賃金271 残業代等未払いにおける元代表取締役の任務懈怠の有無等(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、残業代等未払いにおける元代表取締役の任務懈怠の有無等に関する裁判例を見ていきましょう。

そらふね元代表取締役事件(名古屋高裁金沢支部令和5年2月22日・労判1294号39頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、勤務先会社の代表取締役であったYの任務懈怠により勤務先会社から残業代の支払を受けられなかったと主張して、Yに対し、会社法429条1項に基づき、平成30年8月分、同年10月分及び同年12月分から令和2年2月分までの残業代元金相当額203万2365円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

原審は、Yの任務懈怠は認められるが、残業代が未払である理由は本件会社の事業継続が困難な状況となったことが原因であり、任務懈怠との因果関係がないとしてXの請求を棄却したことから、Xがこれを不服として控訴した。

なお、Xは、原審において、Yの勤務先会社の代表清算人としての任務懈怠に基づく上記同額の請求を追加したが、時機に後れた攻撃防御方法として却下された。

【裁判所の判断】

YはXに対し、221万6082円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xが超過勤務をしたことによる残業代は月々発生する者であるから、Xが残業代の支払を受けられなかったことによる損害も月々発生するものである。そして、本件会社において、さほど多額とはいえないXの各月の残業代を支払うことすらできなかった経営状態であったことを認めるに足りる証拠はないことからすれば、Yの任務懈怠とXの損害との因果関係があると認められる。
そもそも、Yが残業代を支払わなかったのは、Xを管理監督者として扱っていたことによるものであって、経営状態を理由とするものではないことからも、上記の結論が裏付けられるというべきである。

代表者個人に対する任務懈怠に基づく損害賠償請求という構成で未払残業代相当額の請求をしています。

法人に対する請求・回収が困難な場合に採られる手法です。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。