Daily Archives: 2019年10月31日

解雇311 降格減給の有効性の判断方法(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

68日目の栗坊トマト。前回よりも実がやや大きくなりました!

今日は、業務遂行能力不足等を理由とする降格減給及び解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

末日聖徒イエス・キリスト協会事件(東京地裁平成31年3月25日・労判ジャーナル90号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、平成28年12月21日付けで降格され、平成29年1月から賃金を減額されたことは人事権の濫用に当たり、その後更に同年6月12日付けで解雇されたことは解雇権の濫用に当たりいずれも無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件減給前の賃金との差額賃金、本件解雇後の未払賃金及び本件解雇までの一連の不法行為による慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、およそエリア・リアル・エステート・マネージャーとしての責務を果たしていない状態であったことが認められ、Y社の業務に支障を生じさせていることは、外部業者からも看取できるほどであったこと、Xの平成25年以降の人事評価は極めて低評価であったことが認められ、Y社は、Xに対し、自己都合退職するか降格減給を受け入れるかの選択肢を示し、Xの意向も踏まえて本件降格減給を行ったところ、減給は約1割に留めるものであって、本件降格減給は、Xの勤務成績や業務遂行能力、勤務態度の問題を理由に、業務遂行能力改善のため種々の方策を施した上で行われたものであって、Xを退職させようとする不当な目的に基づくものと認めることはできず、本件降格減給は、人事権の行使としてやむを得ず行われたものであり、人事権の濫用に当たらないから、Xの同意の有無について検討するまでもなく有効である。

2 本件降格減給、本件解雇は有効であり、Xを嫌悪したり、Y社から排除するために行われたものとは認め難く、また、本件アンケートは、Xについて、監査指摘事項の是正訓練を受けたFMやその他の関係職員を対象としたアンケートを実施し、本件異動後の評価資料を得ることを目的としたものであって、嫌がらせのためX自身にアンケートの文案を作成させたとまでは認め難く、さらに、部長がXに対して自身の市場価値を調べるため本件調査を指示したことは、その必要性に疑問が残るものの、宗教法人という特殊な団体における職員の評価に関して、当該職員において自身の客観的な市場価値を認識することを促したものと理解することができ、これが嫌がらせであるとか違法であるとまでは評価することができないこと等から、XのY社に対する慰謝料請求にも理由がない

降格減給も解雇同様、合理性が立証できるかが鍵となります。

また減給幅が大きくなりすぎないようにすることも有効に降格減給するために必要な視点となります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。