同一労働同一賃金20 派遣労働者に対する通勤手当不支給と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、派遣労働者に対する通勤手当不支給の(旧)労契法20条該当性に関する裁判例を見てみましょう。

リクルートスタッフィング事件(大阪地裁令和3年2月25日・労判ジャーナル111号24頁)

【事案の概要】

本件は、人材派遣事業等を業とするY社との間で、派遣等による就労の都度、期間の定めのある労働契約を締結し、派遣先事業所等において業務に従事していた派遣労働者が、Y社と期間の定めのない労働契約を締結している従業員と派遣労働者との間で、通勤手当の支給の有無について労働条件の相違が存在し、同相違は、(旧)労働契約法20条に反する違法なものであり、同相違に基づく通勤手当の不支給は不法行為に当たると主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、未払通勤手当相当額等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 派遣労働者が派遣スタッフないしOSスタッフとして従事した各JOB及び受託業務における時給額、派遣労働者が要した通勤交通費及びアルバイト・パートの平均時給額の比較によれば、派遣労働者が得ていた時給額はアルバイト・パートの平均時給額よりも相当程度高額であり、その差額は、各JOBにおいては派遣労働者が通勤に要した交通費を支弁するのに不足はないものであり、受託業務においても100円程度上回っており、派遣労働者が通勤に要した交通費の相当部分を補うのに足りるものであったと認められ、派遣スタッフ等の時給は、無期転換スタッフの時給・通勤手当、調整手当と同程度であるから、派遣労働者が得ていた時給額は、一般的にみて、その中から通勤に要した交通費を自己負担することが不合理とまではいえない金額であったということができ、また、派遣労働者の賃金について、通勤手当を含めて総額制にし、別途通勤手当を支給しないこと自体を禁ずる法律は存しないこと等から、当時、派遣労働者に通勤手当を支給しないことが一般的に違法であるとの取扱いがされていたとはいえず、本件相違は、(旧)労働契約法20条の「不合理と認められるもの」と評価することはできないから、本件相違により派遣労働者に対して通勤手当が支給されなかったことについて、不法行為に当たるということはできない

通勤手当に関する格差については、一般的には、違法と判断されますが、今回は、派遣労働者との対比においては、上記判例のポイント1の理由から適用と判断されました。

派遣会社の皆さんは参考にしてください。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。