労働時間64 変形労働時間制が有効と判断された事例(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、長時間労働と労働時間該当性に関する裁判例を見てみましょう。

いわきオール事件(福島地裁いわき支部令和2年3月26日・労判ジャーナル101号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と労働契約を締結してY社の事業所や福島第一原発の廃炉工事現場内に設置された自動車整備工場で就労していた亡Xを相続した亡Xの妻が、Y社に対し、XとY社との労働契約に基づき、平成27年12月21日から平成29年10月26日までの期間における時間外労働に係る未払の割増賃金等の支払を求め、労働基準法114条に基づき、付加金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Y社事業所から1Fまでの移動時間について、1Fで作業するに当たっては、健康状態のチェックや1Fの入域に必要なIDカードを持ち出すために、Y社事業所に出勤してタイムカードを打刻し、血圧測定等を実施してから、宇徳広野町事務所を経て又はY社事業所から宇徳広野町事務所を経ず直接1Fに移動することが要求され、かつ、それが常態化していたと認められ、単なる通勤時間ではないY社の指揮監督下に置かれていた時間と評価できるから、労働時間に該当し、1F入域後、宇徳1F事務所までの移動時間及び宇徳1F事務所から整備工場への移動時間については、Y社の指揮命令下に置かれていた労働時間と評価できる上、宇徳1F事務所到着後、宇徳に対する健康状態の報告、ミーティング及び作業準備に要する時間は、1Fでの作業遂行に伴って行われた行為として、Y社の指揮命令下に置かれていたと評価できるが、他方、ミーティング後の待機時間については、食事をするなど自由に利用することができていたと認められることから、待機時間20分についてはY社の指揮命令下にない休憩時間と評価すべきである。

2 就業規則には1年単位の変形労働時間制に関する規定が定められ、Y社とY社従業員の過半数代表者との間で、平成27年から平成29年までの各3月21日を起算日とする1年単位の変形労働時間制に関する労使協定が締結されていたこと、その上、Y社とXとの労働契約においてもその旨明示されていることが認められ、そして、上記就業規則及び労使協定に基づいて作成した休日カレンダーとXの勤務状況を比較すると、月に1日程度休日とされている土曜日に勤務していることを除き、おおむねその休日カレンダーのとおり、就労していたことが認められる上、変形労働時間制に関する協定届における常時使用する労働者数と該当労働者数は同数であり、Xをその適用対象から除外したとは認められないことからすれば、上記の変形労働時間制はXにも適用されていたと認められる。

珍しく変形労働時間制が認められています。

多くの事案では有効要件を満たしておらず、なかなか採用されません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。