Monthly Archives: 8月 2021

同一労働同一賃金21 無期職員と契約職員との地域手当、住居手当、昇給基準を巡る待遇差と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、無期職員と契約職員との地域手当、住居手当、昇給基準を巡る待遇差が不合理でないとされた裁判例を見てみましょう。

独立行政法人日本スポーツ振興センター事件(東京地裁令和3年1月21日・労経速2449号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結しているXが、①Xの学歴・経歴によれば、Y社の基準に照らし基準月額を81号俸とすべきであるのに、Y社がXに対し、基準月額を61号俸とする労働契約の締結を余儀なくさせた、②Y社が期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している職員に対して支給している地域手当及び住居手当をXに支給せず、また、無期労働契約において設けている昇給基準をXに適用せず昇給させないのは不合理な労働条件の相違であり、平成30年法律第71号による改正前の労働契約法20条(同条は、前記改正により削除され、令和2年4月1日施行の有期雇用労働者法8条に統合された。同条は、前記改正前の労働契約法20条の内容を明確化して統合したものであるから、以下、同法20条に関する当事者の主張は、有期雇用労働法8条による主張と整理した上判断する。)に違反する旨主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として平成28年4月分から令和元年7月分までの基準月額、地域手当、住居手当、基準月額に連動する契約職員手当、超過勤務手当及び特別手当の各差額賃金相当額701万1762円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 無期職員は、転居を伴う異動の可能性があり、配置される地域の物価の高低によって必要とされる生活費に差額が生じることから、勤務地の物価の高低に応じ、生活費の差額を補てんする必要があるといえるが、契約職員は異動が予定されておらず、東京都特別区にしか配置されていないことから、勤務地の物価の高低による生活費の差額は生じず、これを補てんする必要がない。
したがって、無期職員に対して地域手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという待遇の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえないから、有期雇用労働者法8条にいう不合理と認められる待遇に当たらないと解するのが相当である。

2 無期職員は、転居を伴う異動の可能性があり、転居がない場合と比較して住宅に要する費用が多額となり得ることから、住宅に要する費用を補助する必要がある一方、契約職員については東京都特別区内にしか配置されておらず、転居を伴う異動の可能性はない。
したがって、無期職員に対して住居手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえないから、有期雇用労働者法8条に違反するものではないと解するのが相当である。

3 本件昇給基準は、無期職員に適用されるものであるところ、その文言によれば、管理又は監督の地位にある職員以外の職員について、「おおむね」、昇給区分Aの割合を100分の5、昇給区分Bの割合を100分の20とするものであって、おおむねの割合を示すものと解されること、及び、本件昇給基準より上位の規定である職員給与規則は、無期職員の昇給は予算の範囲内で行わなければならない旨規定し、昇給に予算の制約を設けていることを考慮すると、本件昇給基準は、昇給区分AないしBとすべき職員の割合についての決まりを設けたものと認めることはできない
したがって、本件昇給基準に関し、無期職員について昇給の決まりを設けているとはいえないから、無期職員について昇給の決まりを設ける一方、契約職員について昇給の決まりを設けていないという不合理な待遇の相違があり、不法行為に該当する旨のXの主張は、その前提を欠くものである。

各種手当に関する格差については、当該手当の趣旨から議論がスタートします。

格差について合理的理由を説明できるか否かがポイントとなります。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

本の紹介1190 「成功」と「失敗」の法則#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から約10年前に紹介をした本を再度、読み直してみました。

奇を衒わないこれぞ王道という内容しか書かれていません。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

すでに手に入れた豊かさは棚に上げ、さらに他のものを求める。客観的な豊かさの基準があると信じ、自分には『何かが不足している』と常に不満を抱いている。だから『豊かさ』を実感できないのです。本来、『豊かさ』とは個人によって感じ方が違う主観的なものであり、客観的な基準などはないのです。ですから『足るを知らない人』、あくまで『不足を感じる人』はどんなに豊かな状態になってもそれを感じることはできないのです。」(85~86頁)

「ある」ことに感謝せず、「ない」ことに不満を感じる。

このような人は、いつまでたっても、また、どこまでいっても、不満が先行します。

幸せや豊かさに客観的な基準などありません。

自分が幸せだと思えるか、豊かだと思えるか、ただそれだけです。

不満を感じるときは、多くの場合、「当たり前」だと思っていることに対する感謝の気持ちを忘れているときです。

労働時間72 休憩時間、仮眠時間の労働時間性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、休憩時間、仮眠時間が労働時間に該当しないとされた裁判例を見てみましょう。

千代田石油商事事件(東京地裁令和3年2月26日・労経速2448号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、平成29年1月から平成30年3月までの間、時間外・深夜・休日労働に従事したところ、本件請求期間の時間外労働等に係る割増賃金の未払いがあるなどとして、Y社に対し、①雇用契約に基づき、未払残金311万0127円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②労基法114条に基づき、付加金311万0127円+遅延損害金の支払を求め、③Xの子が紛失した健康保険被保険者証の再発行に当たり、Y社から、指示どおりの内容の謝罪文を書くよう要求されたことが不法行為を構成するとして、Y社に対し、不法行為に基づき、慰謝料10万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、68万3552円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、同額の付加金+遅延損害金を支払え。

慰謝料請求は棄却。

【判例のポイント】

1 Y社においては、本船業務を1人又は2、3名程度の複数名で執り行っていたものであるところ、シフト等により休憩、仮眠時間が割り当てられ、これをとるものとされていたものである。この間、Xを含め、休憩、仮眠時間を取っていたY社の従業員が即時の対応を義務付けられていたことを裏付ける的確な証拠はない
この点、Xは、液化天然ガスを扱うという職務の公共的性質や上長としての立場について指摘し、これらの時間中においても作業の監視を続けざるを得なかった旨主張し、X本人の供述にはこれに沿う部分があるが、上記時間中まで作業の監視が続けられていた具体的な事実を裏付ける証拠はなく、まして、上長であったが故に他の従業員の作業内容を補助し続けなければならなかったというような実情を裏付ける証拠もなく、採用し難い。X本人の供述には、休憩,仮眠時間においてもトランシーバを所持し、一歩間違えば大惨事に至りかねない緊急時に備えていた旨述べる部分もあるが、そのような義務付けやこれによる即時対応をY社が義務付けていたと認めるべき的確な証拠はない。

2 トラブル発生の頻度をみても、緊急対応が必要となった大きなトラブル事象は657隻の取扱い中、1件にとどまっている上、これ以外のトラブル事象をみても、多くは入港前やマニホールド業務時間中の発生事象で、かかる時間帯における休憩時間にあって、XやY社従業員が、休憩をしていない従業員に代わり、即時の対応を余儀なくされたというような事実は認め難い。CCR業務(定常荷役中)のトラブル事象に至ってはトラブルの発生頻度自体も低く(4回にわたる桟橋補助業務を含めて3パーセントから5パーセント程度にとどまる。)、やはり、休憩や仮眠に当たっていない従業員が、これに当たっている従業員に代わって、即時の対応を余儀なくされたというような事実は認め難い
むしろ、証拠より窺われる時間管理後のXの休憩、仮眠時間の取得状況に照らすと、桟橋補助業務に当たっていたときはともかく、本船勤務日毎に、特段の中断なく、まとまった休憩、仮眠時間をとることができていると認められる。
そして、これら休憩、仮眠時間にあっては休憩室等の提供も基本的にはされていたものである。また、夜通しの勤務であることから仮眠時間中に仮眠がしっかりとられるべきということはいえても、休憩、仮眠時間中の過ごし方がY社により決定されていたものとも認められず、その間における場所的移動が禁止されていたとも認め難い
そうすると、休憩、仮眠時間において労働契約上の役務の提供が余儀なくされ、これが義務付けられていたと認めることはできないところであり、労働からの解放が保障されていないものとしてY社の指揮命令下にあったと認めることはできず、他にこの点を認めるに足りる的確な証拠はない。

休憩時間、仮眠時間の労働時間性が否定されました。

労働からの解放が保障されているという評価がどのような事実に基づきなされているかを理解しておくことが大切ですね。

この分野も事前の準備・運用が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理することが求めれています。

本の紹介1189 あたりまえのアダムス#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

約10年前に紹介をした本ですが、再度、読み直してみました。

本自体は、今から20年程前に出版されたものです。

タイトルからもわかるように、「あたりまえ」のことに光を当てることの大切さが説かれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あたりまえのことは、ほとんど常にシンプルです。あまりにもシンプルなので、ときには大勢の人がそれを目にしていながら、しかし見ていないということさえあります。だとすれば、もしあるアイデアがいかにも賢げだったり、独創的だったり、複雑だったりするようなら、それを疑ってみることです。それはおそらく、『あたりまえ』ではありません。」(65頁)

ビジネスにおいて、サービスの種類や内容を複雑にすることはとても簡単です。

しかしそれは、多くの場合、売り手側のエゴに基づくものであり、顧客が求めているものではありません。

同様に、生きていく上で大切にすべきことはいつもシンプルです。

シンプルすぎて大切にすべきことを忘れてしまうのです。

解雇350 上司に対する誹謗中傷を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司に対する誹謗中傷を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

IHI事件(東京地裁令和3年1月15日・労判ジャーナル111号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社から、平成30年11月27日付けで解雇されたことから、本件解雇が無効であると主張して、Y社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社に対し、雇用契約に基づき、本件解雇日以降の月例賃金として、同日から本判決確定の日まで、毎月25日限り、月額36万円+遅延損害金の支払を求め、違法な本件解雇により精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき、慰謝料50万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、上司から指示された防図書業務の点検用の説明資料を、その作成業務が無用のものであるなどとして、その指示に従って作成しなかったばかりか、その作成を指示する上司のBに対し、事ある毎に批判し、容易にその指示に従わなかったものである。
批判の内容も、Bをごみ呼ばわりしたり、頭がいかれているなどと指摘するといった激烈なものを含み、ときには同人の態度や発言を大笑、あるいは嘲笑し、同人を貶めることもあったと指摘することができる。
しかも、そうした所為は、Bやその上長、さらにはd総務部の担当者により、口頭、メールでの告知により再三注意、警告がされてきたものであるのに改まらず、二度にわたり懲戒処分をされてもなお改まらなかったものである。
なお、Xは、Xに対して二度にわたりされた懲戒処分(本件減給処分及び本件出勤停止処分)の効力も争っているが、Xには業務指示に従わず、上長の批判を公に繰り返すといった所為があったものであり、就業規則90条14号所定の事由があったと認められるところであって、しかも、その処分の内容が減給や出勤停止といった内容にとどまっていたことにも照らせば、その有効性は優にこれを肯認することができる。
そして、Xの上長に対する批判は、Bのみならず、Cに対しても向けられるようになっており、そうしたXの不服従の様子は収束の様子を見せていない
以上の点に照らせば、Xには、Y社主張のように、少なくとも就業規則94条1項5号の普通解雇事由はあったと認めることができ、上記のとおり再三の注意や指導、懲戒処分にもかかわらずXに反省の情を見出し難かったことにも照らせば、Xを解雇することとしたY社の判断は、社会通念に照らしても、やむを得ないものとして相当なものであったと認められる。
したがって、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえず、有効と認められる。

これだけの事情が証明できれば、解雇が有効と判断されます。

訴訟になった際に立証できるように準備することが大切です。

いかなる準備をすべきかについては、顧問弁護士に相談するようにしてください。

本の紹介1188 お金の減らし方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

お金を増やし方を説く本が溢れかえっている中で、このタイトルは非常にキャッチーです。

帯には「お金ってそんなに大切ですか?」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の気持ちによってものの価値が決まるということに気づくことが、お金を無駄にしないうえで最も重要な点といえる。もう少し別の言い方をすれば、この『気持ち』というのは、『欲求』でもあるだろう。お金を使って手に入れる価値とは、結局は自分の欲求を満たすことだ、といえる。だから、まず自分の欲求をよく知ることが基本となる。」(43頁)

とても大事な視点です。

本当は自分の欲求が満たされないのに、周りに流されてなんとなくお金を使うことは、幸せ度を全く上げないただの「浪費」です。

例えば、高級な車や時計や洋服、大豪邸・・・

それを買うことによって自分の欲求が満たされる人は買えばいいですが、そうでない人は世間体や他人の目を気にして浪費する必要はありません。

見栄を張る必要などないのです。

私服はユニクロ、時計はそもそも着けない、車は動けば何でもいい、家はワンルームの賃貸の僕は、高級ブランド品をわざわざ買う理由がないのです。

幸せ度が1ミリも上がらないことを知っているので。

自分の欲求をよく知ることは本当に大切です。

同一労働同一賃金20 派遣労働者に対する通勤手当不支給と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、派遣労働者に対する通勤手当不支給の(旧)労契法20条該当性に関する裁判例を見てみましょう。

リクルートスタッフィング事件(大阪地裁令和3年2月25日・労判ジャーナル111号24頁)

【事案の概要】

本件は、人材派遣事業等を業とするY社との間で、派遣等による就労の都度、期間の定めのある労働契約を締結し、派遣先事業所等において業務に従事していた派遣労働者が、Y社と期間の定めのない労働契約を締結している従業員と派遣労働者との間で、通勤手当の支給の有無について労働条件の相違が存在し、同相違は、(旧)労働契約法20条に反する違法なものであり、同相違に基づく通勤手当の不支給は不法行為に当たると主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、未払通勤手当相当額等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 派遣労働者が派遣スタッフないしOSスタッフとして従事した各JOB及び受託業務における時給額、派遣労働者が要した通勤交通費及びアルバイト・パートの平均時給額の比較によれば、派遣労働者が得ていた時給額はアルバイト・パートの平均時給額よりも相当程度高額であり、その差額は、各JOBにおいては派遣労働者が通勤に要した交通費を支弁するのに不足はないものであり、受託業務においても100円程度上回っており、派遣労働者が通勤に要した交通費の相当部分を補うのに足りるものであったと認められ、派遣スタッフ等の時給は、無期転換スタッフの時給・通勤手当、調整手当と同程度であるから、派遣労働者が得ていた時給額は、一般的にみて、その中から通勤に要した交通費を自己負担することが不合理とまではいえない金額であったということができ、また、派遣労働者の賃金について、通勤手当を含めて総額制にし、別途通勤手当を支給しないこと自体を禁ずる法律は存しないこと等から、当時、派遣労働者に通勤手当を支給しないことが一般的に違法であるとの取扱いがされていたとはいえず、本件相違は、(旧)労働契約法20条の「不合理と認められるもの」と評価することはできないから、本件相違により派遣労働者に対して通勤手当が支給されなかったことについて、不法行為に当たるということはできない

通勤手当に関する格差については、一般的には、違法と判断されますが、今回は、派遣労働者との対比においては、上記判例のポイント1の理由から適用と判断されました。

派遣会社の皆さんは参考にしてください。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

本の紹介1187 負けかたの極意#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

8年前に紹介をした本を再度読み直してみました。

野村監督の本です。

帯には「人生に大切なことは、いつも敗北が教えてくれた。」と書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

はっきりいって、回数を目標にしているうちはダメなのだ。正しい素振りをしなければ、いくら回数を重ねたところで、それは間違った努力でしかない。大切なのは内容だ。正しい努力をしている者と間違った努力をしている者とでは、二年、三年も経てば大きな差が開いているはずだ。酷な言いかたになるかもしれないが、時間は平等に与えられているが、結果は決して平等ではないのだ。」(165頁)

質と量、どちらが大切かという問いがありますが、いうまでもなく両方大切です。

そもそもどちらかを選択するような話ではありません。

両者はトレードオフの関係にはありません。

結果が出ないのは、どちらかまたは両方が足りないからです。

原因と結果の法則とはそういうものです。

管理監督者47 カフェ部門従業員の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、カフェ部門従業員の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

andeat事件(東京地裁令和3年1月13日・労判ジャーナル111号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、時間外労働についての割増賃金の未払があるなどとして、Y社に対し、雇用契約に基づき、割増賃金合計1246万9252円+遅延損害金、並びに、労基法114条に基づく付加金請求として640万6611円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、1029万6845円及びうち954万3690円に対する令和元年6月1日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。

Y社は、Xに対し、609万1044円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、カフェ部門のシフトの作成や本件店舗全体のシフトの調整、アルバイト従業員の人事評価は行っていたものと認められるが、シフト作成や調整は労務管理の一部でしかなく、人事評価についても昇給の最終判断は社長が行っていたというのであるから、これらの事情のみで、Xが、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を有していたとは認め難い。
これに対し、Y社は、Xはアルバイト従業員の採用につき実質上の最終判断をしていた、アルバイト従業員の解雇についても相当程度の権限が付与されていた、マネージャー(代理)就任後は各部門で作成したシフトを承認する権限を有していたなどと主張するが、前記認定事実の限度を超えて、これらを認めるに足りる的確な証拠はなく、いずれも採用することができない。
また、Y社は、Xは平成30年6月以降、経営再建計画の立案業務に従事していたとも主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はなく,採用することができない。

2 Xは、店長時代のみならず、マネージャー代理及びマネージャーとなった後も、シフトに入ることが多かったことが認められ、後記のとおり恒常的に長時間労働を余儀なくされていたことにも鑑みれば、Xが自己の勤務時間に対する自由裁量を有していたとはいい難い

3 Xには、当初は月額35万円、マネージャー代理の肩書を付与された後は月額40万円、平成30年4月以降は特別手当ないしその他手当を含めて月額45万円の固定給が支給されていたが、これは、同じカフェ部門の平社員であったBが月額35万円の固定給に加えて10万ないし15万円程度の時間外手当を支給されていたこと、シェフ部門の料理長の給与が月額約70万円、ベテランシェフの給与が月額約50万円であったことと比較して、高待遇とはいえない上、後記のとおり認定できる実労働時間を基に時給を計算すると、前記認定のアルバイト従業員の時給と同程度の水準となることから、その地位に相応しい処遇を受けていたとはいえない
これに対し、Y社は,Bはフランス人であり、本件店舗のブランド価値の向上のために必要不可欠な人材であることや、本件店舗の立ち上げに尽力してもらった人物からの紹介であったことから、特別に給与が高額であった旨主張するが、Bがどの程度本件店舗のブランド価値の向上に寄与していたのかも本件証拠上明らかでなく、上記人物からの紹介であったことを認めるに足りる的確な証拠もないから、Y社の上記主張は採用することができない。
また、Y社は、シェフ部門の従業員は、料理人として高度の技術等が要求されることに鑑みて、他部門の従業員と比較して給与が高くなっている旨主張するところ、そのような可能性は一般論としては考え得るものの、本件において同人らが、管理監督者とされるXと比して、有意に高額な給与を得ていたことの具体的な合理性を基礎づけるまでの事情とはいえないから、Y社の上記主張は採用することができない。

4 上記のとおり、店長時代のみならず、マネージャー代理及びマネージャーとなった後についても、Xが、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を有していたとは認め難い上、勤務態様についても、自己の勤務時間に対する自由裁量を有していたとはいい難く、待遇についても、その地位に相応しい処遇を受けていたとはいえないことから、これらを総合的に考慮すると、Xが前記のような労基法41条2号の規定の趣旨が充足されるような立場にあったと認めることはできず、同項所定の管理監督者に該当するとは認められない。

金額見てください。

管理監督者性が肯定されることはもうあきらめたほうがいいですよ。

雇用でいくのであれば、無駄な仕事を減らし、労働時間を短くし、残業代を支払う。

これが王道です。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。

本の紹介1186 ラクしてうまくいく生き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

ひろゆきさんの本です。

帯には「仕事も人間関係も心配事ももうちょっといい加減で大丈夫」と書かれています。

生きづらいなーと感じている人は読んでみるといいかもしれません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・誘われたからといって、わざわざ行きたくない会合に参加する必要もないし、会いたくもない人と会う必要もないのではないでしょうか。・・・人生で与えられている時間は有限ですから、生きたくない場所に行って無駄にストレスを抱えないほうが、ラクに生きることができますよ。」(55頁)

全く同感。

弁護士会等の強制加入団体を除き、あらゆる団体に加盟していない(したくない)のはまさにこの理由です。

なんとなくのお付き合いで定例のゴルフや飲み会に参加したくないのです(笑)

ジカンガモッタイナイ

会いたい人とだけ会いたいときに会えればそれでいいです。