Daily Archives: 2021年9月2日

不当労働行為273 団交の際、財務資料を用いた具体的な説明を行わなかったことと不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、准職員および時間雇用職員の無期転換に関する団体交渉を行う際に、人件費や財務への影響についての資料を用いた具体的な説明を行わなかった法人の対応が不当労働行為とされた事案を見てみましょう。

国立大学法人東北大学事件(宮城県労委令和元年11月14日・労判1240号100頁)

【事案の概要】

本件は、准職員および時間雇用職員の無期転換に関する団体交渉を行う際に、人件費や財務への影響についての資料を用いた具体的な説明を行わなかった法人の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y法人は、本件質問要求書のうち質問として合理性を有する事項に対して、適切かつ誠実に対応しているとは認め難く、また新たな資料として提供したものは、限定正社員採用試験の受験者数及び合格者数にすぎないことから、本件質問要求書に対する平成30年2月7日の団体交渉におけるY法人の対応は、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。

2 確かに、X組合はY法人に対し、回答できない理由を検討中であることを記載する程度で良い旨述べるとともに、速やかに回答するよう求めていることから、簡易なものでも良いから、ともかく回答することを優先するよう求められているとY法人が理解した可能性がある。しかし、そのことを前提にしたとしても、Y法人は、本件質問要求書に対して、平成30年2月7日の団体交渉で十分に対応していないし、その1か月後(本件質問要求書提出から約2か月後)の同年3月7日においても、Y法人は、本件文書により、何ら具体的な情報提供を行っていない
これらの経緯を考慮すると、本件文書による回答だけでは、本件質問要求書に対する回答として不十分であり、不誠実なものであると言わざるを得ない。よって、Y法人の本件文書による回答は、X組合の本件質問要求書に対して誠意をもって対応したとはいえず、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。

組合から財務資料を求められることは少なくありません。

会社側は財務資料を開示することを通常嫌がりますが、合理的理由なく開示を拒むと不当労働行為と判断されますので気を付けてください。

団体交渉における具体的な対応方法については、必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。