労働時間101 過半数代表者の選出に違法があるとして、変形労働時間制・36協定が無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、過半数代表者の選出に違法があるとして、変形労働時間制・36協定が無効とされた事案を見ていきましょう。

未払割増賃金等支払請求事件(釧路地裁帯広支部令和5年6月2日・労判ジャーナル140号32頁)

【事案の概要】

本件は、社会保険労務士であるBと雇用契約を締結して就労していたAが、Bに対し、①労働契約に基づき、平成31年4月から退職した令和3年4月までの時間外割増賃金等の支払、②不法行為に基づき、有効な労働基準法36条に基づく協定を欠き時間外労働を命ずる適法な権限がないのに、労働基準法32条及び同法36条に違反してBがAに対し違法な残業命令を繰り返して勤務をさせてきたことに対する慰謝料150万円等の支払、③労働契約に基づくBの私生活時間配慮・職場環境調整義務違反による慰謝料の支払、④時間外割増賃金に係る付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 過半数代表者の選出手続は、法に規定する協定等をするものを選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法によらなければならない(労働基準法施行規則6条の2第1項第2号)ところ、Bの事業所においては、平成16年に1年単位の変形労働時間制を採用した際に、従業員の間で従業員代表としてCを選出する話し合いが持たれた後は、従業員間で話し合いがされないままCが従業員代表としてBとの間で1年単位の変形労働時間制についての協定を締結しており、これによれば、前記の協定に先立って、選出目的を明らかにした投票、挙手等の方法によるCを従業員代表とする民主的な手続は行われていないのであるから、前記各協定届には、労働基準法施行規則6条の2第1項所定の手続によって選出された者ではない者が、Bの労働者の過半数代表者として署名押印しているといわざるを得ないから、Bにおける1年単位の変形労働時間制は無効である。

2 確かに、36協定が無効となれば、使用者は労働者に対して時間外労働を命ずる労働契約上の根拠を欠くことになることから、時間外労働を命ずる業務命令権の行使は違法となるというべきであるが、BにおけるA以外のいずれの労働者もCについて労働者代表としての適格性を否定する者はおらず、仮に従業員代表を選出する手続が行われていれば、Cが従業員代表に選出されていた可能性が高いこと、Aも36協定がCによって締結されていることをBの事業所における勤務開始後数年以内に認識しながら、これに対して異議を述べることをしていなかったこと、法定外労働に対しては、時間外割増賃金の支払が命じられることになることに照らせば、36協定が無効と判断されたとしても、その違法性は、慰謝料を命ずべき違法性があるとは認められない

変形労働時間制の無効例が後を絶ちません。

「例外規定の厳格解釈」がここでも影響しています。

労使協定締結時の過半数代表者の選出方法には気を付けましょう。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。