解雇380 従業員が退職の意思表示をしていないにもかかわらず、会社が退職扱いにした事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、従業員が退職の意思表示をしていないにもかかわらず、会社が退職扱いにした事案を見ていきましょう。

PASS-I-ONE事件(東京地裁令和4年4月22日・労判ジャーナル128号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXが、Y社に対し、XはY社に対して退職の意思表示をしていないにもかかわらず、Y社はXが退職したものとしてXの労務の提供を拒絶していると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

地位確認請求認容

【判例のポイント】

1 XとY社代表者との間で令和3年2月21日に大声による口論が発生し、Xは翌日以降会社に出勤していないが、同日にY社に対して退職の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠はない

2 Xは、令和3年2月21日、Y社代表者から、「明日から来なくてよい」、「クビだ」と言われた旨を陳述及び供述するところ、当該陳述及び供述については、①同日、XがY社代表者に対して1か月分の給与の支払を求め、その後、両者の間で大声による口論が発生したこと、②同日の勤務終了後、XがY社の店舗に置いていた私物の全部又は大部分を持ち帰ったこと、③その後、Y社がXに対して本件解雇予告通知書を送付したこと、④更にその後、Y社代理人弁護士がXに対して解雇は正当である旨を記載した通知書を送付したことと整合し、信用することができるから、Xは、同日、Y社代表者から前記の発言をされ、同月22日以降の労務の提供を拒絶されたというべきところ、XがY社に対して退職の意思表示をしたと認めることはできず、ほかに本件労働契約の終了原因の主張はないから、Xは、同日以降Y社の責めに帰すべき事由により就労不能となったと認めるのが相当であり、Y社は、Xに対し、民法536条2項により令和3年2月22日以降の賃金支払義務を負担する。

これはよくあるケースですが、感情的になって上記のような発言をしないことが肝要です。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。