Author Archives: 栗田 勇

本の紹介62 コトラーのマーケティング思考法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は本の紹介です。
コトラーのマーケティング思考法
コトラーのマーケティング思考法

大好きなコトラーさんの本です。 非常にいい本です。

題名のとおり、マーケティングの思考方法について、説明してくれています。

僕みたいな素人が読んでも、わかりやすいです。 

以前、「コトラーのマーケティング・コンセプト」を紹介しました。

今回の本のキーワードは、「ラテラル・マーケティング」「ラテラル・シンキング」です。

ラテラルとは、「水平の」という意味です。 反対語が「バーティカル」(垂直の)ですね。

「ラテラル・マーケティング」は、「ブルー・オーシャン戦略」と同じようなものだと思います。

市場をひたすら垂直方向に細分化していくだけではなく、これまで存在しなかった新しいカテゴリーやマーケットを創出するということです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ラテラル・マーケティングの基本はギャップを生み出すことである。ギャップがなければ、ラテラル・マーケティングは不可能だ。水平移動を実施したにもかかわらずギャップが生じないとすれば、ラテラル・マーケティングではなくバーティカル・マーケティングを実践している可能性が高い。
ギャップとは、2つの要素間に飛躍があるときに生じるものである。したがって、ギャップを生み出す方法はただ1つ、一時的に論理的思考をやめることだ。
」(125頁)

・・・これらの技法を用いることで、意識的に論理的思考を排除することができる。
●代用する
●逆転する
●結合する
●強調する
●除去する
●並べ替える
」(125~126頁)

これは、ラテラル・マーケティングの思考法そのものです。

どんな本を読んでもそうですが、ここまでは、いいんです。

大切なのはここから。

いかに自分のこととして、具体的に考えることができるか、です。

実践できるのは、1%くらいの方だと思います。

弁護士業界で、ドラッカーさんやコトラーさんが言っていることを具体化すると、例えばこうなりますよ、という本を書いたら、売れるかな?

時間があれば、書いてみたいです。 今、やったら、自殺行為ですので、やめときます。

解雇65(ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン事件)

おはようございます。 

さて、今日は、業績悪化等を理由とする退職勧奨と解雇の相当性に関する裁判例を見てみましょう。

ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン事件(東京地裁平成23年9月21日・労判1038号39頁)

【事案の概要】

Y社は、アメリカ合衆国を本拠とし、世界的に広告事業を展開するJWTワールドワイドの日本法人である。

Xの職務内容は、広告表現の企画と制作を担当するクリエイティブ部門において、クリエイターを統括するチームリーダーであった。

Y社は、平成18年3月、Xに対し、Y社の業績悪化およびXの勤務成績不良を理由として退職勧奨をし、同年7月頃からXを仕事から外した。

Xは、東京地裁に対し、Y社を相手方として、労働審判、仮処分、本案訴訟を申し立て、Xの請求を全て認める旨の判決を得た。

Y社は、その後も、Xに対し退職勧奨を行ったが、Xは、退職勧奨には応じられない旨を回答した。

Y社は、平成21年10月、Xに対し、解雇する旨の通知をした。

【裁判所の判断】

解雇は無効

慰謝料として30万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 被告は、あくまで、人的理由と経済的理由が競合した普通解雇であり、仮に、本件が整理解雇と呼ばれる類型に該当する事案であるとしても、いわゆる「整理解雇の4要件(要素)」を本件に適用するのは相当でないと主張している。
当裁判所としては、整理解雇とその他の普通解雇とでは、相当程度性質が異なり、その判断要素ないし判断基準も異なる以上、基本的には本件解雇の有効性を立証すべき責任を有する被告の主張の力点の置き方を尊重することとし、まずは一般的な普通解雇の成否を検討することとし、整理解雇については予備的な主張と位置づけるのが適切であると思料する。なお、整理解雇の判断に及んだ場合の判断枠組みとしては、いわゆる要素説の観点から検討するのが相当であり、被告が指摘する事案の特殊性については、この判断枠組み自体を否定するほどの事情とはなりえず、あくまで諸要素の検討において考慮する余地があるにとどまるというべきである

2 Y社は、X側に対し、Y社の経営状況や本件退職勧奨の理由につき、一応の説明をしていることが認められるが、このうち、経営状況の説明については、本件訴訟において書証として提出された以上の説明はしていないものと推認される。また、Y社は、前件訴訟により、Xに関する雇用契約上の地位確認等につきほぼ全部敗訴の判決が確定したにもかかわらず、その後も約2年間にわたってXの出勤を許さず、したがって何ら成果を挙げる機会も与えられないまま、再び退職勧奨をするに至ったことが認められるのであり、これは、解雇の相当性に大きな疑問を生ぜしめる事情というべきである。

3 一方、整理解雇についてみると、・・・人員削減の必要性については、・・・こうした事情からは、本件解雇が、企業の収益性を回復すべく、組織再編等に伴う企業の合理的運営上の必要性から実施された人員削減策であるということはできるが、それを超えて、Y社の経営状況が客観的に高度の経営危機下にあることや、さらにY社が倒産の危機に瀕していることを認めるには足りない
また、解雇回避措置の相当性については、人員削減の必要性につき、企業の合理的運営上の必要性という程度にとどまるものと認定せざるを得ない以上、相当高度な解雇回避措置が実施されていなければならないと言うべきところ、本件で実施されたと評価できる解雇回避措置は、希望退職者を募集したことに加えて、せいぜい不利益緩和措置としての退職条件の提示を行ったという程度であって、甚だ不十分といわざるを得ない。
さらに、手続的相当性についても、必ずしも十分ではなく、また、本件解雇に至るまでの紛争の経緯については、本来、前件判決後にXを実際にY社で勤務させるなどして、X・Y社間の関係を一旦は原状に戻すという手続を踏むことが求められていたというべきであり、広い意味においては、これも本件解雇に至る手続的相当性を揺るがす大きな事情と評価するのが相当である。
結局、以上の要素を総合考慮すると、本件解雇は、整理解雇としても有効であるとは認められない。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介61 「応援したくなる企業」の時代(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
「応援したくなる企業」の時代 マーケティングが通じなくなった生活者とどうつき合うか (アスキー新書)
「応援したくなる企業」の時代 マーケティングが通じなくなった生活者とどうつき合うか (アスキー新書)

半年程前に出版された本です。

この本のおもしろいところは、各章のテーマがすべて「常識」の裏を行くところです。

例えば、

第1章 「ターゲットにモノを売る」というまちがい

第7章 「仕事にプライベートを持ち込むな」という非常識

など。

つかみはOKですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・いままで当たり前と思っていた事柄でも、あらためて本当に当たり前なのかと問いなおしてみるとかならずしもそうとはいえないことがわかる。そんなものがビジネスの世界にはいたるところに存在しているのだ。・・・従来の延長線上を探るだけでは、企業が立ち行かなくなる時代に突入している。そこで新しい道を見つけるには、こうした前提を疑うことこそが第一歩となるのだ。」(226頁)

「そもそもどうして?」という疑問を持つことから、今日では合理性を失っている前提を見つけることができるのだといいます。

これも言うのは簡単だけど実際に実践するのは結構難しいですね。

「そもそも」という点は、無意識の大前提となっていることが多く、気づくことこそが大変なのです。

この発想は、単に、既存のサービスを組み合わせるというものとは異なり、前提を覆すものです。

一種の破壊的イノベーションです。 業界の常識ががらりと変わってしまう可能性があります。

日々のちょっとした疑問をメモしておき、ふとした瞬間にひらめきにつなげることをやっていくしかないと思います。

解雇64(みくに工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

みくに工業事件(長野地裁諏訪支部平成23年9月29日・労判1038号5頁)

【事案の概要】

Y社は、工作機械類の製造および販売等を目的とする会社である(従業員数211名)。

Xは、平成10年2月、Y社のパート社員として雇用され、12年6月、準社員となった。

Y社における準社員とは、Xのこのようにパート社員から昇格するものであった。

Y社は、平成21年3月頃、希望退職者を募集し、同年8月、30名の希望退職者が確保された。

Xはこの希望退職者募集の対象に含まれていなかったが、Y社はXを退職勧告の対象とし、4回の面接が行われたが、Xは、雇用の継続を希望した。

そこで、Y社は、Xの配転について検討し、Xに配転先の候補を伝えたが、Xは納得できないと回答した。

その後、Y社は、Xを解雇する旨の意思表示をした。

Xは、本件解雇が整理解雇の要件を満たしておらず無効であると主張した。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、いわゆる整理解雇に該当するところ、整理解雇は、労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、使用者の経営上の理由による解雇であって、その有。効性については、厳格に判断するのが相当である。そして、整理解雇の有効性の判断に当たっては、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性及び手続の相当性という4要素を考慮するのが相当であり、以下のような観点から本件解雇の有効性について検討する。

2 正規社員や準社員から派遣社員等への従業員の入替えについては、会社として長期的にかかる構造転換の方針をとることそのものは、経営合理化の観点からみて理解できないではないが、本件解雇を有効たらしめるための要素としての人員削減の必要性の有無という観点からみた場合、かかる実態を安易に容認することはできない。

3 Y社が、Y社においては客観的にXの受入れが可能であり、かつ、Xにおいても受諾する可能性があるIK製造部におけるA勤務のみの条件提示を、これが可能であるにもかかわらずしていないことは、提示すればXの解雇を回避することができる可能性がある提案の不行使に当たるものと評価せざるを得ず、これによれば、Y社による本件解雇を回避するための努力の履行が十分でなかったものと認めるのが相当である。

4 Y社における準社員という地位は、パートタイマー、アルバイト、臨時工、期間工、請負社員、派遣社員、嘱託社員など終身雇用の保証がなく、仕事量の多寡に応じて雇用され、雇用調整が容易な労働者とは、正規社員と同じ終身雇用制の下で雇用されているという点で本質的に異なり、会社との結び付きの面でも、正規社員と全く同一ではないもののこれに準じた密接な関係にあるものと解され、解雇の相当性判断に際しては、正規社員と同様に判断するのが相当である。したがって、Xが準社員であったことを、Xを解雇の対象者として選定した事情として合理的なものと認めることはできない

5 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職について利益(中間利益)を得たときは、使用者は、当該労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが、上記賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である。したがって、使用者が労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払債務の額のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきである(最高裁昭和37年7月20日判決)。

この裁判例も4要素で判断しています。 最近、4要件で判断している裁判例がとても少ないですね。

もともと解雇権濫用法理は総合判断ですから、整理解雇だけ要件と考える理由はないので、それはそれでいいと思いますが。

さて、今回のケースでも、整理解雇は無効と判断されています。

判決の理由を読むと、会社側は、それなりの解雇回避措置を講じていますが、やはり有効とはなりませんでした。

会社側からすると、本当に整理解雇を適切に行うのは難しいと思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介60 結果を出せるリーダーのイノベーション思考法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
ポール・スローンの結果を出せるリーダーのイノベーション思考法
ポール・スローンの結果を出せるリーダーのイノベーション思考法

この本は、題名通り、イノベーションをする場合、どのような点に着目したらよいのか、考え方のヒントが書かれています。

既存のサービスに手を加える場合、どのような点に着目したらよいかが書かれています。
さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

イノベーションは、子どもの戦争ごっこに似ている。当たりをつけて弾を撃ち込み、当たっていたかなと見に行く。失敗していれば、また別のところへ撃ってみる。何発か撃つうちに一発が命中し、何をしとめたのかと見に行ってみると、思いのほか大きな獲物だったことがわかる。
イノベーションを実現できるかどうかは、失敗をどう受けとめるかで決まる。失敗を恐れていれば、イノベーションの実現もままならない。リスクや失敗をマネジメントすることにある種の楽しみを見出せれば、新しいものを市場に出すことも楽しみになる。市場に出すことで、何が機能し、何が機能しないのかが如実にわかる。イノベーティブなリーダーは、飽くなき好奇心の持ち主だ。・・・そういうリーダーは、可能なかぎり迅速にイノベーションを実行に移し、見込みのないプロジェクトは即座に切り捨てる。勝ち目のあるイノベーションに傾注する。彼らは、成功に至る一歩一歩をまさに『実行する』のだ。
」(193~194頁)

「失敗を恐れていれば、イノベーションの実現もままならない」。 そのとおりです。

何か新しいことをやろうとする場合、当然のことながら、費用がかかります。

もし失敗したら、お金が無駄になってしまう・・・恥ずかしい・・・などという気持ちがあまりにも強いとなかなか新しいことにチャレンジできません。

たいていのことは、やってみなければわかりません。

効果があまり出ないかもしれませんが、効果が出なければ修正するか、やめればいいだけです。

効果が上がらないパターンが1つわかっただけでも1つの成果です。

イノベーションをし続けている経営者は、現状維持では不安を感じます。

仮に現状維持でも経営が十分に成り立っているとしても、です。

イノベーションを実施し続けること自体が、自分の存在意義、生きている意味とすら感じます。

若手経営者のみなさんと日々、話をしていると、勢いの方は、みんなイノベーティブな発想にあふれています。

お互い刺激し合える関係でいたいと思います。

派遣労働7(日本トムソン事件)

おはようございます。 

さて、今日は、派遣社員と派遣先との労働契約の成否と更新拒絶の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

日本トムソン事件(大阪高裁平成23年9月30日・労判1039号5頁)

【事案の概要】

Xらは、平成16年4月から20年4月までの間、A社との間で労働契約を締結し、Y社の姫路工場内で、自動車のベアリングの製造業務に従事していた。

Y社は、平成15年12月当時、姫路工場において製造業務の請負化を目指したが、当初、A社にはベアリングの製造に関する技能、経験がなく、いきなり請負化しても単独での運用は難しいため、まずはY社がAから出向の形態でA社の社員を受け入れ、出向者が技能を習得することができたと判断された時点に置いて、請負形態での運用に移行することとした。

このようにして、A社とY社との間では、同年12月には出向協定が締結されたものが、17年10月からは業務委託(請負)契約に変更され、さらに、製造業での労働者派遣が解禁された後の18年8月からは、労働者派遣契約が締結された。

しかし、平成21年2月、リーマンショックのなかで、A社とY社の本件労働者派遣契約につき、同年3月をもって中途解約する旨の通知をA社が受けたことを契機に、Xらは、同日をもって中途解雇(労働契約の本来の終期は、平成21年8月であった)する旨の解雇予告通知をA社から受けた。

【裁判所の判断】

派遣労働者と派遣先との間での黙示の労働契約の成立は否定

派遣先による雇止めは適法

慰謝料請求は棄却

【判例のポイント】

1 雇用契約は、契約当事者間において、一方が他方に使用されて労働に従事することと、その労働への従事に対して一方が他方に賃金を支払うことを内容とする合意である。本件において、XらとY社との間に黙示の雇用契約の成立を認めるに足りる証拠はない

2 労働者派遣法は、労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的として制定された行政上の取締法規であって、同法4条の規定する労働者派遣を行うことのできる事業の範囲や同法40条の2が規定する派遣可能期間等についてどのようにするかは、我が国で行われてきた長期雇用システムと、企業の労働力調整の必要に基づく労働者派遣とをいかに調整するかという、その時々の経済情勢や社会労働政策にかかわる行政上の問題であると理解される上、労働者派遣法によって保護される利益は、基本的に派遣労働に関する雇用秩序であり、それを通じて、個々の派遣労働者の労働条件が保護されることがあるとしても、労働者派遣法は、派遣労働者と派遣先企業との労働契約の成立を保障したり、派遣関係下で定められている労働条件を超えて個々の派遣労働者の利益を保護しようとしたりするものではないと解される上、少なくとも労働者派遣法に反して労働者派遣を受け入れること自体については、労働者派遣法は罰則を定めておらず、また、社会的にみると、労働者派遣は、企業にとって比較的有利な条件で労働力を得ることを可能にする反面、労働者に対して就労の場を提供する機能を果たしていることも軽視できないことからすると、非許容業務でないのに派遣労働者を受け入れ、許容期間を超えて派遣労働者を受け入れるという労働者派遣法違反の事実があったからといって、直ちに不法行為上の違法があるとはいい難く、他にこの違法性を肯定するに足りる事情は認められない
以上によれば、Xらの不法行為による損害賠償請求はいずれも理由がない。

本件は、出向、業務請負契約、労働者派遣という法形式の変遷があり、これが事案を複雑にしています。

派遣先との黙示の労働契約の成立については、現在のところ、一貫して裁判所は否定しています。

慰謝料請求については、裁判例により結論が別れているところですが、本件では、派遣法違反だからといって当然に不法行為上の違法とはいえないと判断しています。

なお、一審判決は、慰謝料としてXら各自に対し50万円の支払を命じました。

最高裁の判断を待ちましょう。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介59 小さなチーム、大きな仕事-37シグナルズ成功の法則-(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則

この本も、非常におすすめの本です。

今の私にぴったりの本でした。

最近読んだ本でベスト3に入る本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたの会社に最適な規模は5人かもしれない。40人かも。200人かも。もしかして、あなたとラップトップが一台あればいいのかもしれない。どのくらいの規模にするかをすぐに決めないことだ。ゆっくり成長して最適なサイズをみつけよう。あせって人を雇うのは多くの企業にとって死因となる。身の丈に合わない急激な成長にも気をつけよう。
小さいことは通過点ではない。小さいことは、目的地でもあるのだ。
小さい企業はもっと大きければと願っているのに、大企業は身軽で柔軟であることを夢みていることに気づいているだろうか?正しいやり方はない。そして、一度大きくなってしまうと、社員を解雇したり、士気を下げたり、ビジネスのやり方を根本的に変えたりしないかぎり、縮小することは非常に難しい。
」(25~26頁)

身軽であるというアイデアを受け入れよう。今このとき、あなたは最も小さく、最も無駄がなく、最も速い。ここからだんだん鈍重になっていく。そしてものごとが身軽ではなくなるにつれ、方向を変えるのに大きなエネルギーが必要になる。・・・巨大な組織は軸を変えるのに何週間も何ヵ月もかかる。行動するかわりに会議をして、実行するかわりに打ち合わせをする。しかし身軽でいれば、ビジネスモデル、製品、機能一覧、マーティング・メッセージ・メッセージ、なんでもすばやく変えることができる。ミスをおかしても、すぐに直せる。優先度も、製品の構成も、フォーカスも変えられる。そして最も重要なことは、自分の考えを変えることができるのだ。」(66頁)

今回は、いつもより少し長めに引用しました。

言っているのは、一つだけです。

「大きくするだけが能じゃない」ということです。

私は、この文章を読んだとき、正直、はっとしました。

当初、事務所の規模を大きくしようと思っていました。

しかし、規模を大きくすればするほど、意思決定が遅れるのは明らかです。

意思決定のスピード、フットワークの軽さが命であるうちの事務所において、意思決定が遅いというのは、自滅を意味します。

うちの事務所の適正な規模がどの程度かは、正直なところよくわかりませんが、少なくとも事務所の規模を大きくすること自体を目的とすることはやめました。

スタッフの人数をどんどん増やしていくというよりは、少数精鋭で、1人1人の能力を最大限まで引き上げることの方がよほど重要です。

今後も、事務所スタッフの教育・研修は、充実させていこうと思います。

不当労働行為34(日本鋳鍛鋼事件)

おはようございます。

さて、今日は、労組法上の使用者概念に関する命令を見てみましょう。

日本鋳鍛鋼事件(福岡県労委平成23年11月15日・労判1038号95頁)

【事案の概要】

A社からY社に派遣され、平成21年1月から3か月ごとに契約を更新して、会社総務部で就労してきたXは、Y社に直接雇用される正社員化を打診されたこともあったが、平成22年3月末、Y社における就労を終了した。

Y社で就労していた際の時間外労働などに疑問を抱いたXは、組合に加入した。

組合は、Y社に対して、平成22年6月、10月、12月にそれぞれXの正社員化に関する問題およびXの時間外労働に伴う賃金問題等労働時間に関する問題を議題とする団交を申し入れた。

Y社は、「Xとは雇用関係にないので団交に応じない」旨電話で通知し、団交に応じなかった。

【労働委員会の命令】

未払賃金等労働関係の清算については、Y社は労組法上の使用者にあたる

Xの正社員化に関する事項については、Y社は労組法上の使用者にはあたらない

未払賃金等労働時間管理に関する事項について、Y社が団交に応じないことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 使用者とは、一般的には労働契約上の雇用主をいうものであるが、労組法7条に定める不当労働行為制度の趣旨に鑑みれば、同条にいう「使用者」については、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて事故の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の「使用者」にあたると解すべきである(朝日放送事件最高裁判決)。

2 たとえ派遣就労が終了した後であっても、未払賃金の存否等労働関係の清算を巡る何らかの問題がなお残存しており、派遣先事業主が当該問題を解決しうる立場にあると解されるときには、なお当該派遣先事業主は労組法上の使用者に当たることがあると考えられる。
しかしながら、本件のような派遣先事業主における派遣社員の正社員化(派遣社員の直接雇用を意味する)の問題とは、本来、派遣社員の雇用主である派遣元が決定する性質のものではないのは自明であるから、これについて「雇用主と・・・同視できる」かという判断基準を用いるのは適切でない

3 正社員化について派遣労働者と派遣先会社との間で明確な合意があるなどの事情がある場合も、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存するということができる。本件においては、・・・XとY社との間に、正社員として雇用するとの明確な合意があったとはいえない。

4 申立人は、XとY社との間に黙示の労働契約が締結されていたと主張する。しかし、Xは、本来の労働者派遣の枠組内でY社に就労していたにすぎず、例えば、派遣元事業主の存在が形骸化していたり、派遣元事業主と労働者との間の労働契約が無効となるような重大な派遣法違反が存在していたり、Xの賃金等を実質的にY社が支払っていたなどの特段の事情は認められないことからすれば、XとY社との間に黙示の労働契約が成立していたとはいいがたい

このケースは、重要な判断がてんこもりですね。

しかも、2つの団交事項で、結論が分かれており、比較しやすいです。

司法試験の問題にちょうどいいですね。

派遣先会社であっても、労組法上の使用者にあたることがあるので、気をつけましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介58 コトラーのマーケティング・コンセプト(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。
写真 12-03-06 15 57 33←事務所の入り口のマットを替えました。

現在、次のアイテムに取りかかっております。

また、完成しましたら、紹介しますね!

さて、今日は本の紹介です。

コトラーのマーケティング・コンセプト
コトラーのマーケティング・コンセプト

毎度お馴染み、コトラーさんのマーケティングに関する本です。

今から10年程前の本ですが、今読んでも、全く古さを感じません。

すごい本です。

めちゃくちゃためになります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

企業はしばしば、自社が成長しないのは市場が成熟しているからだという。だが、このような弁明は、たんに想像力の欠如を表明しているにすぎない。・・・成熟市場などというものは存在しない。われわれに必要なのは、成長の道筋を見出せる成熟した経営陣だ。成長とはものの見方の問題なのである。」(99頁)

製品やサービスが、市場に浸透しきっていることなど、ごくまれにしかない。企業はこの点を見落としがちである。すべての市場はセグメントとニッチから成り立っている。」(99頁)

さすがコトラーさん、いいこと言いますね。

「不景気だから」、「市場が成熟しているから」というのは、単なる言い訳です。

たんに想像力の欠如を表明しているにすぎないと。

仮に市場が成熟していると感じるのであれば、新たな市場をつくればいいだけのことです。

また、既存のサービスに手を加え、新しいセグメントに参入することもできるはずです。

こういう抽象的なことばかりを言っていると、「言うのは簡単だよ。」「現実はそんなに簡単じゃない」と思う方もいらっしゃると思います。

それはその通りだと思います。

言うのは簡単です。誰だって言えます。

現実はそんなに簡単ではありません。 簡単だったら、もう誰かがとっくにやっています。

簡単ではないからこそ、チャンスがあるわけです。

大変だからこそ、やる価値があるわけです。

これからも、このように思える方と一緒に仕事をしていきたいと思います。

不当労働行為33(茨木産業開発事件)

おはようございます。

さて、今日は、不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

茨木産業開発事件(大阪府労委平成23年11月29日・労判1038号92頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員約80名をもって、自動車教習所を経営しており、指定自動車教習所に置かれる管理者を直接補佐する副管理者4名程度任命している。

平成21年5月、営業担当副管理者を解任すると告げられたAは、組合に個人加盟した。

Y社は、組合とAの処遇について団交を行ったうえ、Aに対して営業担当副管理者を解任し、保安担当副管理者に任命した。その後、Y社は、Aに対し、保安担当副管理者を解任し、保安担当次長を命ずる辞令を手交した。

平成22年2月、Y社は、有期雇用契約により教習指導員として勤務していたBに対して、従前の契約書にはなかった「契約の更新にかかる記載」や「賞与にかかる記載」が、新たに「契約の更新はなし」、「賞与はなし」と明記された契約書の締結を求めた。B組合員は、この労働契約書に署名押印して、同年3月から1年間の労働契約を締結した。

【労働委員会の判断】

保安担当副管理者の解任は不当労働行為にあたる

有期雇用契約組合員の契約内容の不利益変更は不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y社は、本件解任について、A副委員長の能力や仕事ぶりに問題がある旨主張しているところ、Y社の副管理者解任の他の事例は、いずれも役職定年によるのであるから、能力等を理由とする副管理者からの解任は、Y社において異例のものということができる
次に、Y社が、組合及びA副委員長に対し、本件解任を提案した当時の理由の説明状況についてみると、Y社がA副委員長を副管理者から解任する旨初めて発言した平成21年8月28日の団交では、A副委員長は期待に応えていない、報告・提案だけで行動がない等と述べたにとどまることが認められ、Y社が、21年6月異動以降のA副委員長の勤務ぶりを詳細に検討した上で、本件解任を決定したかについて、疑問を持たざるを得ない
・・・以上のことを総合的に勘案すると、本件解任は、A副委員長が組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合の活動に支配介入したものでもあるというべきで、かかる行為は労働組合法7条1号及び3号に違反する不当労働行為である。

2 他の満60歳以上の従業員についてみると、いずれの従業員についても平成21年度の契約書には、契約の更新の有無及び賞与についての記載はなく、同22年度の契約書には、これらの項目について記載があることが認められ、満60歳以上であるB組合員の契約書上の更新の有無及び賞与についての記載の変更は、Y社が有期雇用の従業員の労働契約書に記載する項目を追加したことに伴うものと解される。
また、賞与の有無に関しては、他の満60歳以上の従業員全員についても、賞与なしと記載されていることが認められる。
したがって、Y社は平成22年度におけるB組合員の労働契約を変更したことは、組合員であるが故の不利益取扱いということはできず、組合の活動に支配介入したということもできない。なお、この判断は、平成22年2月頃、本件解任や本件争議行為等を巡って、組合と会社との間で良好とはいえない関係にあったことを勘案しても、変わるものではない
以上のとおりであるから、この点に関する組合の申立ては棄却する。

Aに対する降格処分は、合理的な理由がないと判断されたため、不当労働行為とされました。

他方、Bに対する契約内容の不利益変更は、他の従業員との関係も考慮され、不合理とはいえないと判断されたため、不当労働行為性は否定されました。

結局は、会社の行為に合理的な理由が認められるか、組合嫌悪の意思の表れといえるかに尽きるわけです。

会社としては、合理的な理由をいかにそろえられるかにかかっています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。