守秘義務・内部告発7(甲社事件)

おはようございます。

今日は、内部告発等を理由とする懲戒解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

甲社事件(東京地裁平成27年11月11日・労経速2275号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社から懲戒解雇されたものの、当該解雇は無効であるとして、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに②Y社がXの就労を拒絶している期間である平成25年9月以降の労働契約に基づきY社がXに対し支払うべき賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・以上のとおり、懲戒事由①から③までの事実を認めることができ、これらの事由は、就業規則63条2号、4号及び5号に該当するところ、情状の程度に応じて懲戒解雇の処分を行うことができることになる。
そこで情状の程度について検討するに、懲戒事由③について、本件告発の主たる目的がXの私的な利益を図るものであったというべきことや本件告発の態様等に照らせば、労働者が負っている誠実義務に著しく違反するものと評価するべきであり、本件告発が契機となって、本件過剰請求が明らかになり、Y社による不適切なガソリン代金請求が是正されたことを十分斟酌しても、その情状は悪いというべきである
懲戒事由①について、Xは他の従業員に対して大声で怒鳴るなどの行為について譴責処分を受けたその日のうちに他の従業員に暴言を吐くなどしており、その発言内容も次第に過激なものになっていることからすれば、その情状は芳しくない。
懲戒事由②について、Xは、油外販売に取り組まない姿勢を示していたことについて上司から指導を受け、その際には反省の態度を示していたにもかかわらず、態度を改めることなく、別件未払賃金請求や本件告発に関連づけて、敢えて油外販売に取り組まない姿勢を継続していたことからすれば、単純な営業成績不良とは異なるものであって、その情状を軽く見ることはできない。

2 また、Y社は、本件懲戒解雇時、Xに弁明の機会を与えていたことなどを踏まえれば、本件懲戒解雇の手続は相当なものといえる。
以上の事情を総合考慮すれば、本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから、労働契約法15条に違反せず有効である。

本件内部告発については、告発目的の正当性、告発の態様・手段の相当性を否定しています。

X・Y社間には、未払賃金を巡る紛争があり、本件告発の目的は、当該未払賃金に関連する私的な利益を図る目的があったと認定されています。

非常に参考になる裁判例です。

やはり事前に顧問弁護士に相談することが敗訴リスクを大幅に軽減させますね。