おはようございます。 今週も1週間お疲れ様でした。
今日は、労働時間にかかる証拠保全の可否に関する裁判例を見ていきましょう。
坂井電機(証拠保全申立)事件(名古屋高裁令和7年2月13日・労判1345号12頁)
【事案の概要】
本件は、Xが、Y社に対して、Xの夫でありY社の従業員であった亡Aにつき、安全配慮義務違反を理由として、債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟等の提起を予定しているところ、亡Aの長時間労働の立証のために必要な資料である本件検証物について、Y社による改ざん、破棄又は隠匿のおそれがあるとして、証拠保全(検証及び提示命令)を申し立てた事案である。
原審は、Y社が本件検証物の改ざん等をする具体的おそれがあるといえず、緊急に証拠調べをする必要性はないとして本件申立てを却下したところ、Xが抗告をした。
Xは、(1)Y社が開示した出勤明細表の記載は30分刻みの不自然な内容であり、また、仮に出勤明細表の記載は亡Aが入力したものであるとのY社の説明のとおりだとすると、今後訴訟において信用性が争われると予想され、出勤明細表のみでは亡Aの実労働時間の証明は著しく困難である、(2)Y社が弁護士を代理人として選任し労働基準監督署への対応を依頼しているからといって具体的な改ざんのおそれが軽減されるとはいえない、(3)タイムカードによる記録や電子計算機の使用時間の記録による労働時間の記録の保存期間は3年であるから、現時点で緊急に証拠調べをする必要性があると主張する。
【裁判所の判断】
原決定を取り消す。
本件を津地方裁判所に差し戻す。
【判例のポイント】
1 Xが提起することを予定している訴訟においては、亡Aの実労働時間の把握が重要となると考えられるところ、Y社は、Xに亡Aの出勤明細表(7か月分)を開示したものの、その記載内容等に照らし、今後、入力された出退勤時刻の正確性等を巡って争われることが予想される。
また、本件検証物はいずれも実労働時間の把握のために必要な客観的資料であると認められるところ、一般的にみて、従業員の家族であるXに対し開示をすることに支障があるとは認められない。本件検証物のうち、さらに、タイムカードによる記録や電子計算機の使用時間の記録による労働時間の記録の保存期間は3年とされている(労働安全衛生規則52条の7の3)。
2 以上の事情に照らせば、Y社において、自らに不利な証拠を改ざん、破棄又は隠匿するおそれがあると認めるのが相当であり、現時点において証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認められる。
Y社が弁護士を代理人として選任していることや、労働基準監督署の調査に応じる姿勢を示していることは、上記の認定判断を左右するには足りない。
原告側としては、証拠保全を行う際に、どのような事情に重きをおいて主張する必要があるかを把握しておくことが肝要です。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。