Category Archives: 同一労働同一賃金

同一労働同一賃金26 定年後再雇用者の基本給・手当・賞与にかかる労契法20条違反の有無(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後再雇用者の基本給・手当・賞与にかかる労契法20条違反の有無に関する裁判例を見ていきましょう。

名古屋自動車学校(再雇用)事件(最高裁令和5年7月20日・労判1292号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を定年退職した後に、Y社と期間の定めのある労働契約を締結して勤務していたXらが、Y社と期間の定めのない労働契約を締結している労働者との間における基本給、賞与等の相違は労働契約法20条に違反するものであったと主張して、Y社に対し、不法行為等に基づき、上記相違に係る差額について損害賠償等を求める事案である。

【裁判所の判断】

原判決中、Xらの基本給及び賞与に係る損害賠償請求に関するY社敗訴部分を破棄する。

前項の部分につき、本件を名古屋高等裁判所に差し戻す

【判例のポイント】

1 管理職以外の正職員のうち所定の資格の取得から1年以上勤務した者の基本給の額について、勤続年数による差異が大きいとまではいえないことからすると、正職員の基本給は、勤続年数に応じて額が定められる勤続給としての性質のみを有するということはできず、職務の内容に応じて額が定められる職務給としての性質をも有するものとみる余地がある。
他方で、正職員については、長期雇用を前提として、役職に就き、昇進することが想定されていたところ、一部の正職員には役付手当が別途支給されていたものの、その支給額は明らかでないこと、正職員の基本給には功績給も含まれていることなどに照らすと、その基本給は、職務遂行能力に応じて額が定められる職能給としての性質を有するものとみる余地もある。そして、前記事実関係からは、正職員に対して、上記のように様々な性質を有する可能性がある基本給を支給することとされた目的を確定することもできない。
また、嘱託職員は定年退職後再雇用された者であって、役職に就くことが想定されていないことに加え、その基本給が正職員の基本給とは異なる基準の下で支給され、被上告人らの嘱託職員としての基本給が勤続年数に応じて増額されることもなかったこと等からすると、嘱託職員の基本給は、正職員の基本給とは異なる性質や支給の目的を有するものとみるべきである。
しかるに、原審は、正職員の基本給につき、一部の者の勤続年数に応じた金額の推移から年功的性格を有するものであったとするにとどまり、他の性質の有無及び内容並びに支給の目的を検討せず、また、嘱託職員の基本給についても、その性質及び支給の目的を何ら検討していない
また、労使交渉に関する事情を労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮するに当たっては、労働条件に係る合意の有無や内容といった労使交渉の結果のみならず、その具体的な経緯をも勘案すべきものと解される
Y社は、X1及びその所属する労働組合との間で、嘱託職員としての賃金を含む労働条件の見直しについて労使交渉を行っていたところ、原審は、上記労使交渉につき、その結果に着目するにとどまり、上記見直しの要求等に対するY社の回答やこれに対する上記労働組合等の反応の有無及び内容といった具体的な経緯を勘案していない
以上によれば、正職員と嘱託職員であるXらとの間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとされた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま、その一部が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法がある。 

最高裁の判断として実務に与える影響はとても大きいです。

正社員と嘱託社員との労働条件の格差について、名古屋高裁の判断が待たれます。

とはいえ、前回も書きましたが、労働力不足が今後ますます深刻化する中で、はたしてこのような「格差」をどこまで許容し続けるのかは、法律論とは別に考える必要があろうかと思います。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

同一労働同一賃金25 正社員と期間の定めのある臨時雇員との賞与に関する労働条件の相違が不合理ではないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、正社員と期間の定めのある臨時雇員との賞与に関する労働条件の相違が不合理ではないとされた事案について見ていきましょう。

ロイヤルホテル事件(大阪地裁令和5年6月8日・労判ジャーナル139号23頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある臨時雇員雇用契約を締結して勤務していたXが、Y社との間で期限の定めのない雇用契約を締結している社員との間で、賞与に係る労働条件に相違があったことは短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律8条に違反するものであると主張して、Y社に対し、不法行為に基づき、令和2年の賞与相当額12万3030円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、基本的に上期及び下期に正社員に対して賞与を支給しており、少なくとも平成28年度から令和元年度まで一定の支給率を維持している上、新型コロナウィルス感染拡大によりY社の業績が大幅に落ち込んだ令和2年度においても、支給率を下げながらも一定額の賞与を支給したことが認められ、正社員の賞与がY社の業績と必ずしも連動するものではなかったことが認められる。
正社員に対して支給される賞与には、労務の対価の後払いや一律の功労報償の趣旨のほか、正社員としての職務を遂行し得る人材を確保してその定着を図る目的があったと認めることができる。
これに対して、臨時雇員に対する賞与は、平成20年から同22年まで支給されたことはあったが、その額は数千円程度にすぎず、それ以降10年以上にわたり支給されたことがなかったことからすると、恩恵的給付としての性格が強いものであったということができる。
また、臨時雇員の賞与には、勤労意欲の向上の趣旨があったにしても、臨時雇員としての職務を遂行し得る人材を確保してその定着を図る目的があったとまでは認めることができない

2 正社員の業務内容は、臨時雇員と比較して、広範かつ責任を伴うものであり、臨時雇員が正社員の業務の一部を行うことはあっても、限定的であったということができる。

3 Y社において、正社員は人事異動が命じられることがあったのに対し、臨時雇員は特別な事情がない限り人事異動が命じられることはなかった。

4 Y社においては、本件登用制度が設けられ、一定の登用実績もあったことからすると、必ずしも臨時雇員と契約社員及び正社員の区分が固定されたものではなかったと認めることができるから、本件登用制度は「その他の事情」として考慮するのが相当である。

考慮要素自体はこれまでの裁判例と異なるものではありません。

労働力不足が今後ますます深刻化する中で、はたしてこのような「格差」をどこまで許容し続けるのかは、法律論とは別に考える必要があろうかと思います。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

同一労働同一賃金24 無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?について見ていきましょう。

ハマキョウレックス(無期契約社員)事件(大阪高裁令和3年7月9日・労判1274号82頁)

【事案の概要】

本件は、労契法18条1項に基づき有期労働契約から期間の定めのない労働契約に転換したXらが、転換後の労働条件について、雇用当初から無期労働契約を締結している労働者(以下「正社員」という。)に適用される就業規則(以下「正社員就業規則」という。)によるべきであると主張して、Y社に対し、正社員就業規則に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権として、無期労働契約に転換した後の平成30年10月分の賃金について正社員との賃金差額(X1につき9万1012円、X2につき9万3532円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

原審裁判所は、Xらの請求をいずれも棄却したため、Xらがこれを全部不服として控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 労契法18条を新設した労働契約法の一部を改正する法律案が審議された第180回国会における衆議院厚生労働委員会において、厚生労働大臣政務官が、契約期間の無期化に伴って労働者の職務や職責が増すように変更されることが当然の流れとして考えられるが、当事者間あるいは労使で十分な話し合いが行われて、新たな職務や職責に応じた労働条件を定めることが望ましく、「別段の定め」という条文も、こうした趣旨に沿った規定であると考えられるとの答弁をしていること、労契法の改正内容の周知を図ることを目的として発出された「労働契約法の施行について」において、「別段の定め」とは、「労働協約、就業規則及び個々の労働契約(無期労働契約への転換に当たり従前の有期労働契約から労働条件を変更することについての有期労働契約者と使用者との間の個別の合意)をいうものであること」と説明されていることが認められる。
そして、これらを踏まえると、労契法18条1項後段の「別段の定め」とは、労使交渉や個別の契約を通じて現実に合意された労働条件を指すものと解するのが相当であり、無期転換後の労働条件について労使間の合意が調わなかった場合において、直ちに裁判所が補充的意思解釈を行うことで労働条件に関する合意内容を擬制すべきものではなく、Xらが主張するような同一価値労働同一賃金の原則によって労働条件の合意を擬制することが制度上要求されていると解することはできないというべきである。
このことからしても、本件において、Xらが主張する職務評価による職務の価値が同一であれば同一又は同等の待遇とすべき原則(同一価値労働同一賃金の原則)が、平成30年10月1日のXらの無期転換の時点において公の秩序として確立しているとまでは認めるのは困難である。また、Xらと正社員であるBとの職務評価や待遇等と比較しても、無期転換後のXらの労働条件と正社員のそれとの相違が、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じて許容できないほどに均衡が保たれていないとも認め難い。
したがって、この点に関するXらの主張は採用できない。

労契法18条1項後段の「別段の定め」の解釈は基本的な内容ですので、しっかりと押さえておきましょう。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

同一労働同一賃金23 派遣労働者に対する通勤手当不支給と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

今日は、有期雇用の元派遣社員への通勤手当不支給は不合理でないとする原審の判断が維持された裁判例を見てみましょう。

リクルートスタッフィング事件(大阪高裁令和4年3月15日・労経速2483号29頁)

【事案の概要】

本件は、人材派遣事業等を業とするY社との間で、派遣等による就労の都度、期間の定めのある労働契約を締結し、派遣先事業所等において業務に従事していた派遣労働者が、Y社と期間の定めのない労働契約を締結している従業員と派遣労働者との間で、通勤手当の支給の有無について労働条件の相違が存在し、同相違は、(旧)労働契約法20条に反する違法なものであり、同相違に基づく通勤手当の不支給は不法行為に当たると主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、未払通勤手当相当額等の支払を求めた事案である。

原審は、Xの請求を棄却したため、これを不服とするXが控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Xは、本件通勤手当が通勤交通費を補填する趣旨で支給されているところ、職務内容いかんに関わらず、通勤交通費実費が支給されているのであるから、職務の内容が異なることは不合理性判断には影響しないと主張する。
しかし、職務の内容が全く異なる場合、賃金だけでなく各種手当その他の労働条件について一定の違いが生じることは自然なことである。職務の内容及びこれと密接な関連性があるその他の事情や、通勤手当の支給と関連性があるその他の事情や、通勤手当の支給と関連性を有する他の賃金項目の内容等により、通勤交通費を補填する必要性やその程度は異なってくるのであり、一定の職種区分について通勤手当を支給し、職務の内容が異なる他の職種区分については支給しないこととしても、それを直ちに不合理であると評価することはできない

非常に有名な裁判例です。

通勤手当に関しては原告が主張するような考え方が一般的ですが、派遣社員については異なるようです。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

同一労働同一賃金22 嘱託・年俸社員における賞与・家族手当等の相違と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、嘱託・年俸社員における賞与・家族手当等の相違と労契法20条違反に関する裁判例を見てみましょう。

科学飼料研究所事件(神戸地裁姫路支部令和3年3月22日・労判1242号5頁)

【事案の概要】

本件は、①Y社と期間の定めのある労働契約を締結して「嘱託」との名称の雇用形態により勤務していたXら及び②Y社と期間の定めのない労働契約を締結して「年俸社員」との名称の雇用形態により勤務していたXらが、Y社と無期労働契約を締結している上記「年俸社員」を除く他の雇用形態に属する無期契約労働者との間で、賞与、家族手当、住宅手当及び昼食手当に相違があることは、労働契約法20条ないし民法90条に違反している旨などを主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償として、本件手当等に係る賃金に相当する額及び弁護士費用+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

賞与の相違は不合理でない

家族手当、住宅手当の相違は不合理

昼食手当の相違は不合理でない

【判例のポイント】

1 Y社の一般職コース社員に対する賞与は、労働意欲の向上、人材の確保・定着を図る趣旨によるところ、Xら嘱託社員との間の職務内容、職務内容や配置の変更範囲、人材活用の仕組みの各相違、および、再雇用者を除くXら嘱託社員の年間支給額と比較して一般職コース社員の基本給が低い一方、定年後の再雇用者では老齢厚生年金の支給等から賃金が抑制され得ること、さらに、Y社には試験による登用制度があり、嘱託社員としての雇用が固定されたものではないこと等から、一般職コース社員とXら嘱託社員との間の賞与にかかる労働条件の相違は不合理でない

2 Y社の家族手当や住宅手当は、支給要件や金額に照らすと従業員の生活費を補助する趣旨であるところ、扶養者がいることで日常の生活費が増加することは、Xら嘱託社員と一般職コース社員の間で変わりはなく、Xら嘱託社員と一般職コース社員は、いずれも転居を伴う異動は予定されず、住居を持つことで住居費を要することになる点でも違いはないから、家族手当および住宅手当の趣旨は、Xら嘱託社員にも同様に妥当するとされ、これらをまったく支給しないことは不合理である。

3 Y社の昼食手当は、当初は従業員の食事にかかる補助の趣旨で支給されていたが、遅くとも平成4年頃までには、名称にかかわらず、月額給与額を調整する趣旨で支給されていたところ、一般職コース社員とXら嘱託社員との間の職務内容、職務内容や配置の変更範囲、人材活用の仕組み等が異なること、両社員では賃金体系が異なり、一般職コース社員の月額の基本給は、昼食手当を加えてもXら嘱託社員の月額支給額より低いこと、Y社では登用制度が設けられていること等から、一般職コース社員とXら嘱託社員との間の昼食手当にかかる労働条件の相違は不合理でない。

家族手当及び住宅手当の格差については不合理であると判断されています。

転居を伴う異動の有無が考慮要素となりますので注意しましょう。

同一労働同一賃金の問題は判断が非常に悩ましいので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

同一労働同一賃金21 無期職員と契約職員との地域手当、住居手当、昇給基準を巡る待遇差と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、無期職員と契約職員との地域手当、住居手当、昇給基準を巡る待遇差が不合理でないとされた裁判例を見てみましょう。

独立行政法人日本スポーツ振興センター事件(東京地裁令和3年1月21日・労経速2449号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結しているXが、①Xの学歴・経歴によれば、Y社の基準に照らし基準月額を81号俸とすべきであるのに、Y社がXに対し、基準月額を61号俸とする労働契約の締結を余儀なくさせた、②Y社が期間の定めのない労働契約(以下「無期労働契約」という。)を締結している職員に対して支給している地域手当及び住居手当をXに支給せず、また、無期労働契約において設けている昇給基準をXに適用せず昇給させないのは不合理な労働条件の相違であり、平成30年法律第71号による改正前の労働契約法20条(同条は、前記改正により削除され、令和2年4月1日施行の有期雇用労働者法8条に統合された。同条は、前記改正前の労働契約法20条の内容を明確化して統合したものであるから、以下、同法20条に関する当事者の主張は、有期雇用労働法8条による主張と整理した上判断する。)に違反する旨主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として平成28年4月分から令和元年7月分までの基準月額、地域手当、住居手当、基準月額に連動する契約職員手当、超過勤務手当及び特別手当の各差額賃金相当額701万1762円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 無期職員は、転居を伴う異動の可能性があり、配置される地域の物価の高低によって必要とされる生活費に差額が生じることから、勤務地の物価の高低に応じ、生活費の差額を補てんする必要があるといえるが、契約職員は異動が予定されておらず、東京都特別区にしか配置されていないことから、勤務地の物価の高低による生活費の差額は生じず、これを補てんする必要がない。
したがって、無期職員に対して地域手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという待遇の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえないから、有期雇用労働者法8条にいう不合理と認められる待遇に当たらないと解するのが相当である。

2 無期職員は、転居を伴う異動の可能性があり、転居がない場合と比較して住宅に要する費用が多額となり得ることから、住宅に要する費用を補助する必要がある一方、契約職員については東京都特別区内にしか配置されておらず、転居を伴う異動の可能性はない。
したがって、無期職員に対して住居手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえないから、有期雇用労働者法8条に違反するものではないと解するのが相当である。

3 本件昇給基準は、無期職員に適用されるものであるところ、その文言によれば、管理又は監督の地位にある職員以外の職員について、「おおむね」、昇給区分Aの割合を100分の5、昇給区分Bの割合を100分の20とするものであって、おおむねの割合を示すものと解されること、及び、本件昇給基準より上位の規定である職員給与規則は、無期職員の昇給は予算の範囲内で行わなければならない旨規定し、昇給に予算の制約を設けていることを考慮すると、本件昇給基準は、昇給区分AないしBとすべき職員の割合についての決まりを設けたものと認めることはできない
したがって、本件昇給基準に関し、無期職員について昇給の決まりを設けているとはいえないから、無期職員について昇給の決まりを設ける一方、契約職員について昇給の決まりを設けていないという不合理な待遇の相違があり、不法行為に該当する旨のXの主張は、その前提を欠くものである。

各種手当に関する格差については、当該手当の趣旨から議論がスタートします。

格差について合理的理由を説明できるか否かがポイントとなります。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

同一労働同一賃金20 派遣労働者に対する通勤手当不支給と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、派遣労働者に対する通勤手当不支給の(旧)労契法20条該当性に関する裁判例を見てみましょう。

リクルートスタッフィング事件(大阪地裁令和3年2月25日・労判ジャーナル111号24頁)

【事案の概要】

本件は、人材派遣事業等を業とするY社との間で、派遣等による就労の都度、期間の定めのある労働契約を締結し、派遣先事業所等において業務に従事していた派遣労働者が、Y社と期間の定めのない労働契約を締結している従業員と派遣労働者との間で、通勤手当の支給の有無について労働条件の相違が存在し、同相違は、(旧)労働契約法20条に反する違法なものであり、同相違に基づく通勤手当の不支給は不法行為に当たると主張して、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、未払通勤手当相当額等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 派遣労働者が派遣スタッフないしOSスタッフとして従事した各JOB及び受託業務における時給額、派遣労働者が要した通勤交通費及びアルバイト・パートの平均時給額の比較によれば、派遣労働者が得ていた時給額はアルバイト・パートの平均時給額よりも相当程度高額であり、その差額は、各JOBにおいては派遣労働者が通勤に要した交通費を支弁するのに不足はないものであり、受託業務においても100円程度上回っており、派遣労働者が通勤に要した交通費の相当部分を補うのに足りるものであったと認められ、派遣スタッフ等の時給は、無期転換スタッフの時給・通勤手当、調整手当と同程度であるから、派遣労働者が得ていた時給額は、一般的にみて、その中から通勤に要した交通費を自己負担することが不合理とまではいえない金額であったということができ、また、派遣労働者の賃金について、通勤手当を含めて総額制にし、別途通勤手当を支給しないこと自体を禁ずる法律は存しないこと等から、当時、派遣労働者に通勤手当を支給しないことが一般的に違法であるとの取扱いがされていたとはいえず、本件相違は、(旧)労働契約法20条の「不合理と認められるもの」と評価することはできないから、本件相違により派遣労働者に対して通勤手当が支給されなかったことについて、不法行為に当たるということはできない

通勤手当に関する格差については、一般的には、違法と判断されますが、今回は、派遣労働者との対比においては、上記判例のポイント1の理由から適用と判断されました。

派遣会社の皆さんは参考にしてください。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

同一労働同一賃金19 無期転換労働者には正社員の就業規則が適用される?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、無期労働契約転換後の労働者に、正社員の就業規則が適用されるべきとの主張が認められなかった裁判例を見てみましょう。

ハマキョウレックス(無期転換)事件(大阪地裁令和2年11月25日・労経速2439号3頁)

【事案の概要】

本件は、労契法18条1項に基づき有期労働契約から期間の定めのない労働契約に転換したXらが、転換後の労働条件について、雇用当初から無期労働契約を締結している労働者(以下「正社員」という。)に適用される就業規則(以下「正社員就業規則」という。)によるべきであると主張して、Y社に対し、正社員就業規則に基づく権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づく賃金請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権として、無期労働契約に転換した後の平成30年10月分の賃金について正社員との賃金差額(X1につき9万1012円、X2につき9万3532円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 前訴は、X1とY社との間で、有期の契約社員と正社員との労働条件の相違が労契法20条に違反する場合、当該有期の契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であるのに対し、本件訴訟は、XらとY社との間で、労契法18条に基づく無期転換後の無期契約社員の労働条件が正社員の労働条件と同一のものとなるかが争われた事案であることが認められる。
そうすると、本件訴訟は、前訴と争点を異にするものであるから、本件訴訟におけるXらの主張に前訴におけるX1の主張と類似の趣旨のものがあったとしても、本件訴訟が前訴における紛争の実質的な蒸し返しに当たるということはできない。

2 X告らは、Y社の回答が上記のとおりであることを認識した上で、無期転換後の労働条件は契約社員就業規則による旨が明記された無期パート雇用契約書に署名押印してY社に提出しており、XらとY社との間には、無期転換後も契約社員就業規則が適用されることについて明示の合意があるというべきである。

3 Y社において、有期の契約社員と正社員とで職務の内容に違いはないものの、職務の内容及び配置の変更の範囲に関しては、正社員は、出向を含む全国規模の広域異動の可能性があるほか、等級役職制度が設けられており、職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて、将来、被告の中核を担う人材として登用される可能性があるのに対し、有期の契約社員は、就業場所の変更や出向は予定されておらず、将来、そのような人材として登用されることも予定されていないという違いがあることが認められる。
そして、無期転換の前と後でXらの勤務場所や賃金の定めについて変わるところはないことが認められ、他方でY社が無期転換後のXらに正社員と同様の就業場所の変更や出向及び人材登用を予定していると認めるに足りない。
したがって、無期転換後のXらと正社員との間にも、職務の内容及び配置の変更の範囲に関し、有期の契約社員と正社員との間と同様の違いがあるということができる。
そして、無期転換後のXらと正社員との労働条件の相違も、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲等の就業の実態に応じた均衡が保たれている限り、労契法7条の合理性の要件を満たしているということができる。

この裁判例、そのまま読むと、無期転換後の社員と正社員との間においても同一労働同一賃金問題が生じるように読めます。

同一労働同一賃金の問題は非常にセンシティブですので、顧問弁護士に相談して対応するようにしてください。

ひとまず高裁、最高裁判決を待ちましょう。

同一労働同一賃金18 大学の嘱託講師と同一労働同一賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、大学夜間担当手当の不支給が労契法20条・パート労働法8条に違反しないとの原審判断が維持された裁判例を見てみましょう。

学校法人A事件(大阪高裁令和2年1月31日・労経速2431号35頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の経営するA大学の嘱託講師であったXが、Y社に対し、夜間の授業を担当したにもかかわらず、A大学の専任教員が夜間の授業を担当した場合に支給される「大学夜間担当手当」(本件手当)が平成27年度に支給されなかったのは、改正前の労契法20条又は同改正前のパートタイム労働法8条に違反するなどと主張して、以下の各請求をした事案である。

原判決は、Xの請求をいずれも棄却した。そこで、Xが原判決を不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件手当は、平成27年度当時、6講時(午後6時25分~7時55分)、7講時(午後8時10分~9時40分)の授業を担当した専任教員に対して、1週1講時につき月額8000円を支給し、1週1講時を越えて担当する場合は1週1講時につき月額2000円を加算し、最終講時を担当した場合は1週1講時につき月額3000円を加算するというものであったが、嘱託教員よりも広範で重い職務を担当するため日中及び夜間の時間を多く拘束される専任教員が、更に6講時以降の夜間の授業を担当する場合には時間的拘束や負担が大きくなると考えられることからすれば、本件手当は専任教員が日中に広範で責任の重い職務を担当しながら、更に6講時以降の授業を担当することの時間的拘束や負担を考慮した趣旨及び性質の手当であると認められる。

2 労契法20条にいう「不合理と認められるもの」とは、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の相違が不合理であると評価できるものであることをいうと解するのが相当である(ハマキョウレックス事件最高裁判決参照)。そして、上記の判示のほか、パートタイム労働法8条と労働契法20条の規定の内容と文言が類似していることからすれば、パートタイム労働法8条にいう「不合理と認められるもの」も上記と同様に解するのが相当であり、専任教員に対しては本件手当が支給され、嘱託講師には本件手当が支給されないという本件における労働条件又は待遇の相違については、専任教員と嘱託講師の職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して不合理であると評価することができるかを検討することになる。

3 そうであるところ、Y社における専任教員と嘱託講師との間の職務の内容の相違並びに本件手当の趣旨、性質のほか、前提事実のとおり、本件手当は専任教員が6講時及び7講時という夜間の授業を1週1講時担当すれば月額8000円が支給され、担当する授業数、時間に応じてこれに加算されるものであって、本件手当として支給される月額も著しく多額になるものではないこと及び嘱託講師が夜間の授業を担当することによって、当該嘱託講師の担当総授業数が増えた場合には週1回90分の講義につき月額2万8800円が本俸に加算され、嘱託講師の担当授業数の増加に伴う時間的拘束や負担に対しては本俸への加算という形で相当の配慮がされているといえることをも併せ考慮すると、上記労働条件又は待遇の相違が不合理と認められるものであると評価することはできないというべきである。

オーソドックスな認定のしかたであり、参考になります。

同一労働同一賃金問題については、すでに会社としていかなる準備をすべきかが判明しているので、あとは顧問弁護士に相談しながら適切な手順で進めていけばそれほど大きな失敗はないと思います。

同一労働同一賃金17 通勤手当の相違と同一労働同一賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、通勤手当の相違を不合理とし、引っ越し作業中の破損への賠償金負担等も判断した裁判例を見てみましょう。

アートコーポレーション事件(横浜地裁令和2年6月25日・労経速2428号3頁)

【事案の概要】

本件は、引越関連事業を主な事業とする株式会社であるY社との間で雇用契約を締結し、勤務していたXらが、Y社に対し、次の(1)ないし(6)の各請求をするとともに、Y社の企業内労働組合であるZ組合に対し、次の(6)の請求をする事案である。
(1)Xらが、未払の時間外割増賃金等がある旨主張して、雇用契約に基づき、各Xらの別紙集計表(原告主張版)E欄記載の各未払残業代+遅延損害金の支払の請求
(2)Xらが、Y社に引越事故責任賠償金名目で負担させられた金員について、法律上の原因を欠く旨主張して、不当利得に基づき、X1が24万9500円、X3が37万1500円、X2が26万4500円の各返還+遅延損害金の支払の請求
(3)X1及びX2が、未払の通勤手当がある旨主張して、雇用契約に基づき、未払の通勤手当として、X1が38万3120円、X2が13万円の各支払+遅延損害金の支払の請求。なお、X2については、予備的に、アルバイトに通勤手当を支給しない旨の規定は労働契約法20条(平成30年7月6日法律第71号による改正前のもの。以下同じ。)に違反すると主張して、不法行為に基づき、損害賠償金13万円(通勤手当相当額)+遅延損害金の支払の請求
(4)X3が、Y社からは業務用携帯電話の支給がなく、個人で業務専用の携帯電話を使用していたが、この携帯電話料金はY社が負担すべきであると主張して、不当利得に基づき、4万9563円の返還+遅延損害金の支払の請求
(5)労基法114条に基づき、本件提訴日である平成29年10月10日から2年以内の上記未払割増賃金等と同額とXらが主張する付加金(X1につき38万2696円、X3につき56万3629円、X2につき52万1953円)の支払+遅延損害金の支払の請求
(6)Xらが、XらはZ組合に加入しておらず、組合費の控除について同意していないのに、賃金から組合費の控除が行われ、これがZ組合に支払われていたと主張して、Y社に対しては、雇用契約に基づき、未払の賃金として、平成27年3月分以降に賃金から控除された金員(X1が1万7000円、X3及びX2が各2万4000円)の支払+遅延損害金の支払の請求。
Z組合に対しては、不当利得に基づき、入社時から退職時までに賃金から控除されてZ組合に支払われた金員(X1が5万3000円、X3が7万3000円、X2が4万8000円)の各返還+遅延損害金の支払の請求

【裁判所の判断】

(1)Y社は、X1に対し、29万6517円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X1に対し、24万9500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X1のY社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
(1)Y社は、X3に対し、31万6746円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X3に対し、37万1500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X3のY社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
(1)Y社は、X2に対し、47万0070円+遅延損害金を支払え。
 (2)Y社は、X2に対し、26万4500円+遅延損害金を支払え。
 (3)X2のY社に対する通勤手当に係る主位的請求を棄却する。
  Y社は、X2に対し、13万円+遅延損害金を支払え。
 (4) 原告X2の被告会社に対するその余の請求をいずれも棄却する。
 XらのZ組合に対する請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y社通勤手当支給規程によれば、通勤手当の受給にはその申請が必要であり、支給漏れがある場合に遡って受給することができるのは過去3か月分に限定されるところ、X1がこの通勤手当の受給申請をしておらず、かつ、X1の本訴請求に係る通勤手当が上記遡及可能期間を徒過していることは明らかである。これに対し、X1は、a支店においては、被告通勤手当支給規程を含む就業規則は、X1を含む労働者に周知されておらず、Y社通勤手当支給規程に定められた受給申請の手続をX1が履践していないことを理由に、Y社が通勤手当の支給を拒絶することは権利の濫用であり認められないなどと主張するが、Y社においては、少なくとも新入社員研修の際には、通勤手当の申請手続が説明されており、通勤手当制度の存在及びその受給のための手続が周知されていないということはできないし、Y社において、通勤手当について従業員に対し虚偽の事実を告げたり、通勤手当の申請を行わないよう不当な圧力を加えたりしたという事情も特段うかがわれないことを踏まえれば、X1に通勤手当を支給しなかったことを権利の濫用などということはできない
したがって、X1の通勤手当の請求は理由がない。

2 X2は、正社員等とアルバイトとの間で通勤手当の支給に関して相違を設けることは不合理であり、労働契約法20条に違反する旨主張し、主位的に雇用契約に基づく賃金として、予備的に不法行為に基づく損害賠償として、通勤手当ないしそれと同額の損害賠償を請求する。
この点について検討すると、同条が有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」と規定していることや、その趣旨が有期契約労働者の公正な処遇を図ることにあること等に照らせば、同条の規定は私法上の効力を有するものと解するのが相当であるが、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が同条に違反する場合であっても、同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当である。
そうすると、非正規従業員給与規程には、アルバイトに通勤手当を支給すると解釈する根拠となる規定がない以上、アルバイトであるX2に通勤手当を支給することが同人の労働契約の内容となるとはいえないから、その余の点を検討するまでもなく、X2の雇用契約に基づく賃金請求は認められない。

3 X2の予備的請求である、不法行為に基づく通勤手当と同額の損害賠償請求の可否について検討する。労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」とは、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が期間の定めの有無に関連して生じたものであることをいうものと解するのが相当であるところ、本件において、通勤手当に係る労働条件の相違は、正社員とアルバイトとでそれぞれ異なる就業規則(給与規程)が適用されることにより生じているものであることに鑑みれば、当該相違は期間の定めの有無に関連して生じたものであるということができる。したがって、正社員とアルバイトの通勤手当に関する労働条件は、同条にいう期間の定めがあることにより相違している場合に当たるということができる。
そして、Y社における通勤手当は、通勤に要する交通費を補填する趣旨で支給されるものと認められるところ、労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。また、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではない。その他、通勤手当に差異を設けることが不合理であるとの評価を妨げる事情もうかがわれない。
したがって、Y社における、正社員とアルバイトであるX2との間における通勤手当に係る労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当であり、このような通勤手当制度に基づく通勤手当の不支給は、X2に対する不法行為を構成する。

通勤手当については上記判断で落ち着いています。

まだ対応していない会社は顧問弁護士に相談しながら速やかに制度変更に着手してください。