剣にお金に向き合い、『稼いで貯めて、回して増やす。増えたらまた回す』というサイクルの大切さを感じてほしいのです。」(188頁)

日本ではこういうことを小学校や中学校で教えられることはありません。

だから自分で勉強をしていくしかありません。

預金をしてお金を寝かしておくのではなく、投資に回すという意識を持てるかどうか。

もっとも、私がよくこのブログで書いているとおり、最も投資効率がいいのは、自分に対して投資することです。

自分の価値を高めて、収入を上げるのが最も効率的だと確信しています。

収入が上がれば、投資に回せる金額も増えることは言うまでもありません。

不当労働行為206 組合員に対する残業禁止と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

ケミサプライ・アマックス(残業差別)事件(福岡県労委平成30年7月30日・労判1185号89頁)

【事案の概要】

本件は、労組に加入し、自らの労働条件を明らかにするよう求めたXに対し、残業を行わないよう指示し、固定残業代である業績時間外手当を不支給にしたことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 28年7月頃、Xは業務の状況にかかわらず18時までには退勤するように指示されただけでなく、29年5月頃からは、残業を一切しないように指示されたが、他の従業員はそのような指示を受けておらず、Xが退勤する際にも業務を続けていたことが認められる
したがって、Y社はXに対し、残業指示について非組合員と異なる差別的取扱いを行ったものといえる。

2 そもそも「業務時間外手当」は、賃金規程で定められ、Xの賃金の一部を構成するものであり、その支給を一方的に停止することは、労組法7条1号にいう「不利益な取扱い」であったと認められる。
Y社は、Xに対する29年5月分給与以降の「業務時間外手当」の支給を停止したが、この会社の行為は、団交に出席し、当労働委員会への救済申立てにも関わり、さらに、自身についての時間外手当に係る本件労働審判を申し立てるなどの組合活動を行うXに対して、それまでは行っていた残業指示をしないことで「普通残業手当」の支給を受けられないという経済的不利益を与えることに加え、さらに「業務時間外手当」を支給しないことで困窮させようとする意図で行われたものと解さざるを得ないのであり、Y社は、Xのこのような組合活動を嫌悪した上で「不利益取扱い」を行ったものといえる。

これだけわかりやすいと不当労働行為と判断されても仕方ありません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介854 死ぬこと以外かすり傷(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
死ぬこと以外かすり傷

見城社長が代表を務める幻冬舎の編集者の箕輪さんの本です。

飛ぶ鳥を落とす勢いというのはこういう方に使う言葉なのだと思います。

タイトル通り、「死ぬこと以外かすり傷」と思っていろんなことに挑戦してみることが大切だということがよくわかります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

与えられた仕事を段取りどおりにこなす。そうすれば失敗しても大きな傷は負わないだろう。しかし、そんな予定調和からは何も生まれない。無理と言われたら突破する。ダメだと言われたら強行する。僕は半ば意識的に予定調和を破壊する。・・・社会不適合者だと後ろ指をさされても、これでいいのだ。いや、こうでもしないと、周りも自分も弛緩してしまう。」(36頁)

みんながみんなできることではありませんが、こういう人が成功するのです。

あえて「予定調和」を壊すということを意識しているのでしょう。

「無難にこなす」という馴れ合いの世界から飛び出す勇気と行動力があるかどうか。

ただそれだけのことです。

有期労働契約83 19年間更新を繰り返した後の雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、約19年間更新を繰り返した教諭に対する雇止めの適法性に関する裁判例を見てみましょう。

公益財団法人東京横浜独逸学園事件(横浜地裁平成29年11月28日・労判1184号21頁)

【事案の概要】

本件は、公益財団法人であるY社が設立、運営する在外ドイツ学校たるA学園に雇用され、契約の更新を経て主にB語の教諭として本件学園に勤務していたXが、Y社により平成27年8月以降の雇用契約の更新がなされず、雇止めを受けたことにつき、Xには労働契約法19条1号又は2号の適用があり、上記雇止めは客観的合理的理由を欠き、社会通念上不相当であるから無効であるとして、Y社における労働契約上の権利を有する地位の確認並びに雇止めがなされた平成27年8月以降の賃金+賞与+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 ・・・契約更新に関する契約書について、その作成の有無は不明であるものの、それ以外の契約の締結及び更新については契約書を交わし、更新に当たっては、更新の希望の有無や希望する担当時間数等を記載した書面を提出していたことなどからすれば、更新の手続が形骸化していたとまではいえない
以上から、本件において、Y社がXとの労働契約を締結しなかったことが、期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できるとまでは認められず、Xに対する本件雇止めが労契法19条1号に該当するとは認められない。
しかしながら、XとY社は、上記のとおり、約19年間という長期にわたり、合計12回という多数回の契約更新を行ったこと、XがY社における基幹的な労務に従事しており、長期における契約更新も想定されていたことからすると、Xにおいて、XとY社との労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められ、しかも、その期待は相当高度なものであったと認められる。
・・・以上から、Xに対する本件雇止めについては労契法19条2号が適用され、同雇止めには客観的合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要となる。

2 Y社は、Xとの雇用契約においては、所定労働時間が決まっていないから、民法536条2項の適用はないと主張するが、その趣旨が、Xが同条項で失わない反対給付が特定できないというのであれば、上記認定説示の範囲では、その蓋然性が認められるから、Y社の上記主張は採用できない。また、Y社の上記主張が、同条項の適用要件として所定労働時間が決まっていることを要件とするという趣旨であるとすれば、同項にはそのような限定を付す根拠となるような文言は存在しない上、同項が、本来は債務の履行ができず、反対給付を受けられないところ、債権者の責めに帰すべき事由がある場合に例外的にその反対給付を受けることができることとした趣旨からいって、同項の適用が必ずしも所定労働時間が定めっている場合に限定されるものではないことは明らかであるから、Y社の当該主張はやはり採用することができない。

19年間という相当長期にわたる有期雇用であっても、契約更新手続が形骸化していない場合には、2号事案になるという典型例です。

あとは、合理的理由の有無の判断となります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介853 センスのいらない経営(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
センスのいらない経営

著者は、株式会社Gunosyの創業者の方です。

現在は、ブロックチェーン領域の技術開発のための新会社の社長をされています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

現代は、『やってみる』という実験を繰り返すことができる人、『手数の多い人』が勝つ時代だと思います。・・・決断の総量を増やしていくことが大事なのだと思います。いきなり正しいところにたどり着くことはできません。『この辺りが正しいだろう』と思うところへ向けて進み、その方向を都度決めていく。そうしてジグザグと試行錯誤しながらようやく正解にたどり着けるのだと思います。」(138~139頁)

これがここ最近の成功法則の王道です。

いろんな本で書かれていることですが、「1戦1勝」を目指さないということです。

「100戦10勝」を目指すという感覚が大切だと。

そういう意味では「とにかくやってみる」という姿勢を持てるかどうかでほとんど決まってしまうわけです。

やってみなきゃわからないわけですよ。

賃金160 登録型派遣社員に係る就業規則変更の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、登録派遣添乗員に係る就業規則変更が有効とされた裁判例を見てみましょう。

阪急トラベルサポート(就業規則変更ほか)事件(東京地裁平成30年3月22日・労経速2356号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されて添乗員として旅行業を営む会社に派遣され、添乗業務に従事していたXらが、Y社に対し、平成25年10月から平成27年9月までの時間外、休日及び深夜労働の割増賃金+遅延損害金及び付加金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はX1に対し、19万3951円+遅延損害金、付加金19万3951円+遅延損害金を支払え。

Y社はX2に対し、21万3298円万3951円+遅延損害金、付加金19万3951円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社とXら登録派遣添乗員との関係は、労働契約期間中は使用者から指揮監督を受ける関係にある常用の労働契約とは異なり、Y社は派遣期間中に限ってXらを雇用する意思であり、常用の労働契約が締結されておらず、形式的には個別の労働契約が繰り返し締結されてきたものである。そのため、形式的には就業規則や労働条件の「変更」という概念そのものには当たらない
しかし、相当期間にわたって同一の労働条件で労働契約の締結を繰り返してきたことに加え、個別の労働契約のうち一定事項は就業規則と同一内容で締結されていたという諸事実を総合考慮すれば、登録派遣添乗員に適用される就業規則は、一定期間継続して派遣労働添乗員との間の労働契約の内容を一律に規律する効力を果たしている実情にある。
したがって、本件においても、労働契約法9条及び10条の趣旨に照らし、就業規則の変更が全く無制約で許されるものではなく、登録派遣添乗員の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他就業規則の変更に係る事情を総合考慮し、必要性が乏しいにもかかわらず登録派遣添乗員に大きな不利益を与えるなど著しく不合理な場合には、無効となることもあり得る。もとより、同法10条が予定する就業規則の不利益変更そのものではないため、必ずしも上記事情を全て勘案しなければならない場合もあり、また、同程度の変更の合理性までは必要ない場合もあるというべきである。

2 Xらは、Y社との間で、労基法所定の計算方法による額がその部分を上回るときはその差額を賃金の支払時期に支払う旨の精算合意や精算の実態がない旨主張する。
しかし、固定残業代として支払われた金額が労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、使用者がその差額を労働者に支払う義務を負うことが求められていることは前判示のとおりであるものの、それを超えて精算合意等を必要とする理由はなく、精算合意が必要であるとは解されないから、Xらの主張は採用することができない。

この裁判例はとても重要ですので、是非、判決全文をしっかり読んでおきましょう。

また、最近では、ようやく固定残業代の要件論が落ち着いてきましたので運用がしやすくなりました。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。