管理監督者59 工場部門に置かれた業務部(製造部門)の責任者の管理監督者性が否定された事案(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、工場部門に置かれた業務部(製造部門)の責任者の管理監督者性が否定された事案を見ていきましょう。

三栄事件(大阪地裁令和5年3月27日・労判ジャーナル140号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員であるXが、Y社に対し、①雇用契約に基づき、平成30年9月21日から令和2年3月4日までの未払割増賃金合計745万4359円+遅延損害金、②労基法114条に基づき、付加金510万8321円+遅延損害金、③雇用契約に基づき、本件請求期間における未払の食事手当合計12万4950円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 Y社は、Xに対し、562万7090円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、付加金374万1093円+遅延損害金を支払え。
3 Y社は、Xに対し、13万0692円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xは、工場部門に置かれた業務部(製造部門)の練りの責任者であったことが認められ、Y社の役員を除けば、工場部門の長である工場長、業務部(製造部門)の長である総責任者に次ぐ地位にあったことが認められる。
しかしながら、他方、Y社の経営方針は幹部会議において決定されていたところ、幹部会議の出席者は、会長、社長、専務その他の役員のみであり、Xが出席したことは一度もなかったこと、Xは、労務管理や人事の権限を有していなかったことが認められ、これらのことからすると、XがY社の経営に参画していたとはいえず、Xが経営者と一体的な立場にあったとは認められない。
Y社は、Xが製造部門の中核かつ最も重い責任のある立場にあったと主張するが、そのことは、Y社が出荷する生コンの質の良し悪しを決定づけるという意味においてその立場が重視されていたというにすぎず、Xが経営者と一体的な立場にあったことを基礎づけるものとはいえない。
また、Xが他の従業員に対し業務上の指示を行い得る立場にあったことをもってXが経営者と一体的な立場にあったともいえない
   
2 Xが遅刻や欠勤をした場合でも賃金控除がされていなかったものの、Xの労働時間は、タイムカードによって管理されていたほか、Xは、就業時間中に被告営業所を中抜けして本件歯科医院に通院していたことが発覚してY社に始末書を提出していることが認められることからすると、Xが勤務時間に関する裁量を有していたとは認め難い。日曜日や大型連休に出勤を要することは直ちに勤務時間に関する裁量を有していたことに結びつくものではない。
   
3 Xの年収は、平成30年は729万円余り、平成31(令和元)年も679万円余りであったことが認められ、その金額自体はそれなりに高額であるといえるものの、かかる金額は、他の従業員と比較しても、時間外手当を含めれば、その年収が特に高額であったとは認められない。また、Xの平成24年4月分以降の給与の額は、X自身の同年1月分から同年3月分までの給与と比較しても、時間外手当を含めれば、その差は最大でも2万円程度にとどまり、遜色はないものと認められる上、平成30年1月から令和2年2月分までとの比較でも、基本給の増額分が2万0375円又は2万8486円が加算されるにすぎず、その差が大きいとまではいい難い。これらのことからすると、Xが管理監督者として相応の待遇を得ていたとまではいい難い。

4 以上によれば、Xは労基法41条2号にいう管理監督者には当たらないというべきである。

ご覧のとおり、管理監督者に該当する労働者はほぼ存在しませんのでご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。