Category Archives: 守秘義務・内部告発

守秘義務・内部通報10 障害福祉施設の従業員の内部通報を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、障害者福祉施設の従業員に、県や市への通報により施設の信用を損ねたとする解雇が無効とされた裁判例を見てみましょう。

兵庫県・川西市事件(神戸地裁令和2年12月3日・労経速2451号52頁)

【事案の概要】

甲事件は、Y社の運営する障害者福祉施設である「a施設」に勤務していたXが、Y社の理事長であるY2及び被用者であるY3から、XをY社から排除する意図のもとにセクシャルハラスメント及びパワーハラスメントを受けたほか、虚偽の事実を流布され名誉を棄損されたとして、Y2及びY3に対しては共同不法行為に基づく200万円の損害賠償の連帯支払及び名誉回復措置を、Y社に対しては安全配慮義務違反、代表者責任又は使用者責任に基づく同額の損害賠償の連帯支払及び名誉回復措置を求めるとともに、Y社がXを平成28年10月24日付けで解雇したことに関連し、県及び市がY社と共謀の上、Xに対し不当な取扱いを行ってY社と一体となって本件解雇を招来したとして、Y社、県及び市に対し不法行為又は国家賠償請求に基づく210万円の損害賠償の連帯支払を、被告県及び被告市が障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律18条に反する情報漏示を行ったことにより損害を受けたとして、県及び市に対し国家賠償請求に基づく50万円の損害賠償の連帯支払をそれぞれ求めた事案である。

乙事件は、本件解雇が防止法16条4項、公益通報者保護法3条に違反し、又は解雇権濫用により無効であるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、平成28年12月から本判決確定の日までの給与(月額17万7000円)と賞与(1回当たり34万4000円)の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
→バックペイ、付加金認容

Xのその余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇が防止法16条4項の解雇禁止に違反する旨のXの主張は、前提を欠くものであって採用することができない。

2 本件解雇が保護法3条3号の解雇禁止に違反する旨のXの主張は、前提を欠くものであって採用することができない。

3 本件解雇には客観的に合理的な理由があるとまでは認められない。

4 解雇は、労働者を職場から排除し、その生活の糧を奪うという効果をもたらすものであるから、これに至る過程で、十分な指導・注意、場合によっては懲戒処分などがなされ、それでも改善されない場合に検討されるべき手段である。しかし、上記のとおり、Y社は、Xが自説に固執していたことを考慮したとしても、Xに対する十分な指導・注意を行わず、法人内部での検討も経ないで本件解雇に至ったものである
したがって、本件解雇には、社会的相当性があるものとは認められない。

判例のポイント4では、解雇に関する一般的な注意事項が述べられています。

段階を踏むという意識を持てるかどうかが鍵となります。

解雇を行う場合には、必ず顧問弁護士に相談をしつつ、慎重に対応していきましょう。  

守秘義務・内部告発9 公益通報が不正であるとしてなされた懲戒処分が無効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、公益通報を不正としてなされた懲戒処分の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人國士舘ほか(戒告処分等)事件(東京地裁令和2年11月12日・労判1238号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y法人から雇用されてY法人の設置する大学の教授を務めていた際にY法人から戒告の懲戒処分を受けたXらが、Y法人に対して、①Xらに対する前記各懲戒処分がいずれも無効であると主張してその無効確認、②前記各懲戒処分が不法行為であると主張してそれぞれ不法行為に基づく損害賠償金220万円+遅延損害金の支払を求め、前記各懲戒処分の懲戒委員会の委員長を務めた被告Y2に対して、③被告Y2が前記各懲戒処分の懲戒事由の当事者であるのに同委員長を辞することなく、虚偽の事実を前提に懲戒を促す言動をして前記各懲戒処分に至らせたことが不法行為に当たると主張して、それぞれ損害賠償金110万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y法人が、Xらに対し平成30年3月27日付けで行った戒告処分がいずれも無効であることを確認する。

Y法人は、原告らに対し、各60万円+遅延損害金を支払え。

XらのY1に対するその余の請求及びY2に対する請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Y法人は、公益通報者が公益通報を行ったことを理由として、懲戒処分などの不利益処分をしてはならないと定める(本件公益通報規程11条1項)。同規程の公益通報は、Y法人の諸規定に違反する行為又はそのおそれのある行為を対象とするものであり(1条)、二重投稿は、Y法人が定める本件行動規範において研究者がしてはならない行為としたものであるから(1(1)ウ)、Y法人の諸規定に違反する行為又はそのおそれのある行為といえ、本件公益通報は、本件公益通報規程に基づく公益通報に当たる。
Y法人は、本件行動規範が平成26年に制定されたことから、それ以前の二重投稿は本件公益通報規程の対象ではない旨主張するが、本件行動規範は、その内容からして平成26年文科省ガイドライン及び日本学術会議報告を基づき制定されたものと認められるところ、これらの制定の前から、二重投稿が不正行為であると指摘されていたこと(1(1)ア)に照らせば、本件公益通報が通報対象とする平成22年より前の二重投稿も、「被告法人の諸規定に違反するおそれのある行為」に当たるから、本件公益通報規程の保護の対象外とはいえないものである。
Y法人は、本件出来事(1)~(3)が虚偽であると判断した上,本件出来事(1)~(3)が虚偽であるから本件公益通報は不正目的のものであり、保護の埒外にあると解釈して、本件公益通報書の記載を理由とする懲戒処分を行ったものである。本件公益通報の対象となったB教員の二重投稿問題に根拠がなく、これが真実ではないがゆえに本件公益通報が不正目的であるというなら格別、二重投稿の存否を検討することなく、本件公益通報に至った事情として記載された本件出来事(1)~(3)が虚偽であるから本件公益通報も不正目的であるとの判断は、根拠があるとはいい難い
したがって、本件各処分は、本件公益通報書の記載を理由としてXらに懲戒処分を行ったものであるから、本件公益通報規程11条1項に反しており、この点でも違法といえる。

使用者側の主張の意味は理解できますが、認識の誤りと判断されています。

公益通報を含む各種内部通報を理由に不利益な取扱いをすることは禁止されていますので細心の注意が必要です。

日頃から顧問弁護士に相談をする体制を整えておき、速やかに相談することにより敗訴リスクを軽減することが重要です。

守秘義務・内部告発8 公益通報をめぐる内部資料の持ち出しと懲戒処分(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、公益通報をめぐる内部資料の持ち出し等に対する懲戒処分の適法性に関する裁判例を見てみましょう。

京都市(児童相談所職員)事件(京都地裁令和元年8月8日・労判1217号67頁)

【事案の概要】

Y社の職員であるXは、京都市の児童相談所に勤務していた平成27年3月及び10月、京都市内の児童養護施設で起きたと疑われる被措置児童虐待の不祥事について、同児童相談所が適切な対応を採っていなかったとの認識を有したことから、これを問題視し、京都市の公益通報処理窓口に対して二度にわたり、いわゆる公益通報を行った。
Xは、同年12月4日、上記の各公益通報の前後の時期に行ったとされる各行為、すなわち、(1)勤務時間中に、上記虐待を受けたとされる児童とその妹の児童記録データ等を繰り返し閲覧した行為、(2)上記虐待を受けたとされる児童の妹の児童記録データを出力して複数枚複写し、そのうちの1枚を自宅へ持ち出した上に無断で廃棄した行為、(3)職場の新年会及び組合交渉の場で、上記虐待を受けたとされる児童の個人情報を含む内容を発言した行為について、地方公務員29条1項各号所定の事由に該当するものとして、京都市長から、停職3日の懲戒処分を受けた。

本件は、本件懲戒処分を不服とするXが、上記の各内部通報の前後の時期に行ったとされる上記各行為は、事実と異なる部分があることに加え、上記被措置児童虐待の不祥事に対する上記児童相談所の対応が不適切であるとの問題意識に基づき行った正当な行為として懲戒事由にそもそも該当しないと主張するほか、また、仮に懲戒事由に該当するとしても、Xによる上記各行為の目的の正当性や、本件懲戒処分が結論ありきで行われたこと、他の事例との比較において重きに失すること、手続の適正の欠如などを考慮すれば、京都市長が行った本件懲戒処分には裁量権を逸脱又は濫用した違法があるなどと主張して、本件懲戒処分の取消しを求める事案である。

【裁判所の判断】

停職3日の懲戒処分を取り消す。

【判例のポイント】

1 本件行為2の原因,動機,性質を検討するに,まず,本件行為2のうち本件複写記録の持ち出し行為については,原告は,1回目の内部通報の結果を受けて,その調査結果に個人的に不満を抱いたため,2回目の内部通報を行うこととし,その際にE弁護士に渡す本件児童の●の児童記録に係る複写文書1枚とともに,本件複写記録を自宅に保管したものといえる。このような経緯を経て行われた本件複写記録の持ち出し行為は,いわゆる公益通報を目的として行った2回目の内部通報に付随する形で行われたものであって,少なくとも原告にとっては,重要な証拠を手元に置いておくという証拠保全ないし自己防衛という重要な目的を有していたものであり,このほかに,本件複写記録に係る個人情報を外部に流出することなどの不当な動機,目的をもって行われた行為であるとまでは認められないのであるから,その原因や動機において,強く非難すべき点は見出し難い
 また,本件行為2のうち本件複写記録の自宅での廃棄行為については,F課長からの返却の指示があったにもかかわらず,原告がこれに従わず,安易に本件複写記録を自宅で廃棄したことそれ自体は,今後の情報漏えいの可能性が万に一つないようにするために持ち出した現物を返却させるという被告の正当な目的の実現を妨げた点からも,大いに非難されるべきものである。しかしながら,原告は,上記廃棄行為の翌日に自ら自宅で本件複写記録を廃棄したことを申告しているのであって,原告による上記廃棄行為について,証拠隠滅を図るなどの不当な動機や目的があったとは考え難い。そうすると,原告による本件複写記録の自宅での廃棄行為は,非常に軽率な行為として大いに非難されるべきものではあるが,その動機や目的において,殊更に悪質性が高いものであったとまではいえない

2 原告による本件複写記録の持ち出し行為は,飽くまで,本件虐待事案に対する原告の職務上の関心に起因して行われた性質の行為である。そして,原告は,本件複写記録を自宅で保管していたにすぎず,その保管状況は必ずしも明らかではないものの,自宅で保管していた本件複写記録が外部に流出した事実は認められず,同記録が外部の目に触れる状況ではなかったものと考えられることからすると,必ずしも情報漏えいの危険性の高い不適切な態様での保管状況であったとまではいい難い

3 本件行為2の結果,影響についてみるに,原告が自宅に持ち出した本件複写記録はシュレッダーで廃棄されており,結果としては,同記録が一般市民の目にする形で外部に流出することのないまま処分されたものである。そして,被告の保健福祉局の調査の結果によっても,●●議員による本件児童記録の情報の入手経路は明らかになっておらず,本件全証拠を検討しても,原告が自宅に持ち出した本件複写記録によって,本件児童の個人情報が●●議員に流出したことを認めるに足りる証拠はない。この点に関して,本件児童からは,原告による本件行為2を含む各行為について京都市児童相談所に対する信頼を損ねるものである旨の強い非難が寄せられていることは十分に考慮すべきであるとしても,原告による本件行為2によって,被告の児童福祉行政に対する信頼が回復不能なほどに大きく損なわれたとまでは認めることはできない。

4 原告の懲戒処分歴等についてみるに,原告にはこれまで懲戒処分歴は存在せず,かえって,原告は,FA制度で京都市児童相談所支援課に配属となった平成26年度の人事評価においては,いずれの評価項目も良好な評価を得ており,かつ,日頃の勤務態度についても,児童に対し得て熱心に対応しており,業務面においては特段の問題はないとの評価を得ていたものである。これに加え,原告は,本件行為2についても,基本的には,京都市児童相談所の職員としての職責を果たすべきとの自らの有する職業倫理に基づいて行ったものであるから,大いに軽率な面があったことを踏まえてもなお,上記の原告の懲戒処分歴や勤務態度といった事情は,酌むべき事情として考慮されるべきものといえる。

5 以上に加え,前記1で認定した事実経緯に照らすと,本件懲戒処分は,原告が主張,供述するような「結論ありきで行われた」あるいは「内部告発に対する報復」といった不当な目的ないし動機をもってされた処分であるとの評価はできないものの,本件懲戒指針では,情報セキュリティーポリシー違反の非違行為については戒告から免職まで処分量定の幅は広く規定されている中で,過去に非公開情報がインターネットを経由して外部から閲覧できる状態となり当該情報の拡散を招いた職員が停職10日の懲戒処分とされた懲戒事例との比較において,本件行為2を行った原告に対する懲戒処分として,本件複写記録の情報が拡散するまでには至らなかったにもかかわらず,停職3日とする本件懲戒処分を選択することは,重きに失するものといわざるを得ない
以上によれば,本件懲戒処分は,社会観念上著しく妥当を欠いて,その裁量権を逸脱又は濫用した違法がある。

処分がそれほど重くないため、評価権者によって判断が分かれる可能性があると思います。

懲戒処分の相当性判断は非常に悩ましいです。是非、顧問弁護士に相談しながらご判断ください。

守秘義務・内部告発7(甲社事件)

おはようございます。

今日は、内部告発等を理由とする懲戒解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

甲社事件(東京地裁平成27年11月11日・労経速2275号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社から懲戒解雇されたものの、当該解雇は無効であるとして、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに②Y社がXの就労を拒絶している期間である平成25年9月以降の労働契約に基づきY社がXに対し支払うべき賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・以上のとおり、懲戒事由①から③までの事実を認めることができ、これらの事由は、就業規則63条2号、4号及び5号に該当するところ、情状の程度に応じて懲戒解雇の処分を行うことができることになる。
そこで情状の程度について検討するに、懲戒事由③について、本件告発の主たる目的がXの私的な利益を図るものであったというべきことや本件告発の態様等に照らせば、労働者が負っている誠実義務に著しく違反するものと評価するべきであり、本件告発が契機となって、本件過剰請求が明らかになり、Y社による不適切なガソリン代金請求が是正されたことを十分斟酌しても、その情状は悪いというべきである
懲戒事由①について、Xは他の従業員に対して大声で怒鳴るなどの行為について譴責処分を受けたその日のうちに他の従業員に暴言を吐くなどしており、その発言内容も次第に過激なものになっていることからすれば、その情状は芳しくない。
懲戒事由②について、Xは、油外販売に取り組まない姿勢を示していたことについて上司から指導を受け、その際には反省の態度を示していたにもかかわらず、態度を改めることなく、別件未払賃金請求や本件告発に関連づけて、敢えて油外販売に取り組まない姿勢を継続していたことからすれば、単純な営業成績不良とは異なるものであって、その情状を軽く見ることはできない。

2 また、Y社は、本件懲戒解雇時、Xに弁明の機会を与えていたことなどを踏まえれば、本件懲戒解雇の手続は相当なものといえる。
以上の事情を総合考慮すれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、労働契約法15条に違反せず有効である。

本件内部告発については、告発目的の正当性、告発の態様・手段の相当性を否定しています。

X・Y社間には、未払賃金を巡る紛争があり、本件告発の目的は、当該未払賃金に関連する私的な利益を図る目的があったと認定されています。

非常に参考になる裁判例です。

やはり事前に顧問弁護士に相談することが敗訴リスクを大幅に軽減させますね。

守秘義務・内部告発6(レガシィ事件)

おはようございます。

今日は、情報漏洩行為に関する裁判例を見てみましょう。

レガシィ事件(東京地裁平成27年3月27日・労経速2246号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xらにおいて、Y社に対し、Y社がXらの業務上の機密を第三者に漏洩したとして、労働契約上の機密保持義務違反による債務不履行に基づく損害賠償として各々200万円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件においては、Xが、本件漏洩行為のうち本件持出行為を雇用期間中に行ったうえ、本件交付行為を退職後に行っていることから、就業規則の禁止規定が本件漏洩行為ないし本件交付行為に適用することができるものであるのか否かを検討する必要がある。
思うに、退職後に機密保持の内容となっている情報を不当に開示する目的で、雇用期間中に当該情報を勤務先から持ち出した場合、雇用期間中に就業規則違反という債務不履行行為に着手しているのであり、その後は、労働契約上の機密保持義務を負わないという点で身分ない自己を道具としてその目的を達しようとするものであると評価できることから、本件漏洩行為は、本件交付行為の部分も含めて、労働契約上の機密保持義務の適用を受けるものと解すべきである

2 漏洩とは、いまだその情報の内容を知らない第三者に情報を伝達することをいうところ、既にその情報を熟知する者に交付するものであっても、その者が提供した情報をさらにその情報の内容を知らない第三者に伝達することが当然に予定されているような場合には、漏洩したことになるというべきである。そして、公開の法廷で行われる訴訟に利用することを前提とした情報の提供も、その情報の内容を知らない第三者に伝達することが当然に予定されている場合として、漏洩に当たるものというのが相当である。したがって、本件交付行為は、本件漏洩行為の一部分を構成するものとして、Y者の就業規則31条4項に違反する債務不履行行為となる。

3 Y社は、代表取締役であるAにおいて、本来の税務・営業活動等に従事することができなくなった時間が生じ、その時間に別紙記載の各項目の業務を行うことができなくなって、利益を喪失したことを主張する。
・・・仮に何らかの必要な作業が主張に係る時間をかけて行われたものと措定するとしても、・・・そのように処理ができなくなった業務により具体的な因果関係をもって発生した逸失利益及びその数額を認めるに足りる証拠も全くない。・・・そうすると、Y社の損害を認定することができない

債務不履行を認定しましたが、損害が認定できないということで棄却されました。

損害の立証が難しいところですね。

日頃から顧問弁護士に相談をする体制を整えておき、速やかに相談することにより敗訴リスクを軽減することが重要です。

守秘義務・内部告発5(学校法人田中千代学園事件)

おはようございます。 

さて、今日は、マスコミに対する内部告発と懲戒解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人田中千代学園事件(東京地裁平成23年1月28日・労判1029号59頁)

【事案の概要】

Y社は、服飾の専門学校および短期大学を開設する学校法人である。

Xは、Y社の総務部総務課長であるが、Xは、週刊Pの記者に対し、内部告発をした結果、本件内部告発を掲載した週刊誌が発刊された。

これを受け、Y社は、Xを懲戒解雇した。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 本件のような内部告発事案においては、①内部告発事実(根幹的部分)が真実ないしはXが真実と信ずるにつき相当の理由があるか否か、②その目的が公益性を有しているか否か、③労働者が企業内で不正行為の是正に努力したものの改善されないなど手段・態様が目的達成のために必要かつ相当なものであるか否かなどを総合考慮して、当該内部告発が正当と認められる場合には、仮にその告発事実が誠実義務等を定めた就業規則の規定に違反する場合であっても、その違法性は阻却され、これを理由とする懲戒解雇は「客観的に合理的な理由」を欠くことになると解するのが相当である

2 内部告発一般の位置付けからみて、その目的の公益性が認められることが大原則とされるべきである。そうすると内部告発の目的として公益的要素とそれ以外の要素が併存する場合には、その主たる目的が公益的要素にあることが必要であると解するのが相当である。

3 Xは、専ら自らの身分すなわち本件雇用契約上の地位を保全する意図の下、Gらが行っている文科省OB役員の退陣運動に賛同し、これに乗じて、偶さか知り合いになった週刊Pの記者に対して、本件内部告発を行うに至ったものと認めるのが相当である。・・・結局、本件内部告発に上記目的の公益性は認められないものというべきである

4 労働者は雇用契約上使用者に対して上記誠実義務を負っているのであるから、まず企業内部において当該不正行為の是正に向け努力すべきであって、これをしないまま内部告発を行うことは、企業経営に打撃を与える行為として上記誠実義務違反の評価は免れない。

5 本件内部告発先の週刊Pの記者は、本件内部告発事実についてXから実名報道の了解を得ただけで、Y社に対する反対取材を全く行わないまま本件週刊誌を発刊しており、このような報道姿勢は極めて誤報を生む危険性の高いものである。そうだとすると以上のような取材手法に基づき本件各記事を本件週刊誌上に執筆した上記週刊Pの記者ないしは同誌の公刊元は、少なくとも本件に関する限り、公通保護法所定の外部通報先には当たらない
よって、本件懲戒解雇に公通保護法3条の適用があるとするXの上記主張は失当ないし理由がなく、採用することはできない。

規範部分が明確に示されているため、参考になります。

内部告発、公益通報に関する問題は、顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

守秘義務・内部告発4(Yタクシー会社(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、内部告発に関する裁判例を見てみましょう。

Yタクシー会社(雇止め)事件(京都地裁平成19年10月30日・労判955号47頁)

【事案の概要】

Y社は、タクシー会社である。

Xは、Y社に入社し、Y社のA営業所に勤務していた。

XとY社は、嘱託労働契約書をもって、契約期間を1年間とする有期雇用契約を締結した。

Xは、Y社労働組合A支部からA営業所内における従業員およびA営業所所長の白タク営業、メーターの不正操作、営業日誌ねつ造等の疑惑がある旨記載されている文書を入手し、労働組合全支部長、Y社代表へ、真相解明および問題の解決を求める書面を作成し、送付した。

その後、Xは、警察署に対し、白タク行為を把握した旨申告した。

組合は、Xが問題として指摘した点については、問題解決に向け、支部労使会を開催することで対処する旨が決定されていたのに、制裁処分として、Xに対し戒告および罰金を課した。

所長は、Xに対し、雇止めにする旨を通告した。

この際、所長は、有期労働契約の期間が経過したという理由を述べただけで、なぜ更新しないのかについては理由を説明しなかった。

Xは、雇止めは無効であるとして、地位保全等仮処分を申し立てた。

【裁判所の判断】

雇止めは、無効であり、地位保全および賃金仮処分の必要性を認めた。

【判例のポイント】

1 Y社就業規則には、組合によって制裁を受けた者を再雇用しない旨が規定されているが、こうした規定に基づいて使用者が組合に対して雇止めをすべき義務負うのは、組合による処分が有効な場合に限られ、当該処分が無効と解される場合には使用者は雇止めをすべき義務を負わない。

2 使用者が労働組合に対する義務の履行として行う雇止めは、雇止めの義務が発生している場合に限り、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものとして是認できるのであって、処分が無効な場合には、他に解雇の合理性を基礎づける特段の事情がない限り、解雇権の濫用として無効であり、このことは、Y社就業規則が、所定の基準に該当している場合であっても、状況に応じては再雇用をする場合がある旨規定していることからも明らかである。

3 公益通報者保護法が制定された趣旨にかんがみても、Xの行動は組合による処分に相当するものとは評価すべきではなく、ユニオン当該行動が、組合が告発等をしない方向性を打ち出している状況の下で告発等をしたという意味で、形式的には権限を越えて行動した場合に該当するとはいえても、本件統制処分は、もともとの問題行動への関与者を処分せずに、これを指摘したXのみを処分するものとして不平等であり、著しく裁量を濫用したものとして無効といわざるを得ない。

本来は、有期雇用における雇止めの問題です。

この裁判例は、内部告発に関する問題以外にも、たくさんの重要な問題が含まれています。

上記判例のポイント2は、重要です。

この点は、ユニオンショップ協定に基づく解雇の効力に関する日本食塩製造事件(最高裁昭和50年4月25日・労判227号32頁)と同様の判断です。

なお、ユニオンショップとは、使用者が労働協約において自己の雇用する労働者のうち当該労働組合に加入しない者、および当該労働組合の組合員ではなくなった者を解雇する義務を負う制度です。

その他、使用者が、雇止めの意思表示の際に明示していなかった理由を訴訟上主張することは許されるが、雇止めが懲戒解雇事由の存在を根拠として、実質的に懲戒解雇の趣旨でなされた場合においては、懲戒解雇事由以外の普通解雇事由に該当するにすぎないような解雇理由を主張することは許されない、という点も参考になります。

この点は、山口観光事件(最一小判平成8年9月26日・労判708号31頁)と同様の判断です。

同事件は、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠づけることはできないと判断したものです。

懲戒解雇をはじめとする懲戒処分を行う際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることを習慣にしましょう。

守秘義務・内部告発3(骨髄移植推進財団事件)

おはようございます。

さて、今日は、内部告発に関する裁判例を見てみましょう。

骨髄移植推進財団事件(東京地裁平成21年6月12日・労判991号64頁)

【事案の概要】

Y財団は、骨髄移植の仲介事業を行い、骨髄移植を推進するために設立許可を受けた財団である。

Xは、Y財団の総務部長の地位にあり、事務局長を補佐し事務局の運営を統括する立場にあった。

Xは、Y財団代表者である理事長に対し、A常務理事のパワハラ、セクハラとも言える言動により、体調を崩したり退職を考慮する職員も出てきており、事務局運営に障害が発生しないよう早急に改善措置を講ずることを要望するなどと記載された報告書を提出した。

その後、Y財団はXに対し、総務部長の職を解き、システム改善担当参事に異動を命じる(本件降格人事)旨の内示を行った。

この内示に納得ができなかったXは、理事長に再考を促し面談を求めるファックスを送信し、Y財団の常務理事らにも人事異動の凍結を求める要請をするなどし、Xの支持者である職員やボランティア団体の幹部らも、Y財団や厚労省幹部に人事異動の凍結を求める働きかけをした。また、新聞に「骨髄バンク”迷走”」、「骨髄バンクセクハラ 厚労省に調査要請へ」といった見出しの記事が掲載された。

その後、Y財団では、内部調査委員会及び外部調査委員会による調査を経て、セクハラ、パワハラに当たる事実があったとは認められないとの結果を発表した。

Y財団は、Xに対して諭旨解雇を通告し、Xが自主退職に応じなかったため、Xを解雇した。

解雇理由は、(1)報告書の報告内容に事実に反する虚偽の部分があると判断されたこと、および報告書が内部告発文書の枠を超えて、個人に対する誹謗中傷文書ともいえる内容となっていること、(2)報告書について十分な情報管理が行われず、結果的には新聞報道にも発展して、財団の社会的信用を著しく損なわせるととともに財団内部に混乱をもたらし、財団の運営に重大な支障を生じさせたこと、(3)人事の内示を外部に漏らして人事凍結の働きかけを行ったこと、業務懈怠により財団の信用を損なったこと、上司の指示に従わず、会議の場で暴言を吐いたことである。

Xは、本件解雇の不当性を主張し、提訴した。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効。

【判例のポイント】

1 Y財団において、A常務理事の不適切な言動について改善措置を求める旨の報告書を作成し理事長に提出したXのに対し、総務部長解任の後、懲戒処分としての諭旨解雇がなされた件につき、常務理事に、真実、パワハラ、セクハラとも解される問題行動があるのであれば、これをY財団の理事長に伝え是正を図ること自体は、総務部長の職責というべきものであり、かえってこれを認識しながら放置し、適切な措置をとることを阻害した場合には、そのことが総務部長の任務懈怠として問責されることもありうる。

2 本件報告書提出は内部告発そのものではないが、Xが総務部長の職責として報告をした場合であっても、事実でない事柄を、不当な目的で、不相応な方法で行うものであれば、違法なものとなり懲戒事由ともなりうるから、本件においては、X主張の内部告発の適法性の判断要素(1)内部告発の真実性、2)目的の正当性、3)手段・方法の相当性)から検討するのが相当である。

3 内部告発の真実性については、本件報告書のような文書を提出する場合には、慎重な配慮が必要ではあるものの、その内容中に客観的事実と一致していない部分があるとしても、それゆえに当該報告書提出が直ちに違法であって懲戒事由に該当するということはできないとして検討がなされ、報告書は、基本的に真実性のある文書と評価できる。

4 目的の正当性、手段・方法の相当性についても違法性は認められず、Xによる本件報告書提出は、懲戒事由に該当しない。

5 報告書に記載された内容は、パワハラやセクハラに関するものであり、とりわけセクハラに関する情報はプライバシーに深く関わる情報であって、細心の注意を払う必要のあるものといえるところ、Xはかかる情報を収集し管理する総務部長として、当該情報の外部漏出がないようにすることはもちろん、Y財団内部においても、必要な範囲に当該情報が保持されるように努める義務(情報管理義務)を負っていた。

6 Xにおいては、上記情報管理義務に基づいて、報告書記載の情報が、本来、保持されるべき範囲内にとどまるように慎重な配慮をすることが求められていたところ、その具体的な情報管理の方法としては、単に報告書の写しを第三者に交付しなければよいというものではなく、第三者に報告書の写しを閲読をさせたり、その内容を口頭で告げたりすることも、当該義務に違反した行為となる。

7 本件事実に照らすと、Xは上記義務に反して、本来、情報を保持すべきでない多数の者に報告書記載の情報を伝達していたといわざるを得ず、また、少なくともXの情報管理の不十分さによって本件各新聞報道に至ったものといえ、この点につきXには懲戒事由に該当須する事実が認められるが、他方、Y財団は、基本的に真実性のある報告書を無視し、的確な調査を行わないまま、Xに対し降格人事を行おうとしたのであり、XがY財団への対抗措置として外部への働きかけを強めていった結果、当該各報道に至ったともいえ、Xの本件情報管理義務違反およびそれによるY財団内部の混乱等については、Y財団にも責任の一端はあり、これらを総合考慮すれば、Xの情報管理義務違反を理由として本件解雇をすることは重きに失する

内部告発そのものではないですが、同様の判断基準に基づき判断されています。

内部告発の正当性が認められ、懲戒解雇は無効となりました。

会社としては、参考にすべき点が非常に多いと思います。

日頃から顧問弁護士に相談をしながら、1つ1つ慎重に対応することが大切ですね。

守秘義務・内部告発2(大阪いずみ市民生協(内部告発)事件)

おはようございます。

さて、今日は、内部告発に関する裁判例を見てみましょう。

大阪いずみ市民生協(内部告発)事件(大阪地裁堺支部平成15年6月18日・労判855号22頁)

【事案の概要】

Y社は、消費生活協同組合法に基づき設立された生活協同組合である。

Xらは、いずれもY社の職員であり、役員室室長や総務部次長、共同購入運営部次長の地位にあった。

Xらは、Y社の役員がY社を私物化する背信行為をしているとして摘発行為を行い、組合員の総代会の総代ら500人以上に「組合員への背信行為の実態」等と題する告発文書を匿名で送付した。

Y社は、Xらを出勤停止、自宅待機としたうえで、配転や懲戒解雇等を命じた。

Xらは、懲戒解雇を無効として地位保全の仮処分を申請し、認容されたため、解雇は撤回され職場復帰した。

Xらは、Y社及びY社役員に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をしたが、Y社とは和解が成立し、その後取り下げた。

【裁判所の判断】

内部告発は正当なものである。

Y社の損害賠償責任を認めた。

【判例のポイント】

1 内部告発の内容の根幹的部分が真実ないしは内部告発者において真実と信じるについて相当な理由があるか、内部告発の目的が公益性を有するか、内部告発の内容自体の当該組織体等にとっての重要性、内部告発の手段・方法の相当性等を総合的に考慮して、当該内部告発が正当と認められた場合には、当該組織体等としては、内部告発者に対し、当該内部告発により、仮に名誉、信用等を毀損されたとしても、これを理由として懲戒解雇をすることは許されないものと解するのが相当である。

2 本件内部告発文書等に記載の事項の真実性等については、真実であるか、Xらにおいて真実であると信じるについて相当な理由があるというべきである。

3 本件内部告発の目的については、専ら公共性の高いY社における不正の打破や運営等の改善にあったものと推認され、極めて正当なものであった。

4 本件内部告発の方法・手段については、本件内部告発文書等が匿名の文書である点については、告発された側が告発内容の真偽の確認が困難である場合がありうるが、Y社の最高実力者およびこれに次ぐ地位にある者に対し、公私混同や私物化を問題とするものであり、氏名を明らかにして告発を行えば、役員らによる弾圧や処分を受けることは容易に想像され、匿名による告発もやむを得なかった
次に、総代会の直前になって総代等に対して郵送されたことで総代会が混乱する危険があったことは否定し難いが、総代会は最高議決機関であるから、業務執行権を有する役員らに期待できない場合、総代会に問題提起するのはむしろ当然であり、この点が相当性を欠くとはいえない。そして、最高責任者の不正行為を正すためには多少の混乱は避けがたいのであり、そうであっても内部告発により不正が正されればY社にとって内部告発がなされない場合よりも遥かに大きな利益をもたらすべきものであるから、多少の混乱を伴うべきことをもってその手段、方法を不相当とはいえない

5 もっとも、内部告発の内容について多少不正確な部分があり、また表現が誇張されていること、刑事告発については不起訴にされているという問題点がなくはないが、本件内部告発が重要な事実を含み、概ね真実と信じるべき根拠があって、その内容自体Y社にとって看過すべからざる問題ばかりを取り上げているのであるから、全体として不相当なものとはいえない

6 また、Xらが業務中にY社内部の資料を他の職員の私物からを含め無断で持ち出し、これをもとに本件内部告発が行われているが、場合により個別の行為について何らかの処分に問われることは格別、本件内部告発全体が直ちに不相当なものになると解すべきではなく、本件内部告発の目的や内容、手段等を総合的に判断して正当かどうかを判断すべきである。本件で無断で複写して持ち出した点は、内部告発のためには不可欠である一方、持ち出した文書の財産的価値自体はさほど高いものではなく、しかも原本を取得するものではないので、Y社に直ちに被害を及ぼすものではない。したがって、Y社を害する目的で用いたり、不用意にその内容を漏洩したりしない限りは、本件内部告発自体を不相当とまではいえないものと解するべきである。

この裁判例では、内部告発の正当性の判断基準が詳細に示されています。

裁判所は、Y社役員によう生協施設の恣意的利用、女子職員へのセクハラ行為、ゴルフ会員権、ハワイコンドミニアム利用等による私物化、公私混同、背任、横領の疑惑(税務調査が行われた)等の事実が真実または真実と信じるに足りるものと判断しました。

また、Xらによる内部告発後の効果として、私物化が阻止され、生協運営に一定の改善があったことも考慮されています。

非常に参考になりますね。

日頃から顧問弁護士に相談をしながら、労務管理を進めていくことがとても大切です。

守秘義務・内部告発1(カテリーナビルディング事件)

おはようございます。

さて、今日は、内部告発と懲戒処分に関する裁判例を見てみましょう。

カテリーナビルディング事件(東京地裁平成15年7月7日・労判862号78頁)

【事案の概要】

Y社は、建築請負工事、不動産の売買、賃貸および仲介、有料老人ホームの経営などを業とするA社の子会社である。

Xは、Y社に採用され、A社に出向し、以後、A社の建設部に所属していた。

Y社は、(1)Xが会社の仕事をせずに無断外出を繰り返したり、(2)就業時間中にカラオケ店でカラオケの練習をする等の勤務怠慢があったこと、(3)XがA社の専務取締役からの指示・命令を無視したり、社長に同人の悪口を言ったこと、(4)監査法人や日本証券協会に対し、A社の上場承認を妨害する目的で、A社を誹謗中傷する発言をしたり、(5)文章を交付・送付したこと、(6)日報への虚偽記載、(7)無断早退、(8)同僚に対する不適切な発言、(9)週刊誌などにA社を誹謗中傷する記事を掲載するよう依頼したこと等を理由に、Xに対し、解雇する旨の意思表示をした。

さらに、Y社は、弁論準備期日において、(10)XがA社の監査法人の公認会計士に対し、A社の上場承認を妨害する目的でA社を誹謗中傷したことおよび(11)恐喝未遂を理由に、Xを懲戒解雇する旨の意思表示をした。

これに対し、Xは、Y社が主張するような事実はなく、Y社はXが労基署にA社の労基法違反の事実を申告したことに対する報復として解雇したものであり、労基法104条2項に違反し無効であるとして、地位確認、賃金と賞与の支払いを求めるとともに、慰謝料請求をした。

【裁判所の判断】

本件解雇は無効。

慰謝料請求については棄却。

【判例のポイント】

1 解雇事由のうち(2)、(3)、(4)、(5)、(10)を認めたうえで、(2)については勤務怠慢の程度はさほど重大なものではなく、また(3)については、Xの発言はA社の業務改善を図るためにしたもので、その動機・目的は不当とはいえず、Xも反省の態度を示していることから、解雇の理由とするのは相当ではない。

2 解雇事由(4)、(5)、(10)について、Xの行為は企業秩序維持の観点からも問題があるが、(ア)Xは、当時新宿労政事務所や新宿労基署に労働条件の相談や調査を申し入れており、監査法人に対する文書の交付または送付行為は、このような行為の一環として行われていたものであること、(イ)A社はその後、労基署の調査を受け、従業員の労働時間や管理の方法や時間外賃金の支払いについて改善指導を受けたことを合わせると、Xの行為は労基法の遵守や労働条件の改善を目的としたものと認められ、その方法、態様が相当とはいえないことを考慮しても、相応の合理性を有するものと認められるのであり、本件各解雇は、客観的合理的理由を欠き社会通念上相当として是認することはできず、解雇権を濫用したものとして無効である。

3 本件各解雇につき、Y社は、Xに対し、不法行為責任を負うが、一般に、解雇された労働者が被る精神的苦痛は、解雇期間中の賃金が支払われることにより慰謝されるというべきであり、本件において解雇無効および賃金の支払いを命じる以上、本件各解雇によるXの精神的苦痛は填補される。

内部告発と解雇の問題は、どうしても感情的に判断してしまいがちです。

日頃から顧問弁護士に相談し、慎重に対応することが求められます。