Monthly Archives: 2月 2023

本の紹介1368 「勝負強い人間」になる52ヶ条(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

勝負はいつだって覚悟を持った人のほうが強いです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どんなに負けが込んでも、絶対にあきらめずに勝負を続け、相手が音を上げるまでねばって最後には勝ってしまう。『あいつは強いから勝つんじゃなくて、勝つまでやめないから強いんだよ』そう言われるぐらいにねばりがある人というのは強い。」(108~109頁)

すぐに諦めるくせがついてしまうと、土俵際でのふんばりがきかなくなってしまいます。

最後に土俵の外に足を出すのは、いつだって自分があきらめたときです。

「負け癖」「諦め癖」をつけないことがとってもとっても大切です。

負けることや諦めることを当たり前にしてはいけません。

そのために、日々、四股を踏み続け、鍛錬をするしかないのです。

労働時間89 事業場外労働のみなし時間制適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、事業場外労働のみなし時間制適用の可否に関する裁判例を見ていきましょう。

ヨツバ117事件(大阪地裁令和4年7月8日・労判ジャーナル129号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、時間外労働を行ったとして、雇用契約に基づく割増賃金等の支払を求め、また、不当な天引きがあったとして、雇用契約に基づく未払賃金等を求め、さらに労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 事業場外労働のみなし時間制の「労働時間を算定し難いとき」(労基法38条の2第1項)に該当するか否かについて、Y社ではタイムカードの打刻が義務付けられており、Xは、タイムカードが残存する月以外の月についてもタイムカードを打刻していたことがうかがわれ、そして、タイムカードは打刻した時刻を客観的に記録するものであること、Xのタイムカードをみると、一部手書きの時刻もあるものの、おおむね出勤時刻及び退勤時刻が打刻されていることからすれば、Y社とすれば、Xのタイムカードの打刻内容を確認することで、Xの労働時間を把握することが容易に可能であったということができること等から、本件におけるXの業務が、「労働時間を算定し難いとき」に当たると認めることはできない。

労働時間の例外規定については、有効要件が厳しいので、安易に導入するのは非常に危険です。

残業代を減らすための王道は、残業時間を減らすことです。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1367 人生の原理#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、本の紹介です。

今から9年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

1頁目には、わずか1行「人生がうまくいくかどうか、それはあなた次第です。」と書かれています。

当たり前のように思えますが、実は、これがすべてです。

すべては自分自身の選択の結果、今の自分があるのですから。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

気づけるかどうか。目の前のチャンスに、最高のアイデアに、なくてはならない人に、気づくことができるかどうか。大事なことに気づくためには、何でも徹底的にやり続けるしかない。徹底してやり続けているから、小さな変化に目がとまる。中途半端にやっても、小さな変化には気づけない。」(97頁)

幸せもチャンスも探すものではなく、気づくものです。

いつも批判的な目で物事を見るくせがついていると、だんだん目の前にある幸せやチャンスに気づけなくなってしまいます。

何を幸せと捉え、何をチャンスと考えるかは、すべてその人の解釈次第です。

同じ場所で同じ物に触れていても、ある人は幸せと感じ、またある人は不幸と感じます。

このことに人生の早い段階で気がつくと、幸福度が格段に上がります。

労働時間88 控除された乗継ぎが遅れた2分間分の賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、控除された乗継ぎが遅れた2分間分の賃金に関する裁判例を見ていきましょう。

西日本旅客鉄道事件(岡山地裁令和4年4月19日・労判ジャーナル129号52頁)

【事案の概要】

Xは、旅客鉄道事業等を営むY社との間で雇用契約を締結した運転士であるところ、電車入区作業(回送列車をa電車区に移動させて留置する作業)を行う際、乗継ぎのために待機すべきホームの番線を間違えたために、指定された時刻より2分遅れて乗継ぎ作業を開始し、1分遅れて入区作業を開始・完了した。Y社は、乗継ぎが遅れた2分間は勤務を欠いたものであるとして、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、当該2分間分のXの賃金を控除した(ただし、うち1分間分は後に返還された)。
本件は、Xが、Y社に対し、上記賃金控除は違法であり、不法行為にも該当すると主張して、雇用契約に基づく未払賃金56円及び不法行為に基づく慰謝料200万円と弁護士費用20万円の合計220万0056円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、56円+遅延損害金を支払え。

 Xのその余の請求を棄却する。

【判例のポイント】

1 賃金請求権の発生根拠は、労働者と使用者との間の合意(労働契約)に求められるところ、労働者が債務の本旨に従った労務の提供をしていない場合であっても、使用者が当該労務の受領を拒絶することなく、これを受領している場合には、使用者の指揮命令に服している時間として、賃金請求権が発生するものと解される(前記前提事実のとおり、Xは、午前7時09分から午前7時11分までの間、全く労務を提供しなかったものではなく、本件は、労務の提供が履行不能となった事案ではない。)。
したがって、Y社が、午前7時09分から午前7時11分までの間の原告の労務を受領したといえるか否かについて検討する。

2 本件につき検討すると、午前7時09分から午前7時11分までの間のXの労務について、Y社による明示の受領拒絶はなされておらず、実際に労務が行われたこと自体に争いはない。
Xは、午前6時48分までに乗務点呼を終えた後、勘違いにより2番線ではなく5番線で待機し、午前7時08分頃、自身が乗り継ぎをするはずの回送列車が2番線に向かっているのを見て当直係長に電話をかけたところ、ホームを間違えていたことに気付いたため、直ちに2番線の〔5〕地点に向かい、午前7時11分に乗継ぎ作業を開始したものである。
そうすると、午前7時09分から午前7時11分の間にXが提供した労務内容は、自身の待機場所の誤りの有無を確認し、その誤りに気付いて、小カード所定の正しい待機場所へ向かい、小カードで指示されていた乗継ぎ作業を開始したものであって、直ちに小カード所定の業務内容に修正すべく行動したものであり、遅滞は生じつつも被告が指定した小カード所定の業務の実現に向けて行われた労務であって、Y社にとっても有益性を有するものといえる。
Y社において、Xのこのような労務の受領を予め拒絶して、急きょ他の乗務員等に午前7時09分以降の小カード所定の作業を行わせ、あるいは同作業の実施を取りやめるなどする意思があったものとは解し難く、小カードにより時刻を指定して業務を指示したことをもって、これに反する上記労務の受領を予め黙示に拒絶していたなどと認めることはできない。
Xは、午前6時33分に出勤点呼を受け、午前6時48分に乗務点呼を受けてから、ホームに出場し、自身の待機場所の誤りを修正して指定された正しい待機場所に向かい、入区作業を行うという小カード所定の業務の遂行に向けた一連の労務を行っている間、Y社の指揮命令に服していたものといえ、Y社において、このような労務のうち一部を切り取って、当該部分の労務を受領していないなどということはできない。
したがって、Y社は、午前7時09分から午前7時11分までの間のXの労務を受領したものと認められ、Y社の上記主張は採用できない

2分間の賃金56円の請求が認められました。

本訴訟対応に要する費用を考えると、費用対効果では到底説明がつきませんね。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。
   

本の紹介1366 弁護士の仕事術・論理術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

今から17年前の本ですが、再度、読み返してみました。

弁護士になる前に読んだ本ですが、今になって、当時、線を引っ張っている箇所を読むととても懐かしいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

①政治家、芸能人、有名人との交際を自慢する。一緒に撮った写真を飾る
②業界団体などのやたら肩書きの多い名刺を配る
③金ピカの時計をしている。ブランド品のオンパレードのような服装
④社長室に剥製、高級酒、ゴルフコンペのトロフィーを飾る
⑤受付に美人ばかりそろえ、自慢する
⑥中年すぎても真っ赤なスポーツカーに乗っている
⑦夢とビジョンを語るが、話に具体性がない
こういう人はしばしば劣等感が強く、自己顕示欲が強烈である。自信がないから装飾物で飾り立てるのだ。」(205頁)

このようなタイプの人は、お話をしていてすぐにわかります。

皮肉なことに、自分を大きく見せようとすればするほど、その人の小ささが露呈してしまうのです。

聞き手は「へー、すごいですねー」と驚いたふりをしてくれますが、実のところ、「またはじまったよ」と思っているにすぎません(笑)

本当に力がある人は、決して威張らないですし、自らの力を誇示しません。

労働災害113 派遣労働者の労災と国から派遣先会社への求償(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、派遣労働者の労災と国から派遣先会社への求償に関する裁判例を見ていきましょう。

丸八ガラス店(求償金請求)事件(福岡高裁令和3年10月29日・労判1274号70頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の工場で就労していた派遣労働者Aがガラス研磨機に手を巻き込まれて負傷した事故に関し、Aに対して労働者災害補償保険法に基づく保険給付を行った国が、本件事故はY社が本件機械について事故の危険を防止するため必要な措置を講ずべき義務を怠ったことによる第三者行為災害であり、国は労災保険法12条の4第1項に基づき労災保険給付額の限度でAがY社に対して有していた損害賠償請求権を取得したと主張して、Y社に対し、Aに対する労災保険給付額のうち703万1967円の求償+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、国の請求を棄却した。国は、これを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件事故は、Aが開口部の内側まで左手をガラスの表面に添わせたままでいた結果発生したものとしか考えられないが、コンベアに載せたガラスは手を添えていないくても落下することはなく、そのことはA自身もそれまで3日間作業をした中で十分理解していたはずであるから、上記のような態様は、当時のAの習熟度や作業状況を考慮しても、想定することが困難なものといわざるを得ない
したがって、本件機械の構造、本件工場における作業環境、Aが担当していた作業内容に加え、本件事故当時のAの習熟度や作業状況を考慮しても、本件機械の開口部が「労働者に危険を及ぼすおそれのある部分」に当たり、Y社において、その危険を防止するために、開口部手前に覆いを付けるなどの措置を講じる必要があったとは認められない。

2 国は、当審において、Y社の注意義務違反の内容として、原審から主張している安衛法20条1号及び安衛規則101条1項違反に加え、安全衛生推進者等を選任する義務(安衛法12条の2及び安衛規則12条の3)、安全衛生教育を実施する義務(安衛法12条の2,同法10条1項2号、同法59条1項)、労働者が安全に作業しているが注意を払う義務をいずれも懈怠していたとの主張を追加したが、これらの主張を原審においてすることは容易であったというべきであり、また、安全衛生教育や労働者の作業に注意を払う義務の内容の特定及びその履行の有無に関する主張立証は、未だ尽くされたとはいえず、これらにつき審理を尽くすには、当審において更なる審理期間を要することとなる。
したがって、国が当審において追加した上記各注意義務違反に係る主張は、重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法であり、これにより訴訟の完結を遅延させることとなると認められるから、民訴法157条1項に基づき、これを却下するのが相当である。

第三者行為災害に該当する場合、本件同様の請求がなされることがありますので、注意が必要です。

本件事案では、派遣先会社の注意義務違反が否定されたため、国の請求が棄却されています。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。

本の紹介1365 20代のうちに会っておくべき35人のひと#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

今から7年前に紹介した本ですが、再度、読み返してみました。

最初が肝心、ということがよくわかる本です。

可塑性があるうちに適切なメンターに出会えるかどうかが決定的に重要なポイントになります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたの目の前に現れた人は、あなたの心の状態が招待した人だ。」(74頁)

引き寄せの法則からすれば自明です。

チャンスには「チャンスです」とは書かれていません。

チャンスと思えるかどうか、ただそれだけの話。

掴むも逃すも自分次第。

「幸運に恵まれない」のではないのです。

「幸運」だと気づけないだけの話。

同一労働同一賃金24 無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?について見ていきましょう。

ハマキョウレックス(無期契約社員)事件(大阪高裁令和3年7月9日・労判1274号82頁)

【事案の概要】

本件は、労契法18条1項に基づき有期労働契約から期間の定めのない労働契約に転換したXらが、転換後の労働条件について、雇用当初から無期労働契約を締結している労働者(以下「正社員」という。)に適用される就業規則(以下「正社員就業規則」という。)によるべきであると主張して、Y社に対し、正社員就業規則に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権として、無期労働契約に転換した後の平成30年10月分の賃金について正社員との賃金差額(X1につき9万1012円、X2につき9万3532円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審裁判所は、Xらの請求をいずれも棄却したため、Xらがこれを全部不服として控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 労契法18条を新設した労働契約法の一部を改正する法律案が審議された第180回国会における衆議院厚生労働委員会において、厚生労働大臣政務官が、契約期間の無期化に伴って労働者の職務や職責が増すように変更されることが当然の流れとして考えられるが、当事者間あるいは労使で十分な話し合いが行われて、新たな職務や職責に応じた労働条件を定めることが望ましく、「別段の定め」という条文も、こうした趣旨に沿った規定であると考えられるとの答弁をしていること、労契法の改正内容の周知を図ることを目的として発出された「労働契約法の施行について」において、「別段の定め」とは、「労働協約、就業規則及び個々の労働契約(無期労働契約への転換に当たり従前の有期労働契約から労働条件を変更することについての有期労働契約者と使用者との間の個別の合意)をいうものであること」と説明されていることが認められる。
そして、これらを踏まえると、労契法18条1項後段の「別段の定め」とは、労使交渉や個別の契約を通じて現実に合意された労働条件を指すものと解するのが相当であり、無期転換後の労働条件について労使間の合意が調わなかった場合において、直ちに裁判所が補充的意思解釈を行うことで労働条件に関する合意内容を擬制すべきものではなく、Xらが主張するような同一価値労働同一賃金の原則によって労働条件の合意を擬制することが制度上要求されていると解することはできないというべきである。
このことからしても、本件において、Xらが主張する職務評価による職務の価値が同一であれば同一又は同等の待遇とすべき原則(同一価値労働同一賃金の原則)が、平成30年10月1日のXらの無期転換の時点において公の秩序として確立しているとまでは認めるのは困難である。また、Xらと正社員であるBとの職務評価や待遇等と比較しても、無期転換後のXらの労働条件と正社員のそれとの相違が、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じて許容できないほどに均衡が保たれていないとも認め難い。
したがって、この点に関するXらの主張は採用できない。

労契法18条1項後段の「別段の定め」の解釈は基本的な内容ですので、しっかりと押さえておきましょう。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

本の紹介1364 限りある時間の使い方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

原書のタイトルは「FOUR THOUSAND WEEKS  Time management for Mortals」です。

限られた時間をどう使うかということにフォーカスした名著です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕たちはいつも、人生の冷酷な現実に向き合うのを避けて、気晴らしを求めたり、日々の忙しさに没頭したりしている。後戻りできない決断をするのが怖くて、自分ではなく世間に決めてもらおうとする。『そろそろ結婚すべきだ』とか『嫌な仕事でも続けるべきだ』とみんなが言うから、まあ仕方ないさと受け入れている。でもそれは、ただの責任回避だ。何かを捨てて何かを選ぶという現実が重すぎて、選択肢がないふりをしているだけだ。」(77頁)

「何かを捨てて何かを選ぶという現実が重すぎて、選択肢がないふりをしているだけだ。」

みなさんは、いかがですか?

人生は決断の連続です。

また、日々の決断の集積によって、今、そして、これからの自分の人生が形成されていきます。

人生を変えたければ、日々の決断、日々の習慣を変えるほかありません。

住む場所を変えてみる。

起きる時間を変えてみる。

付き合う人を変えてみる。

休日の過ごし方を変えてみる。

ただ、多くの場合、長続きしません。

人生(=習慣)を変えるのは簡単ではないのです。

あきらめるかやり続けるかは、自分次第。

労働者性49 大学非常勤講師の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、大学非常勤講師の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

国立大学法人東京芸術大学事件(東京地裁令和4年3月26日・労判ジャーナル128号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が設置するa大学において非常勤講師を務めていたXが、Y社との間で締結していた期間を1年間とする有期の労働契約を被告が令和2年4月1日以降更新しなかったことにつき、労契法19条により従前と同一の労働条件で労働契約が更新されたとみなされる旨を主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記の更新拒否後の令和2年4月から約定の支払日である毎月20日限り月額4万7600円の賃金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、Xに対し、Y大学における講義の実施という業務の性質上当然に確定されることになる授業日程及び場所、講義内容の大綱を指示する以外に本件契約に係る委嘱業務の遂行に関し特段の指揮命令を行っていたとはいい難く、むしろ、本件各講義(Xが担当する授業)の具体的な授業内容等の策定はXの合理的な裁量に委ねられており、Xに対する時間的・場所的な拘束の程度もY大学の他の専任講師等に比べ相当に緩やかなものであったといえる。
また、Xは、本件各講義の担当教官の一人ではあったものの、主たる業務は自身が担当する本件各講義の授業の実施にあり、業務時間も週4時間に限定され、委嘱料も時間給として設定されていたことに鑑みれば、本件各講義において予定されていた授業への出席以外の業務をY社がXに指示することはもとより予定されていなかったものと解されるから、Xが、芸術の知識及び技能の教育研究というY大学の本来的な業務ないし事業の遂行に不可欠な労働力として組織上組み込まれていたとは解し難く、Xが本件契約を根拠として上記の業務以外の業務の遂行を被告から強制されることも想定されていなかったといえる。
加えて、Xに対する委嘱料の支払とXの実際の労務提供の時間や態様等との間には特段の牽連性は見出し難く、そうすると、Xに対して支給された委嘱料も、Xが提供した労務一般に対する償金というよりも、本件各講義に係る授業等の実施という個別・特定の事務の遂行に対する対価としての性質を帯びるものと解するのが相当である。
以上によれば、Xが本件契約に基づきY社の指揮監督の下で労務を提供していたとまでは認め難いといわざるを得ないから、本件契約に関し、Xが労契法2条1項所定の「労働者」に該当するとは認められず、本件契約は労契法19条が適用される労働契約には該当しないものというべきである。

指揮命令下に置かれていたとは評価できないとの理由から労働者性が否定されています。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。