賃金224 基本給減額の合意が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、基本給減額の合意が無効とされた事案を見ていきましょう。

グローバルサイエンス事件(大阪地裁令和3年9月9日・労判ジャーナル118号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結していた元従業員Xが、Y社に対し、未払賃金等の支払を求め、XがY社から解雇されたことについて、本件解雇が違法無効である旨主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく未払賃金等の支払を求め、民法702条1項所定の事務管理に基づく費用償還請求として、Y社の事務に係る立替金約7万円の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賃金等請求一部認容

立替金等支払請求認容

【判例のポイント】

1 賃金減額合意について、Y社は、令和2年1月23日にXに対して退職勧奨をしたところ、Xはこれを拒否し、「給与は18万円でよいので、どうか働かせてください、営業成績は必ず改善します」と懇願し、Y社はこれを了承したと主張するが、そうすると、Xの賃金減額の申出は、29万円から18万円という大幅な減額であってXに対して大きな不利益を与えるものであるところ、Y社による退職勧奨の影響を受けてされた申出であるから、その不利益の大きさ及び減額に至る経緯に照らしてXの自由な意思に基づいてされたものとはいえないから、Xの基本給を29万円から18万円に減額する旨の合意があったとは認められない。

仮にXから懇願されたという事情があったとしても、判例のポイント記載のような事情があると、裁判所としては、自由な意思に基づいた合意とは認めてくれません。

会社としては対応方法が悩ましいところです。

賃金の減額をする場合には、事前に顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。