賃金302 運賃着服等を理由とする退職手当不支給処分の適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れ様でした。

今日は、運賃着服等を理由とする退職手当不支給処分の適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

京都市(懲戒免職処分取消等請求)事件(最高裁令和7年4月17日・ジュリ1613号4頁)

【事案の概要】

本件は、Y市が経営する自動車運送事業のバスの運転手として勤務していたXが、運賃の着服等を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、Y市公営企業管理者交通局長から、Y市交通局職員退職手当支給規程8条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部を支給しないこととするを受けたため、Y市を相手に、上記各処分の取消しを求める事案である。

原審は、上記事実関係等の下において、本件懲戒免職処分は適法であるとしてその取消請求を棄却すべきものとした上で、本件全部支給制限処分の取消請求を認容した。

【裁判所の判断】

原判決中Y市敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき、Xの控訴を棄却する。

【判例のポイント】

1 本件規定は、懲戒免職処分を受けた退職者の一般の退職手当等について、退職手当支給制限処分をするか否か、これをするとした場合にどの程度支給しないこととするかの判断を管理者の裁量に委ねているものと解され、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものというべきである(最高裁令和5年6月27日判決参照)。
本件着服行為は、公務の遂行中に職務上取り扱う公金を着服したというものであって、それ自体、重大な非違行為である。そして、バスの運転手は、乗客から直接運賃を受領し得る立場にある上、通常1人で乗務することから、その職務の性質上運賃の適正な取扱いが強く要請され、その観点から、Y市交通局職員服務規程において、勤務中の私金の所持が禁止されている(20条)。そうすると、本件着服行為は、Y市が経営する自動車運送事業の運営の適正を害するのみならず、同事業に対する信頼を大きく損なうものということができる。

2 また、本件喫煙類似行為についてみると、Xは、バスの運転手として乗務の際に、1週間に5回も電子たばこを使用したというのであるから、勤務の状況が良好でないことを示す事情として評価されてもやむを得ないものである。
そして、本件非違行為に至った経緯に特段酌むべき事情はなく、Xは、それらが発覚した後の上司との面談の際にも、当初は本件着服行為を否認しようとするなど、その態度が誠実なものであったということはできない。
これらの事情に照らせば、本件着服行為の被害金額が1000円でありその被害弁償が行われていることや、Xが約29年にわたり勤続し、その間、一般服務や公金等の取扱いを理由とする懲戒処分を受けたことがないこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る本件管理者の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。
以上によれば、本件全部支給制限処分が裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとした原審の判断には、退職手当支給制限処分に係る管理者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきである。

Xが公務員だから、でしょうか。

この事案でXは1211万4214円の退職手当等全額の支給がされなくなります。

バランスがとれているといえるでしょうかね。

一般企業で同種事案が発生した場合には異なる結論になるかと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。