解雇350 上司に対する誹謗中傷を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司に対する誹謗中傷を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

IHI事件(東京地裁令和3年1月15日・労判ジャーナル111号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社から、平成30年11月27日付けで解雇されたことから、本件解雇が無効であると主張して、Y社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、Y社に対し、雇用契約に基づき、本件解雇日以降の月例賃金として、同日から本判決確定の日まで、毎月25日限り、月額36万円+遅延損害金の支払を求め、違法な本件解雇により精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為に基づき、慰謝料50万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、上司から指示された防図書業務の点検用の説明資料を、その作成業務が無用のものであるなどとして、その指示に従って作成しなかったばかりか、その作成を指示する上司のBに対し、事ある毎に批判し、容易にその指示に従わなかったものである。
批判の内容も、Bをごみ呼ばわりしたり、頭がいかれているなどと指摘するといった激烈なものを含み、ときには同人の態度や発言を大笑、あるいは嘲笑し、同人を貶めることもあったと指摘することができる。
しかも、そうした所為は、Bやその上長、さらにはd総務部の担当者により、口頭、メールでの告知により再三注意、警告がされてきたものであるのに改まらず、二度にわたり懲戒処分をされてもなお改まらなかったものである。
なお、Xは、Xに対して二度にわたりされた懲戒処分(本件減給処分及び本件出勤停止処分)の効力も争っているが、Xには業務指示に従わず、上長の批判を公に繰り返すといった所為があったものであり、就業規則90条14号所定の事由があったと認められるところであって、しかも、その処分の内容が減給や出勤停止といった内容にとどまっていたことにも照らせば、その有効性は優にこれを肯認することができる。
そして、Xの上長に対する批判は、Bのみならず、Cに対しても向けられるようになっており、そうしたXの不服従の様子は収束の様子を見せていない
以上の点に照らせば、Xには、Y社主張のように、少なくとも就業規則94条1項5号の普通解雇事由はあったと認めることができ、上記のとおり再三の注意や指導、懲戒処分にもかかわらずXに反省の情を見出し難かったことにも照らせば、Xを解雇することとしたY社の判断は、社会通念に照らしても、やむを得ないものとして相当なものであったと認められる。
したがって、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいえず、有効と認められる。

これだけの事情が証明できれば、解雇が有効と判断されます。

訴訟になった際に立証できるように準備することが大切です。

いかなる準備をすべきかについては、顧問弁護士に相談するようにしてください。