おはようございます。
今日は、Y社に労働契約法の潜脱の意図を有していたとは認められず、雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。
ラボ国際交流センター事件(東京地裁平成28年2月19日・労経速2278号18頁)
【事案の概要】
本件は、Y社の有期雇用職員であったXが、平成26年3月31日をもってY社に雇止めされたところ、Xは、Y社に対し、同雇止めの無効を主張して、地位確認、賃金請求及び損害賠償請求をする事案である。
【裁判所の判断】
請求棄却
【判例のポイント】
1 契約更新手続が極めて形式的なものであったとは認められず、かえって、毎期毎にXY社間で新たな労働条件での契約更新がなされてきたものと認められることから、期間の定めが形骸化していたとは認められない。また、Xは、「なぜこれだけやっているのにあなたは社員ではないの?」と質問されるとのことであるから、「社会通念上」Y社の正社員と同視できる状況にあったとも認められない。よって、XY社間の雇用契約が、同条1号における期間の定めのない労働契約と社会通念上同視できるとは認められない。
もっとも、本件は「当該有期雇用契約が更新されることについて合理的な理由がある」(労働契約法19条2号)ものと認められる。
2 Xは、担当業務の遂行能力には秀でたものがあったと思われるが、Y社の他の職員との協調性には問題が認められる。また、仕事を1人で抱え込む状態が長期間継続すると、何らかの問題がXの担当業務に発生したときに、Y社全体として責任をもって適切に対処することが困難となる弊害がある。そして、Y社の事業運営上の問題点に鑑みれば、Y社の事業運営上もXによる専任体制を維持することが困難となっていたことは明らかであり、Y社において、XY社間の雇用契約の見直しを迫られたことにはやむを得ない事情があったというべきである。
3 なお、本件は労働契約法19条2号の事案であり、同条1号における「期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できる」ものでもないのであるから、解雇(同法16条)における判断と同程度の厳格な判断を求められるわけではない。
4 なお、Xは、本件雇止めは、労働契約法18条・19条を潜脱する意図で実施されたと主張し、これに沿う証拠として、C氏のメールを提出する。同メールには、「新労働契約法の施行が今年4月1日。1年間雇用し、1回更新すると、労働者に、無期雇用の期待が生まれるため、本来は、来年3月で雇止めをするのが、組織運営上は望ましい。」、「こうした確約をとらずに、2015年3月末を迎え、その時になって、私には無期雇用の権利があると主張されるとかなりやっかいなことになるので」との記載がある。
・・・C氏のメールは、C氏の個人的意見の域を超えず、Y社組織全体としての意見とは認められない。
・・・そうすると、Y社が労働契約法の潜脱の意図を有していたとは認められず、Xの当該主張は採用できない。
2号事案です。
多くの場合、この2号事案ですが、上記判例のポイント3は、使用者側・労働者側ともに理解した上で主張立証をすることが求められます。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。