不当労働行為313 住宅手当支給区分の変更が不当労働行為にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、住宅手当支給区分の変更が不当労働行為にあたるかが争われた事案について見ていきましょう。

ENEOS(旧エクソンモービル・住宅手当変更)事件(中労委令和4年6月1日・労判1295号103頁)

【事案の概要】

本件は、配偶者死亡による「既婚者」から「単身独立生計者」への住宅手当支給区分の変更が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 会社には、支給区分上の「扶養家族を有する者」について適用する特例措置を定めた運用ルールが存在する。運用ルールとは、独身の非管理職従業員で扶養者を有する者について、その被扶養者が就職などの理由により扶養から外れた場合、当該従業員が元被扶養者と同居する場合に限って、「単身独立生計者」ではなく「扶養家族を有しない既婚者」扱いとする、というものである。
運用ルールは、Xのような、「扶養家族を有しない者」に該当していた者が配偶者を亡くして、元被扶養者と同居しているケースを想定したものではなかった。しかし会社は、Xに配慮し、運用ルールの趣旨に鑑み、Xのケースにもこれを適用してよいと判断し、「元被扶養者と同居して生計を共にする」という要件で、「既婚者」から「単身独立生計者」に変更をしないで「既婚者」の区分のまま住宅手当の支給を認めることとした(運用ルールの取扱い)。
このような運用ルールの取扱いは、運用ルールの趣旨を従業員に有利となるように更に推し進めるものであり、合理的なものといえる。
運用ルールの取扱いを多くの従業員に統一的に適用する以上、会社が「生計を共にする」という要件を、住民票により判定できる「世帯」を基準として判断することは社会通念に合致しており、会社の上記判断は不合理なものとはいえない。

特にXに対して不利益を当たる意図・目的が客観的に認められないことから、不当労働行為該当性が否定されています。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。