Monthly Archives: 11月 2021

本の紹介1221 自信は「この瞬間」に生まれる#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介をした本ですが、再度読み返してみました。

今読んでもとても良い本です。

日頃からどのような準備をすればよいのかが明確になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

実力主義が徹底しているアメリカ社会では、『昔取った杵柄』で生き残れるほど甘くはない。たとえハーバードでMBA(経営学修士)を取得しようが、高額年俸は保障されていない。完全に本人の実力次第。おまけに、ひとたび政権が替われば、4000人近い官僚が入れ替われる国。雇用の流動性が、日本に比べてはるかに高いのです。だから、みんないくつになっても、自分の価値を高めようと必死に学ぶ。」(184頁)

日本には「雇用の流動性」は良くも悪くもほとんど存在しません。

良くも悪くも雇用が強く保障されていますので、いまだに実力よりも終身雇用・年功序列が重んじられています。

多くの従業員にとっても、給与に高いボラティリティは求められていないため、結果、「安定」こそが最優先されるわけです。

決して悪い話ではありませんが、若くて優秀な人材にとっては、組織に属している理由を見出すことは極めて困難でしょう。

優秀な若手人材が集まらない、すぐに退職してしまうという嘆きをよく耳にしますが、雇用条件、雇用システムを見れば必然というほかありません。

不当労働行為280 組合員に対する部長及び社長の面談における発言と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員に対する部長及び社長の面談における発言が不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

ビジネスパートナーほか1社事件(東京都労委令和2年1月21日・労判1247号96頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対する部長及び社長の面談における発言が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社らは、面談時のB3部長の発言について、職位を離れ、友人として個人的に話をしており、支配介入の意思はなく、組合の運営や活動等に影響を与える可能性も存しないと主張する。
しかし、B3部長はY1会社の部長職でB1社長を補佐する立場にあるところ、A2に、B1社長への謝罪と損害賠償請求訴訟の和解の必要性を説き、「ユニオンを立てた時点で、もうこいつは、というふうに思われてるのよ、あなたは。あなたが上の経営者だったらどう思う。」、「それを、例えば、感情が高ぶってね、あいつは、みたいに思われているところに、それに輪を掛けたのが、その、第三者を入れたということだと思うよ、その、しかも、第三者も悪いと思うよ、私は、性質が。企業にとって。」といった発言をしている。
これらの発言は、組合加入や組合を介した交渉がA2に悪影響を及ぼすことを示唆し、同人に対し、暗に組合からの脱退を迫るもので、これが、同人をY1会社の会議室に呼び出した上で行われていることをも踏まえれば、職位を離れた個人的な話であったとは認め難く、Y1会社による組合の弱体化を図る支配介入行為に当たるというべきである。

思うのは自由です。

ただ、それを口に出したら問題になってしまうことがあります。

気を付けましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1220 ある日突然40億円の借金を背負う-それでも人生はなんとかなる。#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

5年前に紹介をした本ですが、再度、読み直してみました。

みなさん、ある日突然40億円の借金を背負うことになったらどうしますか?

普通なら自己破産です。

この本では、著者が16年かけて家業を再生した話が紹介されています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

原因を自分に探すこと。起こることはすべて必然であり、偶然ではない。そしてそれは私の考え方や行動が基になっている-と考えた。『自分が源』という考えである。・・・どんな状況でも、自分が考え方や行動を変えることで道は開ける、と信じてきた。」(178~179頁)

このブログで何度となく書いていることですが、自分の身に起こったことを会社や社会のせいにしても、結局のところ状況は何も変わりません。

自分の考え方や行動を変えるほかないのです。

断言しましょう。

自分の考え方や行動を変えずに居酒屋で愚痴を言っていても状況は1ミリも変わりません。

つまるところ、今の自分は、これまでの自分の選択の総体です。

人生を変えたければ、自分の考え方と行動を変えるほかありません。

言うは易し。

凝り固まった自分の考え方と行動を変えることは至難の業です。

だからこそ、人生はそう簡単には変わらないのです。

労働災害107 製麺機での受傷と安全配慮義務違反の有無ならびに過失相殺(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、製麺機での受傷と安全配慮義務違反の有無ならびに過失相殺に関する裁判例を見てみましょう。

製麺会社A事件(旭川地裁令和2年8月31日・労判1247号71頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対して、Y社の雇用契約上の安全配慮義務違反により負傷したとして、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として、損害金787万4583円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、365万3922円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件製麺機は、常時刃が露出している危険性を有するものであり、また、Y社においては、麺に縮れを付けるなどの物的な対策や、それに代えて労働者を十分に教育するなどして、上記作業から生じる危険性を防止する義務を負っていたというべきである。
しかしながら、Y社は、本件製麺機の刃を常時露出させたまま、特段の物的対策を取ることなくXを作業に従事させたのであり、また、本件製麺機の刃の部分が危険であることを注意喚起するような表示等をしていたとは認められないし、Y社がXに対して、本件製麺機の危険性を十分に教育したと認めるに足りる証拠はない
したがって、本件事故については、Y社に安全配慮義務違反があると認められる。また、その義務違反の内容に照らすと、不法行為が成立するというべきである。

2 Xは、本件事故当時、麺に縮れをつける作業に当たり、視線を正面に向けたまま、左手を本件製麺機の方に伸ばしたのであり、危険性を有する作業であるのに、自らの手元を注視しなかったのであるから、注意を欠いていたといわざるを得ないし、その不注意が本件事故に寄与していることは明らかといわざるを得ない。また、本件製麺機は刃が常時むき出しになっており、Xとしても、その危険性を容易に認識することができたといえる。
他方、Y社の安全配慮義務違反の内容は、特に、常時露出した刃の真下に手を伸ばすことが日常作業として予定されていたことからすれば、Y社において、危険性を有する機械から労働者の安全を守るべき要請は高かったといえるし、その方策をとることが特段困難であったとはうかがわれない。また、刃の真下に手を伸ばすことが予定されていたことからすれば、Xが左手を刃の近くに持って行ったこと自体は、格段に突飛なものとはいえない。このような事情を考慮すれば、上記にみたXの不注意を、過失相殺に当たって殊更に重視することは相当とはいえない。
以上の事情を考慮すると、本件事故に対するXの過失割合は、3割を相当と認める。

会社からすると、本件製麺機の危険性は、注意喚起の表示をするまでもなく、また、教育するまでもなく、「見ればわかるでしょ」という感じかもしれません。

しかし、裁判では、会社の責任を認めつつ、そのような事情は過失割合の問題として処理することがあり得るということを認識していれば、事前の対策を講じることもできたかと思います。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1219 お客を増やす努力をやめなさい!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

サブタイトルは、「安売り、ブラック化から抜け出すたった1つの売り方」です。

キーワードとして「エンゲージメント」という言葉が登場します。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

価格競争に打って出たら、あなたも従業員も疲弊してしまう時代。人件費を節約しようと思ったら従業員が集まらない時代。こう述べると、サービス業のマネジャーにとって暗黒時代のようですが、そうではありません。あなたは『良い利益』を追求すること、お客様や従業員と温かい関係を築くことを任されているのです。もう、昨日までのようなレッドオーシャンでの商売をやめて、全く新しいビジネスを展開していいのです。」(56頁)

価格競争なんてしてもろくなことになりません。

価格競争をするということは、価格以外に他との差別化ができないことを自認するようなものです。

正確には、差別化なんていくらでもできるのですが、正しい差別化のしかたがわからないというところでしょう。

いずれにせよ価格競争は百害あって一利なしです。

配転・出向・転籍48 配転拒否後に解雇された事案における配転の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、配転拒否後解雇された事案における配転の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

インテリジェントヘルスケア(仮処分)事件(大阪地裁令和3年2月12日・労判1246号53頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社からの配転命令に応じなかったとして解雇(普通解雇)されたが、同解雇は無効であるとして、①労働契約上の地位を有する地位にあることを仮に定めること、②賃金の仮払い、③配転命令先に勤務する労働契約上の義務がないことを仮に定めることを求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
Y社は、Xに対し、令和3年2月から本案訴訟の第一審判決言渡しに至るまで、毎月25日限り、16万3000円を仮に支払え。

【判例のポイント】

1 債務者は、センターⅠにおいて、印鑑の不正所持という問題や、ケアマネージャーが、多数にわたって介護保険に定められたルールを逸脱して居宅サービス計画書の作成等を行っていたという重大な不正行為が発覚したことから、人員配置について見直すことを含めて対応策を検討していたもので、本件配転命令は同対応策として発令されたものである旨主張する。
しかし、確かに、ホロニクスグループにおいて、令和元年6月21日付けで、利用者の印鑑の使用に関する注意喚起が行われたことが認められるが、同注意喚起は、京都府八幡市社会福祉協議会職員のケアマネージャーによる行為についての新聞報道がなされたことを受けてのものであって、センターⅠにおいての問題が発覚したことを受けてのものではなく、ほかに、センターⅠにおいてY社が主張するような問題が発覚したことを客観的に裏付ける疎明資料もない。
また、仮に、Y社が主張するような問題が発生したため、Y社内部あるいはホロニクスグループ内部において検討がなされたり、行政への対応を行ったり、対応策の検討が行われたのであれば、そこには何らかの痕跡が残ることが想定されるが、本件において、Y社が、そのような検討、対応等を行ったことを客観的に裏付けるに足りる疎明資料はない
さらに、Y社あるいはホロニクスグループ内において、一般的な人事異動として、センターⅠとその余の施設の間において、定期的に人事異動が行われていたことを一応認めるに足りる疎明資料もない
そして、Xが、Y社に対し、就業規則の変更について問題視する内容のメールを送信しているところ、労働者の同意がなくても、就業規則を変更して1日の所定労働時間を延長したり、休日に関する定めを変更することが可能な場合もあるが(なお、Y社における就業規則の変更が有効か無効であるかは現時点では明らかではない。)、その点をさておき、Xが上記のようなメールを送信した約1か月後に本件配転命令が発令されたものである
以上を総合考慮すれば、本件配転命令は、業務上の必要性を理由として発令されたものと評価することはできず、ひいては、配転命令権の濫用として無効となるといわざるを得ない。
そうすると、本件配転命令に従わなかったことを理由とする本件解雇も無効となるから、本件においては、被保全権利が認められることとなる。

解雇理由を配転命令に従わなかったこととする場合には、当然、前提となる配転命令が有効である必要があります。

今回の事案では、配転命令に業務上の必要性が認められなかったため、無効と判断されています。

突発的な配転命令を行う場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介1218 勉強の価値(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

帯には「子供が勉強しないのは、大人が勉強していないから。」と書かれています。

「勉強しなさい!」ってどの口が言っとんねん、と子どもたちは思っているのでしょうか(笑)

実際、大人になって毎日勉強している人がどれほどいるでしょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

いずれにしても、大人は子供に対して正直に語る必要があるし、大人自身が、もう少し勉強というものを正しく理解した方が良い。しかし、ほとんどの大人は、大学までのどこかで勉強から落ちこぼれた人たちなので、子供にきちんと勉強の説明ができない。そういうときは、まず自分が勉強をすること、再び学び始めること、子供を説得するには、それくらいの努力(勉強)は必要だろう。自分が嫌いだったものを、子供には好きになってほしい、というのも、虫が良すぎる。自分ができなかったことを子供には実現してもらいたい、と考えるような親の言うことを聞く子供はいない。」(89~90頁)

日本の社会人の勉強のしなさ加減は有名な話ですが、本をろくに読まない大人が子どもに「本を読みなさい」と説教するのはまさに滑稽です。

肥満体型の医師から「健康のために痩せなさい」と言われているようなものです。

仕事のできない上司から「営業成績を伸ばせ」と言われているようなものです。

ドノクチガイットンネン(笑)

小さい頃に勉強の習慣が身に付けられると、その後のスタディーライフが非常に楽ですね。

管理監督者49 採用権限を有する従業員の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、採用権限の有無と管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

カーチスホールディングス事件(東京地裁令和3年3月17日・労判ジャーナル113号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、所定労働時間を超える残業を行ったとして、未払割増賃金等の支払を求めるとともに、労基法114条に基づく付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等請求は一部認容

付加金等請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、採用面接については実質的な権限を有していたと認められるが、これは、使用者の人事権の一部に過ぎず、その他の業務内容に照らしても、Xは、基本的には財務経理業務を担当していたものであり、Xが経営上の事項について実質的な決定権限を有していたものとは認められないことからすれば、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権原があったとは認められず、また、Xが、本件請求期間中、基本的には午前9時までには出勤し、朝礼に参加し、朝礼の当番も割り振られていたことからすれば、Xは、財務経理業務の繁閑に応じて残業をする必要があったものと認められ、Xは、始業時刻及び終業時刻について制約があったものであり、自己の裁量で労働時間を管理することが許容されている立場にあったとは認められないこと等から、Xが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を有していたとは認められず、また、Xがこのような実質的な決定権限を行使するにあたって労働時間に関する裁量を有していたとも認められないことからすれば、Y社においてXの処遇が高水準であり、管理監督者としてもふさわしい待遇であったと認められるとしても、Xが労基法41条2号の管理監督者であったと認めることはできない。

2 Y社が割増賃金を支払われなかったのは、Xを管理監督者であると認識していたためであるところ、結果として管理監督者とは認められないものの、XのY社内における肩書、業務内容及び処遇等に照らすと、Y社がXを管理監督者に該当すると認識したことには一定の理由はあると解され、Y社がXに割増賃金を支払わなかったことが悪質であると評価することはできないから、本件において、Y社に付加金の支払を命ずることは相当ではない。

いつもながらの開かずの扉です。

日本の中に、管理監督者性の要件を満たしている管理職が何人いるでしょうか・・・。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。

本の紹介1217 無理ゲー社会(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

今の社会の生きにくさや窮屈さや残酷さが鮮明に書かれています。

少し前から「親ガチャ」なる言葉が登場していますが、子は親を選べないということを意味するのだと思いますが、「無理ゲー社会」の1つの原因と解釈されています。

真実を言うと炎上するこの社会で、この本は燃料としては十分でしょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

遺伝なのか、環境なのか どちらが正しいかは、(認めるかどうかは別として)現在ではほぼ決着がついている。・・・ほとんどの項目で遺伝と非共有環境の影響が圧倒的に大きく、共有環境の影響はほとんどないか、きわめて小さい。」(111~112頁)

記載のとおり、「認めるかどうかは別として」です。

認めたって、認めなくたって、僕たちにできることは、日々、努力をすることくらいなものです。

努力しても変わらないこともあるでしょうが、努力しなければ変わるものも変わりません。

遺伝のせいにするのも環境のせいにするのも自由ですが、そこから人生は1ミリも変わりません。

努力するか、諦めるか。

ただそれだけの話。

不当労働行為279 組合についての記事掲載及び書面送付と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合についての記事掲載及び書面送付が不当労働行為にあたるかが争われた裁判例を見てみましょう。

国・中労委(シーフォービジネスインテグレーション)事件(東京地裁令和3年3月25日・労判ジャーナル113号44頁)

【事案の概要】

本件は、X組合が、都労委に対し、Y社が平成●年●月●日にインターネットのフェイスブックページにX組合に関する記事を掲載したこと及びY社がY社の退職者に対してX組合に関する記述に関する記事を掲載したこと及びY社がY社の退職者に対してX組合に関する記述を含む書面を送付したことが、それぞれ労働組合法7条3号の不当労働行為(支配介入)に該当するとして救済命令を申し立てたところ、都労委が、前記各行為が不当労働行為に当たると認めて救済命令を発し、Y社はこれを不服として、中労委に再審査を申し立てたが、中労委が、前記各行為は不当労働行為に当たると認めて、初審命令を一部変更した救済命令を発したため、Y社が、中労委が発した本件命令の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件記事は、Y社のフェイスブックページに掲載されたものであり、Y社の退職者やその他の読者が閲覧できるものであり、本件記事掲載は、Y社の退職者を含む読者に対して、組合と関係を持つとトラブルに巻き込まれかねず、JJK脱退手続が早期に行われない可能性があるという危惧を抱かせるものであり、Y社の退職者のうち、非組合員にはX組合に加入することを躊躇させ、X組合員にはX組合から脱退することを促す効果を持つ行為であり、X組合の組織結成を妨害し、X組合を弱体化させる行為であると認められること等から、本件記事掲載は、支配介入に該当するものと認められる。

2 本件書面送付は、退職者に対して書面を郵送するという方法で行われたところ、本件書面の記載内容の要点は、Y社の発行済株式の全部を所有していたA社の代表取締役Bにより、不法な会社の乗っ取りが行なわれたが、脱退手続を含む離職手続に関し、添付した退職経緯書を記入して返信すれば、離職手続を完了させるというものであり、送付した退職者に対して、X組合は、建造物侵入などで逮捕者を出し、組合員に使用者の情報を盗ませる不法行為を行っている組織であり、また、X組合のY社に対する争議行為はBの画策であるとの印象を与えるものであるから、本件書面送付は、読者である非組合員にはX組合に加入することを躊躇させる効果をもたらし、組合員には組合から脱退することを促す効果をもたらすものといえ、組合を弱体化させる行為であると認められること等から、本件書面送付は、組合への支配介入に該当するものと認められる。

表現の自由があるとはいえ、公共の福祉による制約を受けます。

今回の事案のように組合に関する表現行為については、労組法の不当労働行為による制約を受けることは言うまでもありません。

軽率な行為・言動はトラブルに発展しますのでお気を付けください。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。