賃金168 歩合手当、職務手当は固定残業代として認められる?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ドライバーの未払時間外割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ウェーブライン事件(大阪地裁平成31年2月14日・労判ジャーナル88号40頁)

【事案の概要】

本件は、一般貨物自動車運送事業等を目的とするY社の元従業員Xが社に対し、雇用契約に基づき、未払の時間外、休日及び深夜割増賃金等計350万円等、労働基準法114条に基づき、上記未払賃金と同額の付加金等の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 無事故手当、愛車手当、評価手当については、毎月支払われているから、1か月を超える期間毎に支払われるものとはいえず、そのほか除外賃金に当たると認めるに足りる事情は見当たらないこと等から、割増賃金算定の基礎となる支給費目に当たると認められる。

2 皆勤手当については、1か月を超える期間毎に支払われていないものの、雇用契約書上、無遅刻・無欠勤の場合に支給すると定められていること、平成28年6月10日や同年8月10日には支給されていないことからすれば、臨時に支払われた賃金であって、割増賃金算定の基礎となる支給費目に当たるとは認められない

3 歩合手当について、定められた目標を達成した場合及び時間外割増賃金等の額が職務手当の額を超えた場合に支給と記載され、時間外労働手当以外のものが含まれることが明らかな上、その算定方法や金額の定めがなく、その区別も明らかでないから、これが時間外労働手当に当たるとは認められず、また、歩合2手当についても、その内容を定めたものが見当たらないこと等から、これも時間外労働手当に当たるとは認められず、さらに、職務手当についても、職務手当のうち、いくらが時間外割増賃金であるのかがわからず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金の部分が明確に区分されていないから、仮に時間外手当を含むとするような合意があったとしても有効とはいえず、そして、能力給及びその他手当についても、その内容を定めたものは見当たらず、その名称からしても、時間外労働手当に当たるとは認められない。

固定残業制度が認められない事例は、オレオレ詐欺と同様、どれだけ注意喚起、啓蒙活動をしても、一向になくなりません。

もう正解はわかっているのですから、そのとおりにやればいいのに、いまだに中途半端に導入し続けている例が後を絶ちません。

結果、多額の残業代を支払うことになってしまうのです・・・。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。