管理監督者48 投資会社の専門社員の管理監督者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、投資会社の専門社員の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

三井住友トラスト・アセットマネジメント事件(東京地裁令和3年2月17日・労判ジャーナル111号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されて就労するXが、Y社に対し、①労働契約に基づく賃金請求として、平成28年1月4日から令和元年7月31日まで(以下「本件請求期間」という。)の未払残業代合計2747万1761円+遅延損害金、②労基法114条に基づく付加金請求として、2396万3762円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、1978万0532円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、1402万3983円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 職責及び権限について
Xの担当する業務は、ファンドマネージャー等が示した見解を前提とした月次レポート等の内容に誤りがないかを確認したり、当該見解を踏まえてレポートを作成する業務であって、専門的かつ重要な業務ではあるものの、企画立案等の業務に当たるとはいえず、また、これらの業務が部長決裁で足りるとされていることからすれば、経営上の重要事項に関する業務であるともいえない
また、Xは、所属する部署の管理者ミーティング等に参加しておらず、月報関連業務以外に当該部署の業務を担当していたことは認められないほか、部下もおらず、人事労務管理業務に従事していたとは認められない
以上によれば、Xが経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当していたとは認められず、また、人事労務管理業務も担当していないことからすれば、Xが、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されていたとは認められない

2 労働時間の裁量について
Xは、月次レポートの精査・準広告審査業務を毎月第3営業日から第14営業日の間に行い、共通コメントのチェックを第3営業日の午前9時頃から正午頃までの間に行い、臨時レポートについては年間10回程度行うことになっており、それらの業務がある期間は、基本的に当該業務のために時間的にも拘束されているものの、これらの業務の閑散期においては、比較的自由に時間を使うことが許容され、遅刻・早退があっても賃金から控除されることはなく、早朝及び深夜の業務についても、健康管理の観点から複数回の指摘はあったものの、自己の裁量で労働時間を決定できる環境にはあったといえることからすれば、労働時間について一定の裁量はあったといえる。

3 処遇について
本件請求期間におけるXの年俸は約1270万円(基本給部分が1140万円)であり、部長に次ぐ待遇であるといえ、Y社の社員の上位約6%に入ることからすると、待遇面では、一応、管理監督者に相応しいものであったと認められる。

4 小括
以上によれば、Xは、自己の労働時間について一定の裁量があり、管理監督者に相応しい待遇がなされているものの、実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限を付与されているとは認められないことからすれば、Xが、管理監督者に該当するとは認められない。

開かずの扉です。

認容額をご覧ください。

管理監督者として対応することは、もはや百害あって一利なしです。

・・・とかれこれ言い続けていますが、一度、痛い目にあわないとわからないのが実情です。

労務管理は事前の準備が命です。顧問弁護士に事前に相談することが大切です。