Daily Archives: 2012年3月1日

不当労働行為32(秋田臨港事件)

おはようございます。 今日から3月ですね。

さて、今日は、組合委員長の配転と団交での発言に関する命令を見てみましょう。

秋田臨港事件(秋田県労委平成23年11月29日・労判1038号91頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車等の廃棄物処分業を営む会社である。

Y社は、全従業員を集めて、リーマンショックの影響から業績が悪化し、平成21年2月頃には人員削減が避けられないと述べ、賃金を引き下げ、人員削減を行った。

組合は、Y社の人員削減に反対し、一時金や労働時間などをめぐってY社と対立した。

平成22年4月、Y社は、組合委員長であって約1年間シュレッダープラントの保守・監視等の業務に従事してきたXに対し、タイヤ工場への配転を命じた。なお、Y社は、Xの配転理由は技術に乏しく、基本を無視した独善的かつ極めて危険な作業を漫然と行い、シュレッダープラントの担当者としては不適であるとしている。

同年5月18日に開催された団交において、Y社側出席者である代理人は、業務時間中に組合活動を行った組合員に対する懲戒処分を検討している旨発言した。また、同年8月6日に開催された団交において、会社代理人は、組合側出席者の発言に激昂して「コノヤロウ!!」などと述べた。

【労働委員会の判断】

配転命令は不当労働行為にあたる

団交における会社側出席者の発言は不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 タイヤ工場は、再開して間もなく社内での位置づけも不確定で、また、同じ工場内で関連性はあると言うものの、シュレッダープラントで要求される技術水準は低く、シュレッダープラントで要求される高い溶接技術を活用するような部署でもない。Xは、自らの技術にこだわりと自負をもち、また、シュレッダープラントにとって欠くべからざる人間と認められていた。このような者にとっては、他の配転の例で会社が行ったような配慮も説明もなくタイヤ工場に配転された場合、労働条件低下等の経済的不利益はなくても、これを精神的不利益と受け止めるのも無理からぬものがある

2 Y社は、業務時間中や業務をしているものを対象に、許可無く組合活動を行うことは正当なものではないという見解を示し、そのような場合には懲戒処分の対象になることを予告すると共に、過去の事例に対する抗議の意思を示した「5月18日発言」は、この会社の考えを示す一連の流れの中で行われたものを、要約したものと言える。Y社は、組合活動と業務時間について、Y社の見解と対応を示したにすぎないと言え、仮に組合が別の見解を持っていたとしても、それは別途交渉を行うなどの余地はあるのであって、この発言が、組合が正当と考える組合活動を行っていてもなお、予期せず突然に懲戒処分になるおそれを抱かせるほど威嚇的なものとは認められない

3 「8月6日発言」は、確かに組合側出席者に対して悪態をついたもので不穏当とは言えるが、組合側にも、それが8月6日か8月3日のどちらであったかはともかく挑発するような発言があったのであるから、一方的にY社に帰責すべきかどうかには疑問がある。また、発言内容を検討しても、具体的に強制、威嚇、報復等を予告し、ないしはそのおそれを感じさせるものとは言えず、組合活動の自由を侵害し、その自主性を阻害するとは認められない。実際に、この発言のあった団交のわずか3日後には団交が開催され、上記発言がその開催の支障になった様子は窺えない。
以上の次第であるから、会社代理人が行った「5月18日発言」及び「8月6日発言」は、いずれも労組法7条3号には該当しない。

本件は、配転と団交での発言の2つが問題とされました。

団交での発言は、「会社代理人」が行ったようです。弁護士でしょうかね。

組合側の挑発に乗ってしまったのでしょうか。 挑発に乗っているようでは駄目です。

思うつぼというやつです。

交渉ごとですから、感情的な対応をする方が負けます。

すぐに感情的になる人は、交渉事には向いていないので、気をつけましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。