管理監督者47 カフェ部門従業員の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、カフェ部門従業員の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

andeat事件(東京地裁令和3年1月13日・労判ジャーナル111号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、時間外労働についての割増賃金の未払があるなどとして、Y社に対し、雇用契約に基づき、割増賃金合計1246万9252円+遅延損害金、並びに、労基法114条に基づく付加金請求として640万6611円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、1029万6845円及びうち954万3690円に対する令和元年6月1日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。

Y社は、Xに対し、609万1044円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、カフェ部門のシフトの作成や本件店舗全体のシフトの調整、アルバイト従業員の人事評価は行っていたものと認められるが、シフト作成や調整は労務管理の一部でしかなく、人事評価についても昇給の最終判断は社長が行っていたというのであるから、これらの事情のみで、Xが、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を有していたとは認め難い。
これに対し、Y社は、Xはアルバイト従業員の採用につき実質上の最終判断をしていた、アルバイト従業員の解雇についても相当程度の権限が付与されていた、マネージャー(代理)就任後は各部門で作成したシフトを承認する権限を有していたなどと主張するが、前記認定事実の限度を超えて、これらを認めるに足りる的確な証拠はなく、いずれも採用することができない。
また、Y社は、Xは平成30年6月以降、経営再建計画の立案業務に従事していたとも主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はなく,採用することができない。

2 Xは、店長時代のみならず、マネージャー代理及びマネージャーとなった後も、シフトに入ることが多かったことが認められ、後記のとおり恒常的に長時間労働を余儀なくされていたことにも鑑みれば、Xが自己の勤務時間に対する自由裁量を有していたとはいい難い

3 Xには、当初は月額35万円、マネージャー代理の肩書を付与された後は月額40万円、平成30年4月以降は特別手当ないしその他手当を含めて月額45万円の固定給が支給されていたが、これは、同じカフェ部門の平社員であったBが月額35万円の固定給に加えて10万ないし15万円程度の時間外手当を支給されていたこと、シェフ部門の料理長の給与が月額約70万円、ベテランシェフの給与が月額約50万円であったことと比較して、高待遇とはいえない上、後記のとおり認定できる実労働時間を基に時給を計算すると、前記認定のアルバイト従業員の時給と同程度の水準となることから、その地位に相応しい処遇を受けていたとはいえない
これに対し、Y社は,Bはフランス人であり、本件店舗のブランド価値の向上のために必要不可欠な人材であることや、本件店舗の立ち上げに尽力してもらった人物からの紹介であったことから、特別に給与が高額であった旨主張するが、Bがどの程度本件店舗のブランド価値の向上に寄与していたのかも本件証拠上明らかでなく、上記人物からの紹介であったことを認めるに足りる的確な証拠もないから、Y社の上記主張は採用することができない。
また、Y社は、シェフ部門の従業員は、料理人として高度の技術等が要求されることに鑑みて、他部門の従業員と比較して給与が高くなっている旨主張するところ、そのような可能性は一般論としては考え得るものの、本件において同人らが、管理監督者とされるXと比して、有意に高額な給与を得ていたことの具体的な合理性を基礎づけるまでの事情とはいえないから、Y社の上記主張は採用することができない。

4 上記のとおり、店長時代のみならず、マネージャー代理及びマネージャーとなった後についても、Xが、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規制の枠を超えて活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を有していたとは認め難い上、勤務態様についても、自己の勤務時間に対する自由裁量を有していたとはいい難く、待遇についても、その地位に相応しい処遇を受けていたとはいえないことから、これらを総合的に考慮すると、Xが前記のような労基法41条2号の規定の趣旨が充足されるような立場にあったと認めることはできず、同項所定の管理監督者に該当するとは認められない。

金額見てください。

管理監督者性が肯定されることはもうあきらめたほうがいいですよ。

雇用でいくのであれば、無駄な仕事を減らし、労働時間を短くし、残業代を支払う。

これが王道です。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。