Monthly Archives: 6月 2022

本の紹介1290 自分を動かす名言#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から6年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

タイトル通り、さまざまな名言が紹介されています。

たった1つでも自分を動かす名言に出会えれば、それだけで十分です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人間は自由であり、つねに自分自身の選択によって行動すべきものである。」(144頁)

私が人生で最も大切にしていることです。

私にとって、「自由」こそがすべての価値の最上位にあります。

いかなることについても「選択の自由」があることが幸せの定義です。

だからこそ、不合理な強制や無意味な制限は、死ぬほど嫌なのです。

自らの自由意思に基づいて、あえて不自由な生活を選択してしまう方、多くないですか?

どんどんどんどん身動きが取りにくい方へ行ってしまう。

まあ、それも自由ですが。

競業避止義務31 派遣会社における同業他社への引抜き行為の違法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、派遣会社における同業他社への引抜き行為の違法性について見ていきましょう。

スタッフメイト南九州元従業員ほか事件(宮崎地裁都城支部令和3年4月16日・労判1260号34頁)

【事案の概要】

本訴:X社は、X社の従業員であったYが、Yの設立したZ社と共謀の上、X社に在職中、X社の他の従業員をZ社に引き抜いたと主張し、Yに対しては不法行為又は債務不履行に基づき、Z社に対しては不法行為に基づき、損害賠償金2513万0595円+遅延損害金の支払を求めた。

反訴:Yらは、X社が、Yの名誉及びZ社の信用を毀損する行動を行っていたと主張し、X社に対し、不法行為に基づき、損害賠償金+遅延損害金の支払を求めた。

【裁判所の判断】

1 Y及びZ社は、X社に対し、連帯して315万5587円+遅延損害金を支払え。

2 X社は、Yに対し、77万円+遅延損害金を支払え。

3 X社は、Z社に対し、110万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 前提として、登録状態スタッフは、そもそもX社の従業員ではないこと、派遣スタッフは、より良い待遇やより多くの就業先の可能性を求め、複数の派遣元企業に登録するのが通常であることから、債務不履行又は不法行為が問題となる引き抜き行為の対象にはならない

2ー1 本件で問題となっている引き抜き行為は、いずれも派遣先企業を変えずに、派遣元企業だけを変えたというものである。
このような場合、X社は、まずは、当該派遣スタッフの派遣料相当額の売上げを失うことになる。これに加え、当該派遣先企業のスタッフ受け入れ可能人数には上限があると考えられることから、X社が、当該派遣先企業へ代わりの派遣スタッフを派遣することが不可能になる可能性が高くなる。
そのため、X社から移籍してきた派遣スタッフをX社在籍時と同じ派遣先企業へ派遣する行為は、X社に対する影響が大きい。
2-2 Z社は、YがX社に在職中の平成30年8月1日から4名の雇用スタッフをQ3に派遣し、収益を上げている。被用者は、会社に在職中は雇用契約上、職務専念義務を当該会社に対して負っているので、当該会社が副業を認める等の特段の事情がない限り、実際に収益を上げることは許されない。
そうすると、Yが、X社在職中に、Z社を設立し、実際に収益を上げていた事情は、行為の悪質性を基礎づける
2-3 Yは、勧誘の際、派遣スタッフに対し、X社とは話がついているかのような話をし、他方で、X社には内密にするよう依頼し、派遣先企業に対しても、派遣スタッフの移籍は、X社も了承済みであるかのような言動を行っている。
勧誘を受けた派遣スタッフにとっては、自身に対する待遇が最も大きな関心事であることは否定できないが、派遣先企業を変えることなく派遣元企業が変わることについては、従前雇用契約を締結していた原告との関係を気にして、原告による了承があるかは相当程度関心を持つのが通常であると考えられる。現に、P6も、X社と被告らとの間で、派遣スタッフの移籍について話がついていたと聞いたことが、移籍の決断をする理由となった旨供述している。
また、派遣先企業にとっても、派遣スタッフを従前派遣してくれていたX社との信頼関係の問題から、X社による了承があるかは大きな関心事であると考えられる。
そうすると、派遣スタッフ及び派遣先企業に対するYの言動には、問題があるといわざるをえない
2-4 Q2営業所の雇用スタッフ及び粗利は、平成30年6月は163人、648万0065円であったのに対し、同年9月は133人、331万4543円であり、被告らによる引き抜き行為の前後でそれぞれ減少していることに照らすと、被告らによる引き抜き行為がX社に与えた影響は軽視することができない

3ー1 被告らがX社に対する負の印象を喧伝し派遣スタッフを移籍させたものではないこと、Yがスタッフナビゲーターの情報を持ち出して引き抜き行為を行っていたわけではないこと、X社よりも良い待遇をうたって派遣スタッフを勧誘すること自体は問題がないこと、平成30年6月から8月は、Q2営業所の粗利率は、Q2営業所の従業員の中ではP7が担当する企業が一番高く、Yが粗利率の高いところを狙って引き抜き行為を行ったとは認められないことなどといった事情を考慮しても、本件の引き抜き行為は社会的相当性を逸脱しているといわざるを得ない。
よって、Yは、引き抜き行為について債務不履行又は不法行為責任を負う。
3-2 また、Z社は、Yにより設立され、Yが代表取締役を務めることから、Z社の行為とYの行為は一体といえ、Z社は、引き抜き行為によって、経済的利益を得ている立場にある。
よって、Z社は、Yと共謀の上、社会的相当性を逸脱した引き抜き行為を行っていたものと認められ、不法行為責任を負う。

4ー1 これらの文書中の「重大な非違行為」、「当社の事業に対して、重大な悪影響を及ぼしております」、「当社の従業員及び当社の取引先に対して、真実と異なる内容の説明を行う等をしていた」、「Y氏に対し懲戒解雇を申し渡しております」、「Y氏及びZ社は、当社が長年月をかけて構築した、このような有形・無形の資源を理由なくして侵奪しております」、「Y氏は、・・・当社の基幹システムである「スタッフナビゲーター」に保管されている顧客情報および個人情報を無断で持ち出し勝手に利用していた」等の記載は、既知の事実ということはできず、その事実の有無に関係なく、経済活動を営んでいく被告らの社会的評価を低下させるものであることは否定することができない
4-2 上記文書に記載された内容は、X社と対立関係にある小規模な一企業にすぎないZ社及びその代表者であるYに関する事実及びその評価にすぎず、公共の利害に関する事実ということはできない。
4-3 また、その記載内容も被告らを誹謗中傷するものであり、およそ公共の利害に関するものということはできない。
4-4 また、配布された文書に記載された情報が公共の利害に関するものということはできない。その上、「Y氏からZ社へ派遣契約を切り替えるよう勧誘されたとしても、一切取り合わないようお願い申し上げます」などといった記載からは、公益を図るためというよりは、X社の経済的利益を守るために、X社は文書の配布を行ったと認められる。
4-5 さらに、配布した文書の真実性については、Yを懲戒解雇した事実や、Yがスタッフナビゲーターに保管されている顧客情報及び個人情報を無断で持ち出して勝手に利用していた事実は、真実ではなく、これを真実と信じたことに関する正当な根拠もない。
よって、公共の利害に関する事実、公益を図る目的、内容の真実性に関しては、X社の主張を認めることはできず、これらを理由とする違法性阻却事由は認められない。
4-6 また、X社は、被告らの引き抜きを受けて、自身の経済的損失を最小限に食い止めるために、派遣スタッフや派遣先企業に文書を配布せざるを得なかった旨主張する。
しかし、X社が派遣スタッフや派遣先企業に配布した文書は、被告らを誹謗中傷する内容を含んでいるものであり、それが複数回にわたり配布されていることなどに照らすと、相当性があるとは認められない。
4-7 以上より、X社の主張する違法性阻却事由は認められず、X社は、被告らの被った損害につき、不法行為に基づく損害賠償責任を負う

本件は、派遣会社に関する紛争ですが、決して派遣業界特有の問題ではありません。

特に注意が必要なのは、上記判例のポイント4-1~7です。

引抜き行為発覚後、被害会社としての対応を誤ると、名誉毀損、業務妨害等を理由に損害賠償請求の反訴を起こされてしまいます。

感情的にならず、慎重に対応することが求められます。

引抜き行為の問題については顧問弁護士に相談をし、慎重に対応を検討してください。

本の紹介1289 まず、のび太を探そう!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

どのように価値を創造していくかについてドラえもんとのび太くんを例えに説明しています。

ビジネスの大原則がわかりやすい例を用いて説明されているので、ビジネス初心者にはいい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『のび太』と『ドラえもん』の関係を思い出してみてください。のび太はドラえもんに”モノ”を要求しているでしょうか?もちろん『スモールライト出してよ~』なんていう場面もありますが、それはドラえもんが一度でも、ひみつ道具を出した後のことですよね。じつは、のび太は、モノがほしいとは言ってません。」(97頁)

さて、自身のビジネスに応用できるでしょうか。

新しい商品やサービスを売ろうとする場合、顧客は「スモールライト」の存在を知りません。

言うまでもなく、その効果について知る由もありません。

「こんなのあったらいいよね」という商品・サービスは、こちらから提案しなければ決して生まれません。

顧客のニーズからイノベーションが生まれることはないということです。

顧客は「iPhoneつくってよ~」とは言ってくれないのです。

解雇368 合意解約申込みの撤回が認められなかった事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、合意解約申込みの撤回が認められなかった事案を見ていきましょう。

日東電工事件(広島地裁福山支部令和3年12月23日・労経速2474号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期労働契約を締結していたXが、Xについて辞職又は合意解約を理由とする上記労働契約の終了の効果が生じておらず、かつ、上記労働契約が労働契約法19条によって更新されたと主張し、Y社に対し、(1)Xが労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、(2)賃金請求、(3)賞与請求をした事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件各退職願の内容をみると、その提出行為が辞職の意思表示であるか合意解約の申込みの意思表示であるかはともかく、少なくとも、XとY社との間の労働契約を終了させる意思を表示したものであることは明らかであるから、本件各退職願の提出は、退職の意思表示であると認めるのが相当である。

2 辞職は、労働者の一方的意思表示による労働契約の解約であって、使用者に到達した時点で解約告知としての効力を生じ、これを撤回することはできない。辞職の意思表示がこのような法的効果を有するものであることを考慮すると、退職の意思表示が辞職の意思表示であるといえるためには、明確に辞職の意思表示であると解し得る状況であったことを要するというべきである。
確かに、Xは、本件各退職願の提出の数分後に、Pに対し、「辞めることになりました」などという内容のメールを送信しており、このようなXの行動を考慮すると、本件各退職願の提出行為をもって辞職の意思表示であると解する余地は十分にある。しかし、本件各退職願の記載内容からすれば、その提出行為をもって撤回の余地のない辞職の意思表示であると解することが相当であるといえるかは疑問を差し挟む余地があるし、Xに適用されるY社の就業規則の規定内容も考慮すると、辞職の意思表示であると明確に解し得る状況であったとみるには疑問がある
本件各退職願の提出行為は、合意解約の申込みの意思表示であると認めるのが相当である。

3 本件話合いにおける「撤回」との文言に関連するXの言動は、自己都合による退職となるか会社都合による退職となるかを関心事としていたXが、会社都合による退職となるよう交渉する手段として行ったものにすぎないとみることもあり得るところである。加えて、Xが、本件話合いにおいて、本件各退職願の返還を求めるなどしておらず、合意解約の申込みの意思表示を撤回したことと整合しない行動をとっていたことも考慮すると、本件話合いにおいて、合意解約の申込みの意思表示をXが撤回したと認めるには足りない

本件の「退職願」には、「今般、 年 月 日付で退職いたしたくご許可下さるようお願い申し上げます。」と記載されており、Y社の承諾が求められているような記載になっていました。

労働者には退職の自由が認められていますので、退職にあたり使用者の許可は必要ありませんが、仮に本件同様の退職願が提出された場合には、会社としては速やかに許可・承諾をすることによって、退職の意思表示の撤回を回避することができます。

退職合意をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1288 よくばらない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

医師の鎌田先生の本です。

帯には「”がんばる私”に苦しんでいる人へ」と書かれています。

そういう系の本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

よくばらないと、優しくなれる。よくばらないと、強くなれる。よくばらないと、幸せになれる。」(帯)

物欲、所有欲が良い例です。

もっといいモノを手に入れたいという欲がないと、お金はそんなにたくさん必要ありません。

どうでもいいことにこだわらない生き方をすると、もうほとんどのことがどうでもよくなります。

大きい家に住みたい、高級外車に乗りたい、何百万もする腕時計をしたいとか、もうほんとどうでもいいです。

小さいアパートでいいです。

軽トラでいいです。

時計しません。

物欲・所有欲0。

メンタルヘルス8 リハビリ期間中の賃金請求の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、リハビリ期間中の賃金請求の可否に関する裁判例を見てみましょう。

ツキネコ事件(東京地裁令和3年10月27日・労判ジャーナル121号46頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結し、休職していたXが、Y社に対し、インク班インク製造チームへの復職命令を受けたが、同命令が違法であるとしてこれに応じずに復職後の配属先の変更を求めて出勤しなかったところ、Y社から解雇されたため、同解雇が無効であるとして、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記復職命令以降Y社がXの労務提供を受領拒絶したとして、また、休職中に行った復職に向けたリハビリが労務の提供に当たるとして、労働契約に基づき、未払賃金等の支払を求めたほか、Y社の代表取締役であるCがXに対して違法な退職勧奨を行ったとして、損害賠償金約823万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Cは、リハビリの経過を観察することのほかに、リハビリを通じて本人の適性を受け入れさせること、経営がNグループに替わったことを理解させることなどの目的で、7か月余りの間にXと21回の面談を行い、その間、たびたびY社を退職して別の会社で働く選択肢もある、復職したら嫌なこともあると予想されると話すなどしており、Xに対して複数回にわたって退職勧奨を行ったことが認められるが、Xは、Cに対し、退職勧奨をも明示的に拒絶したことはないし、CもXの復職には応じない、Xを辞めさせるなどと明言したことはないことから、Cによる退職勧奨の頻度、回数はやや多いとはいえるものの、Cの退職勧奨がXの自由な意思形成を阻害したとは認められず、現に、XはCの退職勧奨に応じていないし、CもXに対して復職命令を発していること等から、Cによる退職勧奨は違法とは認められない。

2 Xは、リハビリ作業期間中、休職を前提として、傷病手当金を受給しており、傷病手当金は、「療養のため労務に復することができないとき」(健康保険法99条1項)に支給されるのであるから、Xがこのような手当を受給している以上、リハビリ作業が債務の本旨に従った労務の提供であるとは認められず、また、Xのリハビリ開始に先立つ平成30年8月8日、X、C及びKで行われた面談の際、リハビリ期間中は傷病手当金を受給し、リハビリを経て復職となり、その時点で給与が発生することが話し合われており、リハビリ期間中は無給であることが合意されたと認められるから、Xは、リハビリ期間中、債務の本旨に従った労務の提供をしたとは認められない上、その期間中は無給であることが合意されたのであるから、Xのリハビリ期間中の賃金請求を認めることはできない。

休職期間中に、復職の可否を判断するために、リハビリ出勤が行われることがありますが、その際に賃金支払義務の有無が争点となることがあります。

ポイントとしては、「債務の本旨に従った労務の提供」に該当しないように留意するという点です。

リハビリ出勤をさせる場合は、顧問弁護士の助言の下に慎重に進めることをおすすめいたします。

本の紹介1287 勝ちスイッチ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

絶対王者井上尚弥選手の本です。

帯には「王者は何を考えて、何を考えないのか。」と書かれています。

日頃、井上選手がどのようなことを考えているのかを知ることができます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自信は大事だが、それが過信になれば、諸刃の剣となって、自分を見失い、ボクシングを壊すことになる。それを人はスランプや不調と呼ぶのかもしれないが、それをコントロールするのは自分しかない。」(147頁)

僕は「根拠のない自信」という言葉が嫌いです。

そんなものは存在しないと思うからです。

何の努力もせず、どうやって自信を持てというのでしょう。

どれだけの準備をしてきたのかを一番知っているのは自分自身です。

人と同じ生活をして、「俺は強い」と自分を信じ込ませて一体何の役に立つのでしょう。

弱い弱い自分が小さな自信を持つためには、毎日努力を続けるほかに方法はありません。

配転・出向・転籍50 配転命令拒否を理由とする懲戒解雇の有効性

おはようございます。

今日は、配転命令拒否を理由とする懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

NECソリューションイノベータ事件(大阪地裁令和3年11月29日・労経速2474号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、配転命令を拒否したことを理由として懲戒解雇されたことにつき、同懲戒解雇が無効であるとして、労働契約上の地位を有することの確認、同懲戒解雇後の賃金及び賞与並びにこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めるとともに、多数の従業員の面前で懲戒解雇通知書を読み上げられたことが不法行為に当たるとして、民法709条に基づき損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 c社グループの時価総額は厳しい競争の中で大きく低下しており、平成28年度に策定した中期経営計画を翌年度である平成29年に撤回せざるを得ない状況にあったところ、そのような状況にあれば、経営状況を改善するために様々な方策を講じる必要性があるといえる。実際、c社グループにおいては、平成24年に特別転進支援施策を実施して人員削減を図るなどしており、同施策に応じて多数の従業員が応募するという状況にあった。
そして、c社グループがそのような状況にあることに照らせば、拠点(事業場)を集約して、組織の構造改革や業務の効率化を図ることも経営改善に向けて講じられる方策の一つであるということができる。
本件においては、統合オペレーションサービス事業部について、関西、北海道及び東海の三つの事業場を閉鎖し、東北、北陸、九州、沖縄及びh事業場の五つの事業場に集約されることとなったところ、閉鎖する事業場の選定において、不自然・不合理な事情は見受けられない
また、拠点集約に伴い、事業場を閉鎖することとした場合には、閉鎖される事業場に勤務していた従業員の処遇が問題となるところ、使用者としては、従業員の失業を可及的に回避するため、ほかの事業場への配転、出向、転職支援等の方策を検討することとなる。・・・閉鎖する事業場である関西・西日本オフィスに勤務していた従業員を、h事業場に配転するということは、業務の効率化や、閉鎖される事業場に勤務していた従業員の雇用の維持という観点からみても、合理的な方策であるということができる。
以上からすると、本件配転命令について、業務上の必要性があったということができる。

2 本件懲戒解雇は、Xが本件配転命令に応じなったことを理由とするものであるところ、本件配転命令が有効であることは前記で説示したとおりである。
そして、Y社の就業規則においては、業務上必要がある場合には、配転を命じることがあること、職務上の指示命令に反して職場の秩序を乱した場合には、懲戒解雇事由に該当するとされているところ、前記認定したとおりの経過を経て配転命令がなされたにもかかわらず、同命令に応じないという事態を放置することとなれば、企業秩序を維持することができないことは明らかである。
以上を総合考慮すれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理性があり、かつ社会通念上も相当なものといえ、懲戒権の濫用に当たるということはできない。

リストラの一環として行われた配転命令が有効と判断され、当該配転命令に応じなかったことが懲戒解雇事由に該当すると判断されました。

リストラを進める場合には事前に顧問弁護士に相談し、正しく進めることをおすすめいたします。

本の紹介1286 スイッチ・オンの生き方#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

今から10年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

遺伝子に着目した本ですが、特に遺伝子に興味がなくても、十分参考になる本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

同類を求めていたら、いつまでたっても『どんぐりの背比べ』の域を出ることができません。目指していることがあるのなら、先にそれを成し遂げた『その道の先輩』との出会いを積極的に求めていくといいでしょう。一流に交わることによって刺激を受けて、眠っていた遺伝子がオンになることもあるのです。」(126頁)

毎日毎日、同じ人とだけ接していても、そこには刺激も成長もありません。

みなさんは、1週間のうちに、何冊本を読み、また、何人の人と話をしますか。

意識をしなければ、これから先もずっと、昨日と同じ今日の繰り返しです。

同じレベルの人たちと、愚痴を言い合っても、傷をなめ合っても、状況は何ひとつ変わりません。

求めよ、さらば与えられん。

自分の人生は、自分の力で変えるしかありません。

従業員に対する損害賠償請求11 自損事故の損害に基づく元従業員に対する損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、自損事故の損害に基づく元従業員に対する損害賠償請求に関する裁判例を見ていきましょう。

阪本商会事件(大阪地裁令和3年11月24日・労判ジャーナル121号36頁)

【事案の概要】

甲事件は、Xを雇用していたY社が、Xに対し、XがY社の所有する普通貨物自動車を運転中、自損事故を起こして本件車両を損傷させ、Y社に損害を発生させたと主張して、不法行為に基づき、損害金32万円+遅延損害金の支払を求める事案である。
乙事件は、Xが、Y社に対し、①XはY社から平成30年4月16日から同年5月15日までの賃金の支払を受けていないと主張して、労働契約に基づき、上記未払賃金27万3310円+遅延損害金の支払を求めるとともに、②Y社はXの賃金から月額500円ずつ積立金の名目で控除しながら、退職後も上記金員を返還しないと主張して、不当利得に基づき、利得金合計2万6500円+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、甲事件については、Y社のXに対する請求を、10万円+遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却し、乙事件については、XのY社に対する前記①の請求を、27万3310円+遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却し、XのY社に対する前記②の請求を棄却したところ、Y社が敗訴部分を不服として控訴した。
なお、原審は、乙事件におけるXのY社に対する前記②の請求を棄却したが、これに対してXは控訴も附帯控訴もしていないため、上記請求については当審の審理・判断の対象ではない。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、本件事故により32万円の損害を被っており、本件事故はXによる自損事故であり、その原因は専らXの過失にあることが認められる。
他方、Xは、Y社代表者の運転手を勤めながら、日常的にY社代表者の命じる様々な雑用をこなし、これを通じてY社の業務に従事してY社に貢献していたものであり、かかる事情は、損害の公平な分担の見地から考慮されるべきである。
そうすると、本件の事実関係の下においては、Y社が本件事故により被った損害のうちXに対して賠償を請求し得る範囲は、信義則上10万円を限度とするのが相当であり、Y社がXに対してこれを超える部分の請求をすることは認められないというべきである。

32万円の損害に対して10万円の限定で請求可能と認定されています。

感覚的にはこの程度だろうという相場観を理解しておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談をすることを習慣化しましょう。