不当労働行為299 会社による退職勧奨の態様は極めて問題であるにもかかわらず不当労働行為にあたらないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、会社による退職勧奨の態様は極めて問題であるにもかかわらず不当労働行為にあたらないとされた事案を見ていきましょう。

テイケイ事件(東京都労委令和4年6月21日・労判1275号139頁)

【事案の概要】

本件は、会社による①退職勧奨、②団交拒否、③組合非難・抗議の文書送付が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

①:不当労働行為にあたらない。

②:不当労働行為にあたる。

③:不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社が令和元年5月9日、組合員Cに対して退職勧奨を行った事実が認められ、退職勧奨の態様は、極めて問題であるといわざるを得ないが、かかる退職勧奨は、同人が組合員であることを理由として行われたものであるとまでは認められないことから、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらず、また、組合の運営に対する支配介入にも当たらない

2 Y社は、7名の組合員の自宅へ、郵送または持参投函により合計22通の文書を送付しているところ、いずれの文書にも、「お前らの出る幕は無い!」等の組合の組織、運営事項を嫌悪、誹謗中傷するものと認められる記載、「このゴミ野郎!」等の組合員個人を誹謗中傷するものと認められる記載、「プレカリに非難される謂れは何一つ無い!組合に利用されているのだ!」等の組合員に対して組合からの脱退を強く促すものと認められる記載、組合員個人に対する民事・刑事を問わず法的措置を講ずる旨の記載、組合員個人宅を訪問することを示唆する記載が認められる
また、住所を公開していない組合員の自宅に文書を郵送、持参投函する行為は、組合員をして組合活動を継続することへの極度の不安を抱かせるものであり、かかる文書の送付行為は、「組合事務所宛ての送付文書に比して、より一層組合員の間に精神的動揺を引き起こし、組合の組織や運営に影響を及ぼす危険があるものと認められ、いずれも支配介入に当たる。

上記命令のポイント2が不当労働行為にあたるのは明らかですが、ポイント1は、組合員であるが故の不利益取扱いと認定されなかったため、不当労働行為性が否定されました。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。