競業避止義務33 在職中の競業行為等が自由競争の範囲を逸脱し違法とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、在職中の競業行為等が自由競争の範囲を逸脱し違法とされた事案を見ていきましょう。

Z社事件(名古屋地裁令和5年9月28日・労経速2535号13頁)

【事案の概要】

本件は、X社が、X社の幹部従業員であったYが在職中にZ社を設立し、平成31年2月1日には主要な取引先3社をしてX社との契約関係を終了させると同時に部下従業員とともに一斉にX社に退職願を提出した上で、Z社で競業行為に及んだことは労働契約上の債務不履行(誠実義務違反)又は不法行為に該当すると主張して、Yに対しては債務不履行又は不法行為に基づき、Z社に対しては会社法350条に基づき、それぞれ、損害賠償として、当該取引先3社との取引から得られたはずの逸失利益等の損害の一部である9億円+遅延損害金の支払を求める事案である。

本事件は、令和3年1月14日に、Yの上記行為がX社の禁止する競業行為に該当するとして不法行為の成立を認めた中間判決が出されており、本判決では、かかる中間判決を受け、具体的な損害の有無及び損害額が争点となった。

【裁判所の判断】

Yらは、Xに対し、各自8178万6120円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 提携先3社との取引に係る逸失利益のうち、自衛隊をエンドユーザーとするものについては、X社が平成31年度(令和元年)に得られたであろう利益の限度で本件行為との間の相当因果関係を認めることができる。しかし、Yの退職後1年を超える令和2年度以降については、Yの不法行為がなくてもX社が提携先3社から取得した独占販売代理権を利用して利益を上げられた蓋然性が高いとは認められない
したがって、逸失利益の金額は、Z社が現に平成31(令和元)年度に自衛隊との間で契約を締結した取引金額を基礎に算定するのが相当である。算定の基礎となる契約金額は7億0857万1600円で、X社が経費の支出を相当程度免れていること、X社が提携先3社との間で合意していたコミッション料の割合を総合すると、本件行為と相当因果関係のある逸失利益は上記契約金額の約1割の7058万7160円である。
他方、民間企業をエンドユーザーとする取引は従前の取引の頻度に照らすと、本件行為から1年程度の期間のうちに新たな取引が行われていた蓋然性が高いとはいえないため、逸失利益の損害が生じたとは認められない

「在職中の」というミソです。

この種の事案では、裁判所は損害額の認定を非常に謙抑的に行います。

原告からしますとなかなか納得しにくい認定額かと思います。

競業避止義務の考え方については顧問弁護士に相談をし、現実的な対策を講じる必要があります。