セクハラ・パワハラ55 パワハラの慰謝料額とレピュテーションダメージ(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、同意のない賃金減額とパワハラに基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

キムラフーズ事件(福岡地裁平成31年4月15日・労判ジャーナル88号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務する従業員Xが、Y社に対し、平成29年5月支払分以降の月額賃金のうち、基本給について1万円、職務手当について5万円及び調整手当について1万円をそれぞれ減額されたことについて、上記賃金減額は労働契約法8条に違反し、また、Y社の給与決定に関する裁量権を逸脱したものであるから、無効であると主張して、従前の月額賃金として基本給、職務手当及び調整手当の合計の支給を受ける労働契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、平成29年5月支払分から労働契約終了時までの間の差額賃金の支払を求め、平成27年夏季賞与から平成29円年末賞与までの各賞与額を不当に減額されたことにより、本来支給されるべき賞与額との差額分の損害を受けたとして、又は精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償金の支払を求め、会社代表者及び会社従業員からのパワハラにより精神的苦痛を受けたとして、労働契約上の就業環境配慮義務違反による債務不履行責任若しくは民法709条、会社法350条及び民法715条による不法行為責任に基づく損害賠償金等の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

賃金減額無効確認等請求、差額賃金等支払請求は認容

損害賠償等請求は一部認容

【判例のポイント】

1 本件賃金減額は、従業員の同意もないまま、就業規則等の明確な根拠もなく行われたものであるといえるから、本件賃金減額は無効であるといわざるを得ず、Y社は、Xに対し、平成29年5月支払分以降、毎月10日限り、差額賃金の7万円の支払義務を負う。

2 Xの主張する会社代表者のパワハラ行為のうち、Xのミスを怒鳴って、肘でXの胸を突いた行為、Xの背中を叩いた等の行為は、いずれもXの身体に対する暴行であり、Y社代表者がこれらの行為に及び必要性があったとは認められないから、Xに対する違法な攻撃として、不法行為に該当し、次に、会社代表者の発言や言動のうち「私はあなたのことを全く信用していない」、「給料に見合う仕事ができていないと判断したら給料を減額する」等の発言は、従業員の人格権を侵害する行為といえ、不法行為に当たるというべきであり、また、Y社の従業員Cが、Xに対し、「作業は1回しか教えない、社長に言われている」と発言したり、会社代表者から、途中の休憩は取らせるなと言われている旨等を告げた事実についても、会社代表者によるトイレ休憩をとらせないよう言った指示と相俟ってXの人格権を侵害する行為といえ、不法行為に当たるというべきであるから、Y社は、会社法350条及び民法715条に基づき、従業員が受けた精神的苦痛について賠償責任を負い、Xの身体的及び精神的苦痛に対する慰謝料額は50万円が相当である。

慰謝料額だけを見るとそれほど大きな金額ではありませんが、レピュテーションダメージは計り知れません。

パワハラ問題のコアは、アンガーマネジメントです。

規程を設けるだけでハラスメントがなくなればどれだけ楽か・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。