不当労働行為33(茨木産業開発事件)

おはようございます。

さて、今日は、不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

茨木産業開発事件(大阪府労委平成23年11月29日・労判1038号92頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員約80名をもって、自動車教習所を経営しており、指定自動車教習所に置かれる管理者を直接補佐する副管理者4名程度任命している。

平成21年5月、営業担当副管理者を解任すると告げられたAは、組合に個人加盟した。

Y社は、組合とAの処遇について団交を行ったうえ、Aに対して営業担当副管理者を解任し、保安担当副管理者に任命した。その後、Y社は、Aに対し、保安担当副管理者を解任し、保安担当次長を命ずる辞令を手交した。

平成22年2月、Y社は、有期雇用契約により教習指導員として勤務していたBに対して、従前の契約書にはなかった「契約の更新にかかる記載」や「賞与にかかる記載」が、新たに「契約の更新はなし」、「賞与はなし」と明記された契約書の締結を求めた。B組合員は、この労働契約書に署名押印して、同年3月から1年間の労働契約を締結した。

【労働委員会の判断】

保安担当副管理者の解任は不当労働行為にあたる

有期雇用契約組合員の契約内容の不利益変更は不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 Y社は、本件解任について、A副委員長の能力や仕事ぶりに問題がある旨主張しているところ、Y社の副管理者解任の他の事例は、いずれも役職定年によるのであるから、能力等を理由とする副管理者からの解任は、Y社において異例のものということができる
次に、Y社が、組合及びA副委員長に対し、本件解任を提案した当時の理由の説明状況についてみると、Y社がA副委員長を副管理者から解任する旨初めて発言した平成21年8月28日の団交では、A副委員長は期待に応えていない、報告・提案だけで行動がない等と述べたにとどまることが認められ、Y社が、21年6月異動以降のA副委員長の勤務ぶりを詳細に検討した上で、本件解任を決定したかについて、疑問を持たざるを得ない
・・・以上のことを総合的に勘案すると、本件解任は、A副委員長が組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合の活動に支配介入したものでもあるというべきで、かかる行為は労働組合法7条1号及び3号に違反する不当労働行為である。

2 他の満60歳以上の従業員についてみると、いずれの従業員についても平成21年度の契約書には、契約の更新の有無及び賞与についての記載はなく、同22年度の契約書には、これらの項目について記載があることが認められ、満60歳以上であるB組合員の契約書上の更新の有無及び賞与についての記載の変更は、Y社が有期雇用の従業員の労働契約書に記載する項目を追加したことに伴うものと解される。
また、賞与の有無に関しては、他の満60歳以上の従業員全員についても、賞与なしと記載されていることが認められる。
したがって、Y社は平成22年度におけるB組合員の労働契約を変更したことは、組合員であるが故の不利益取扱いということはできず、組合の活動に支配介入したということもできない。なお、この判断は、平成22年2月頃、本件解任や本件争議行為等を巡って、組合と会社との間で良好とはいえない関係にあったことを勘案しても、変わるものではない
以上のとおりであるから、この点に関する組合の申立ては棄却する。

Aに対する降格処分は、合理的な理由がないと判断されたため、不当労働行為とされました。

他方、Bに対する契約内容の不利益変更は、他の従業員との関係も考慮され、不合理とはいえないと判断されたため、不当労働行為性は否定されました。

結局は、会社の行為に合理的な理由が認められるか、組合嫌悪の意思の表れといえるかに尽きるわけです。

会社としては、合理的な理由をいかにそろえられるかにかかっています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。