不当労働行為234 組合員に対する不利益取扱いと合理的理由の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、平成27年および28年の賞与に関し、営業職の組合員3名に対する考課点を低くして低額支給したことは不当労働行為であるが、工場勤務職の組合員1名の考課点が低くされたとは認められないとされた事案を見て行きましょう。

田中酸素(賞与・昇格)事件(山口県労委平成31年3月28日・労判1211号178頁)

【事案の概要】

本件は、平成27年および28年の賞与に関し、営業職の組合員3名に対する考課点を低くして低額支給したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 少なくとも平成27年及び平成28年において、A2ら3人の組合員に対しては、非組合員である従業員と異なり、実質的な査定がなされなかったことが推認される。
Y社が主張するとおり、A2ら3人の査定の考課点(加算も含む。)は、その時期や個人ごとに微妙に異なる点はあるが、概ねY社の査定制度上の平均値である27年前後となっており、これに関連して、Y社は、平成21年夏季から平成25年冬季までの賞与の査定を捉えて、人事考課の平均点から大きく逸脱した査定はしておらず、社会通念上相当なもので裁量権の逸脱はない。

2 「リーダーシップの欠如」や「報告、連絡、相談の不備」との指摘については、本件審問におけるB3の証人尋問における証言によっても、それらがY社による査定項目のどれに組み入れられて評価されたのかが明らかにされておらず、むしろ、B3は査定には関与せず、その実態も知り得ていないことが明らかになったのみであり、当委員会としても、その実態を解明するには至らなかった。
以上からすると、このようなY社の対応に合理的な事情は窺えず、当事者間には過去から不当労働行為救済申立てを含めて多様な係争が繰り返されている点に鑑みれば、Y社に組合嫌悪の念が存在することを否定し得ず、A2ら3人の平成27年及び平成28年賞与に関する査定において不利益取扱いが行われたものとみなさざるを得ない

会社と組合との間で係争が繰り返されている場合、上記命令のポイント2のように、会社側が組合員への不利益取扱いについて合理的説明ができないと、総合考慮により不当労働行為と評価されることがあるので、注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。