Daily Archives: 2016年7月11日

有期労働契約66(学究社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、雇用契約が更新されることについて合理的期待があったとは認められなかった裁判例を見てみましょう。

学究社事件(東京地裁平成28年1月19日・労経速2275号24頁)

【事案の概要】

本件は、60歳の定年後、嘱託社員としてY社に継続雇用されていたXが、再雇用満了年齢(満65歳)に達した日の翌日である平成26年11月8日から同月30日までの再雇用契約の更新を拒絶されたことについて、就業規則等では再雇用満了年齢に達した年月の月末までが再雇用期間とされているから、同月30日まで再雇用契約が更新されることについて合理的期待があったなどと主張して、Y社に対し、再雇用契約に基づき、同月8日から同月30日までの給与13万0908円+遅延損害金、併せて、この再雇用契約の更新拒絶が不法行為を構成すると主張して、慰謝料10万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの携わっていた業務は教務事務(教材の作成・編集)であり、これは必ずしも臨時的な業務ではないものの、継続性が強く必要とされる業務内容であったと認めるべき証拠もない
従前の事実経過をみると、更新への期待を生じさせるような言動がY社側にあったとは認められず、本件雇用契約の契約期間中には、Y社は、Xとユニオンに対し、同契約に係る契約書に明記された平成26年11月7日をもって1年間の再雇用期間(契約期間)は満了し、それ以降の更新はしない旨を伝えていた経緯がある

2 Xは、本件雇用契約にY社の「定年後再雇用規程」が適用される旨主張するが、仮にY社の「定年後再雇用規程」が適用されるとしても、Xの再雇用期間が平成26年11月30日までとなるわけではなく、再雇用期間(契約期間)は原則として1年単位で、1年未満の再雇用期間(契約期間)は例外であるのに対し、Xのように、1か月未満という極めて短い再雇用期間(契約期間)を予定して定年後再雇用期間を更新する必要があるという事態は考え難く、実際に、Y社においてそのような事例があったとは認められない

3 これらの事情を併せ考えると、本件雇用契約の更新について合理的期待があった旨のXの主張は理由がないというべきである。
したがって、Xに本件雇用契約が更新されることについて合理的期待があったとは認められない。

業務内容の非継続性を1つの理由として判断されています。

また、更新への期待を生じさせる言動についても認定されていないため、請求が棄却されています。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。