継続雇用制度37 58歳で退職させたうえで7年間継続雇用する制度が適法とされ、当該継続雇用制度における待遇も「高年法の趣旨」に反しないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

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今日は、58歳で退職させたうえで7年間継続雇用する制度が適法とされ、当該継続雇用制度における待遇も「高年法の趣旨」に反しないとされた事案を見ていきましょう。

成田国際空港事件(東京地裁令和7年3月27日・労経速2594号36頁)

【事案の概要】

Y社は、定年を60歳とした上で高年法9条1項2号の継続雇用制度として65歳まで雇用する制度を定めているが、本件再雇用制度では、本件再雇用制度の利用を希望する労働者は定年前の58歳で退職することが必要であるとされており、本件再雇用制度を利用しないまま60歳に達した者は定年退職することとなる。
本件は、60歳でY社を定年退職とされたXが、本件再雇用制度が高年法又は労働契約法に反するなどと主張して、(1)主位的に、定年退職後に本件再雇用制度による労働契約が成立するとして、同労働契約に基づき、〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、〈2〉令和5年2月以降の各月支払分の賃金(本件再雇用制度により雇用継続がされた場合に得られるべき賃金20万7750円)+遅延損害金の支払、〈3〉令和5年2月以降の毎年6月及び12月支払分の賞与(本件再雇用制度により雇用継続がされた場合に得られるべき賞与17万6588円)+遅延損害金の支払を求め、(2)予備的に、高年法の規定又は趣旨に反する本件再雇用制度を定めたことが65歳まで賃金を得る権利又は65歳まで雇用を継続できるという法的保護に値する期待を侵害する不法行為に該当するとして、不法行為に基づき、損害賠償金1309万2405円(本件再雇用制度により雇用継続された場合に得られるべき賃金と賞与の合計額又は慰謝料)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 高年法における「定年」とは、労働者が所定の年齢に達したことを理由として自動的に又は解雇の意思表示によってその地位を失わせる制度であると解されるところ、Y社の従業員は本件再雇用制度を利用せずに60歳で定年退職することを選択することもできるから、本件再雇用制度を利用する場合に58歳で退職する必要があることをもって、Y社が定年を58歳と定めたとはいえない

2 高年法8条が、事業主が定年の定めをする場合には、当該定年は「60歳を下回ることができない。」として同条の予定する定年制の内容を一義的に規定しているのに対し、高年法9条1項2号の継続雇用制度については、条文の文言上、制度の内容を一義的に規定せず、多様な制度を含み得るものとなっている。また、高年法9条の改正の基礎となった労働政策審議会の建議においても、年金支給開始年齢までの雇用の確保を進める一方で、経済社会の構造変化等が進む中で厳しい状況が続く企業の経営環境等を考慮すれば65歳までの雇用確保の方法については個々の企業の実情に応じた対応が取れるようにするべきである旨が指摘されている。
これらのことからすれば、高年法9条1項は、同項2号の継続雇用制度の具体的な内容については、65歳までの安定した雇用の確保という同項の目的(同項柱書)に反しない限り、各事業主がその実情等に応じて定めるところに委ねる趣旨であると解される。そして、定年退職後に引き続いて雇用される制度としなければ65歳までの安定した雇用の確保という同項の目的に反するということはできない。
そうすると、同項2号の継続雇用制度が、現に定年まで雇用されている労働者が希望するときはその定年退職後に引き続き雇用される制度であることを要するということはできない
以上によれば、本件再雇用制度を利用する場合に58歳で退職する必要があることをもって、実質的に58歳を定年と定めたものとはいえず、高年法8条及び9条に反するということはできない。

3 この点につき、Xは、高年法9条1項2号が、継続雇用制度を「その定年後も引き続いて雇用する制度」としていることから、継続雇用制度は、定年で退職した労働者を引き続き雇用する制度であることを要する旨主張する。しかしながら、上記規定内容は、「定年と定められた年齢に達した後も引き続いて雇用する制度」と解することもできるのであり、既に説示した同項の趣旨からするとそのように解することが合理的である。

非常にユニークな制度設計ですが、上記判例のポイント1、2からしますと許容される制度であると考えられますね。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。