Daily Archives: 2016年7月13日

不当労働行為144(国立大学法人福岡教育大学事件)

おはようございます。

今日は、組合員である教員に対する任用差別に関する命令を見てみましょう。

国立大学法人福岡教育大学事件(福岡県労委平成28年1月29日・労判1134号92頁)

【事案の概要】

本件は、①組合のビラ配布活動に参加したことを理由に組合員を大学院教育学研究科長に任命しなかったことが不当労働行為にあたるか、②未払賃金請求訴訟の原告となっていることを理由に組合員を教育研究評議会評議員に指名しなかったことが不当労働行為にあたるか、が争われた事案である。

【労働委員会の判断】

①、②ともに不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 本件ビラ配布の目的を検討すると、本件ビラは、組合が、25年11月の学長選考が教職員の意向投票とは異なる結果となったこと及びその理由が明らかにされていないことについて、大学の自治や民主的運営上問題があるとして、組合が学長選考会議の再審議を法人に求めていることを外部に説明するとともに、そのような組合の活動への支援を呼びかけるものである。
学長選考は、組合員の労働条件に直接関わるものではないが、・・・間接的ではあっても、そこで働く教職員の労働条件にも影響を及ぼすことがあると考えられることという諸事情を考え合わせると、本件ビラ配布活動は、大学の教職員で組織される労働組合の正当な活動の範囲内であると考えられる
・・・以上のように、法人がA教授を研究科長に任命しなかったことは、同人の正当な組合活動を理由としてなされた「不利益な取扱い」であり、労組法7条1号の不当労働行為に該当する。

2 Bら4名は、提訴時の組合執行委員長と書記長並びにその前任の執行委員長と書記長といういずれも組合の重要な役職にある者であり、訴訟の対象が賃金の減額という基本的な労働条件に関わるものであることからすると、本件訴訟の提起は、組合の重点活動として行われたものと認められる
また、組合が、労働条件の維持改善を図るため、訴訟などの法的手段を利用することは、組合活動として特に問題はない。
・・・以上を併せ考慮すると、法人は、B書記長が書記長という重要な地位にあり、正当な組合活動を行ったことを理由として評議員に指名しないという「不利益な取扱い」を行ったものといわざるを得ない。
以上のとおり、法人によるB書記長に対する評議員の指名拒否は、同人の正当な組合活動を理由としてなされた不利益取扱いであり、労組法7条1号に該当する不当労働行為である。

労働条件に直接関わることでなくても、それだけ義務的団交事項から除外されると考えるのは危険です。

義務的団交事項については、使用者が考えるよりも広く解釈される傾向にありますので、注意しましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。