Monthly Archives: 6月 2016

本の紹介569 人と比べないで生きていけ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
人と比べないで生きていけ

あいかわらず千田さんの本を片っ端から読んでいます。

今回のタイトルで本一冊書くのはとても真似できません。

どんなタイトルでも1冊分書くことができる著者は本当にすごいと思いました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

美しい女優さんやイケメン俳優の名前を検索エンジンに打ち込むと、ずらっと検索予測が表示される。そこに並ぶ言葉を見れば、底辺層の嫉妬心が渦巻いているのがよくわかる。他人に興味津々のうちは、成功者には程遠いと考えて間違いない。成功者というのは、他人ではなく、自分自身に興味津々なのだから。」(39頁)

他人のうわさ話をしているうちは成功しない、ということはよく千田さんがいろんな本で書いていることです。

他人の失敗を喜び、再起不能になるまで徹底的に叩く、という寛容のかけらもない嫌な世の中だからこそ、あえてそういうことには近づかない。

居酒屋で周りと一緒になって、他人の批判で盛り上がらない。

悪口や批判で盛り上がっているところには負のオーラが漂っているから、できるだけ距離を置く。

そういう習慣を身につけると、人生がいい方向に変わるのではないでしょうか。

解雇207(学校法人杉森学園事件)

おはようございます。

今日は、勤怠不良等を理由とする整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人杉森学園事件(福岡地裁平成27年7月29日・労判1132号76頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の設置・運営するY高校におけるA科の教諭としてY社に雇用されていたXが、Y社に対し、Y社が平成25年3月31日付でXに対してした整理解雇は無効であると主張して、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②本件解雇後の賃金+遅延損害金の支払いを求めるとともに、③本件解雇はXに対する不法行為に当たると主張して、民法709条に基づき損害賠償金合計330万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効→賃金支払

不法行為に基づく損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 平成25年3月末時点におけるY社の経営状態は、不採算部門の廃止等を通じた経営合理化が図られるべき状況にはあったものの、整理解雇による人件費削減等をしない限り、直ちに経営破たんに陥ってしまうような危機的状況にあったとまではいうことができない。このような状況の下における整理解雇が正当化されるためには、相応の解雇回避措置が尽くされていなければならないというべきである。

2 Y社の採り得る解雇回避措置として、新規採用の停止、従業員の賃金の減額及び希望退職者の募集等の措置を挙げることができるところ、従業員の賃金の減額については、団体交渉の場において本件組合側からの提案がされており、また、希望退職者の募集については、本件解雇の後である平成25年7月にA科を含む複数の教科の教員について行われているにもかかわらず、Y社は、本件解雇前には、これらの措置を一切講じていない
Y社は、本件解雇に先立ち、一定程度の人件費削減を行い、また、Xに対して、退職金の割増しを条件とする退職勧奨もしているが、本件解雇の当時におけるY社の経営状態に鑑みれば、本件解雇が正当化されるためには、これらに止まらず、本件解雇に先立って、希望退職者募集等の相応の解雇回避措置が尽くされていなければならないというべきであるところ、本件において、Y社が十分な解雇回避措置を尽くしたと評価することはできない。

整理解雇の必要性が高くない状況においては、解雇回避努力の程度についてかなり厳しく見られることになります。

過去の判例を検討し、どの程度、解雇回避措置を講ずればよいのかを十分に検討する必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介568  自分を動かす名言(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
佐藤優 選 ― 自分を動かす名言

佐藤優さんの本です。

さまざまな名言が収められています。

たった1つでも自分を動かす名言に出会えれば、それだけで十分です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

われわれは自らが繰り返して行うことの産物である。したがって優秀とは行為ではなく習慣である。」(アリストテレス)(144頁)

事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。」(ニーチェ)(156頁)

習慣と解釈に関する言葉です。

いずれの言葉を目新しいものではありませんが、重要だと思うので選びました。

人生を変えたければ、日々の習慣を変えることです。

事実や出来事自体に意味はありません。事実は事実、出来事は出来事です。

その事実や出来事に意味を与える自分がいるだけです。

起こった事実や出来事を変えることはできませんが、その事実や出来事に対する解釈を変えることはいくらでもできます。

事実や出来事それ自体にプラスもマイナスもありません。

事実や出来事にプラス・マイナスの解釈をする自分がいるだけです。

解釈を変えれば人生が変わるというのは真実だと思います。

競業避止義務19(第一紙業事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、競業避止義務違反を理由とする元従業員への損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

第一紙業事件(東京地裁平成28年1月15日・労経速2276号12頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Y社の従業員であるAにおいて、Y社が実施した早期退職制度に応募して退職した後に、在職中及び退職後の競業避止義務に違反して競業行為を行ったことが発覚したと主張し、Aが在職中に競業行為を行い、あるいは退職後に競業行為を行う意図があることをY社に秘匿して退職給付を受けたことが不法行為に当たると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、退職給付相当額及び弁護士費用の損害金+遅延損害金の支払を求めるとともに、選択的に、Aが在職中及び退職後に競業行為を行うという早期退職制度の適用除外事由又はY社の退職金規程上の不支給事由があるにもかかわらず退職給付を受けたことが不当利得に当たると主張して、不当利得に基づく利得金返還請求権に基づき、退職給付相当額等の利得金及び利息の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

AはY社に対し、1157万1805円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社就業規則18条9号のうち在職中の競業避止義務を定める部分は、雇用契約に付随する義務としてその合理性が認められるから有効である。・・・他方で、Y社就業規則18条9号のうち退職後の競業避止義務を定める部分及び本件競業避止義務条項の効力を判断するに際しては、①使用者の利益(競業制限の目的)、②退職者の従前の地位、③競業制限範囲の妥当性、④代償措置の有無、内容から検討すべきである。

2 ・・・Y社は、本件商品に関する技術上の秘密、ノウハウ等を維持することを目的として、Aに対して退職後の競業避止義務を課したものと認められ、そのようなY社の利益(競業制限の目的)は、保護されるべきものであるといえる(①)。
また、AがY社における特命担当として、本件商品の開発に従事し、本件商品に関する技術上の秘密、ノウハウ等を最もよく知る立場にあり、相応の営業能力を備えていたことが認められることからすると、上記のY社の利益を保護するために、Aに対し退職後の競業避止義務を課す必要が高いものであったというべきである(②)。
そして、同条項において、競業行為が「機密情報や業務上知り得た特別な知識を利用した競業的行為」と一応限定されていることが認められ、その他の範囲についても合理的に限定し得るものであり(③)、本件早期退職制度の適用を受けたAに対し、同制度に基づき、通常退職金に加えて、割増退職金の支払等3000万円余りの優遇措置が付与されたことが認められ、Aに付与された優遇措置には、退職後の競業制限に対する代償措置の性格が含まれているものと評価することができる。

3 本件早期退職制度において、Y社が本件早期退職制度の応募者に適用除外事由がないものと信頼しているか否かは措くとして、本件早期退職制度における適用除外事由が背信的行為を行った応募者に対し、同制度上の優遇措置を享受させるべきでないとの趣旨から定められており、そのような趣旨からすると、本件早期退職制度の適用決定がされた応募者について、背信的行為が発覚した場合に、Y社がその適用を撤回することも制度上予定されているものと解されることを勘案すると、応募者の適用除外事由の有無は、Y社が調査すべきものであると解するのが相当である。加えて、応募者に適用除外事由の自己申告を期待することは不可能である。
そうすると、本件の事実関係において、本件早期退職制度の応募者が、自らに適用除外事由がある場合に、信義則上、Y社に対し、その旨を告知すべき義務を負っていると認めることはできないというべきである。

本件においては、裁判所はAの行為は不法行為に該当しないと判断しています(不当利得返還請求を認めた)。

競業避止義務をめぐる訴訟では、会社側の主張を認めてもらうのはとても大変ですが、本件では請求内容が割増退職金の返還ということもあり、一部認容してくれました。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介567 ジョコビッチの生まれ変わる食事(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
ジョコビッチの生まれ変わる食事

グルテンフリーをはじめとするジョコビッチの食事に対する考え方が書かれています。

トップアスリートが商品である自分の身体にどれほど気を遣っているのかがよくわかります。

とても勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私はだいたい一日16時間起きていて、おそらくうち14時間は(A)テニス、(B)テニスのためのトレーニング、または(C)食事というふうに時間を使っているので、テニスに秀でていることができる。・・・世界最強のアスリートと戦ってナンバーワンになるには、それだけの努力が必要ということだ。常日頃から頑固なまでの心理的そして肉体的なたゆまぬ準備が、一日14時間、週に7日続くのだ。さあ、あなたの準備は万端か?」((175~176頁)

これが世界トップアスリートの考えであり、日常生活なのですね。

これだけのストイックさをそのまま真似することは難しいですが、スピリットに共感し、自分の日常生活を少しずつ変えることはできると思います。

どんな世界にも上には上がいます。

自分があこがれる人、尊敬する人を具体的にイメージすることは、成長の手助けになると確信しています。

少しでもあの人に近づきたいという強い思いが壁を乗り越える手助けをしてくれると信じています。

配転・出向・転籍31(L産業(職務等級降級)事件)

おはようございます。

今日は、職務変更に伴うグレード格下げと賃金減額の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

L産業(職務等級降級)事件(東京地裁平成27年10月30日・労判1132号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社が採用するいわゆる職務等級制の人事給与制度の下で、Y社によって職務を変更され、これに伴い職務等級(グレード)が降級され賃金が減額されたこと等について、当該措置が無効であるとして、降級前の等級(マネジメント職のグレード「E1」)につき労働契約上の地位を有することの確認、降級前後の月額給与の差額及び賞与の差額+遅延損害金の支払を求めるとともに、当該措置が違法であり、これによって精神的苦痛を被ったことを理由とする不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料+弁護士費用)+遅延損害金を、それぞれ求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Gチームの解散により、Xがそれまで就いていたGチームのチームリーダーの職務、役職自体はなくなったものであるから、Xを同チームリーダーの地位からはずすことについては業務上の必要性が認められる。また、Xが本件人事発令により就いた臨床開発部医薬スタッフという職務は、医薬情報部がXをチームリーダーとして受け入れられなくなって、急きょXに割り当てるポストを探したところ、臨床開発部の人員が足りないので、Xの配置先となったという経過からすると、Xをそこに配置する業務上の必要性自体は認められるというべきである。

2 確かに、上記異動時にはH部長からXに医薬情報部の元のポストに戻ることを念頭に置いた説明があったにもかかわらず、Gチーム解散時には専らH部長の反対によってXの上記ポストへの復帰が実現せず、本件人事発令に至ったとの経過が認められ、前言を翻したかのような配転、処遇を強いられたXにおいて、期待・信頼を裏切られたと考えても無理からぬところがあったといえる。
とはいえ、Gチームの解散時期すら当初は未確定であり、H部長の説明にしても、その間に事情変更が生じかねないことも織り込んだ上で、将来にわたる人事異動・配置の見とおしを述べた程度のものとみるべきであり、Y社においてXに対する何らかの義務を負うような合意が成立したとみることはできない。本件人事発令と同時期にJを医薬情報部チームリーダーに充てたことについても、XとJのいずれが適任であるかについては人事上の裁量判断に属し、Xがかつて同じポストに就いていたことや、XがGチームグループへ異動する際に上記のとおりの経緯、H部長の説明があったことだけでは人事上の裁量権の範囲の逸脱を基礎付けるに足りるものとはいえない。

3 もとより、ここで生じた減収を少額ということはできず、超過勤務手当の支払額は労働実態に呼応して変動し得る不確定なものであるとの事情も無視はできないが、本件人事発令により管理職に相当するマネジメント職の地位からはずれ、その職務内容・職責に変動が生じていることも勘案すれば、Xに生じた上記減収程度の不利益をもって通常甘受すべき程度を超えているとみることはできない

マネジメント職から一般職への配転命令に伴い、減収が生じる場合、どうしても訴訟リスクが高まります。

裁判所は、本件配転命令の有効性について、東亜ペイント事件最高裁判例の規範に基づき判断しています。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介566 君の眠れる才能を呼び覚ます50の習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
君の眠れる才能を呼び覚ます50の習慣 (角川フォレスタ)

毎度おなじみ千田さんの本です。

もう何冊目かわかりませんが、どの本でも新しい気付きを最低1つはいただいております。

今回は、才能を呼び覚ます習慣、というテーマですが、つまるところ、日頃の生活における姿勢や考え方のお話です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の才能をせっかく発掘したのに、才能磨きでお金をケチる人がいる。私にはこれが信じられない。人生で才能磨きほどのローリスク・ハイリターンは存在しないからだ。・・・年収の2割を自分磨きに投資していると、1年後にはステージが変わることに気づかされるはずだ。」(79~80頁)

みなさんは、ご自身の「才能磨き」に投資していますか?

日々、レベルアップしたいという向上心を持っている人にとっては、「才能磨き」に投資することはそれほど難しい話ではありません。

問題なのは、お金ではなく時間ではないでしょうか。

才能磨きをしたいけど、日々の仕事に追われて、それどころではないという方も多いのではないでしょうか。

時間ができたら・・・と言っているうちは、一生やることはありません。

やるなら、普段より朝1時間早起きするか、夜1時間寝るのを遅くするしかないでしょう。

私は、「最近、忙しいなあ」と感じたら、脳神経外科の福島孝徳先生のことを思い出すことにしています。

「福島先生に比べたら、まだまだ余裕だな」と。

大変なときは、自分のメンターを思い浮かべるといいかもしれませんね。

配転・出向・転籍30(ナカヤマ事件)

おはようございます。

今日は、ノルマ未達成を理由とする配転・降格の有効性と未払賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

ナカヤマ事件(福井地裁平成28年1月15日・労判1132号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、福井支店から長野支店への配転命令を受け、その有効性を争ったことを契機として出勤していないところ、Y社に対し、①1か月当たり29万円の未払賃金、②未払の時間外労働賃金367万9812円及び③労働基準法114条所定の付加金232万3036円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社はXに対し、46万0010円+遅延損害金を支払え

2 Y社はXに対し、506万2984円+遅延損害金を支払え

3 Y社はXに対し、232万8186円+遅延損害金を支払え

4 Y社はXに対し、232万3036円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 ①本件賞罰規定は、Xら「M社員」に対し、地域的特性も考慮することなく、困難な売上高の達成を求めるものである一方で、それが1か月でも達成できなかった場合には、直ちに、固定給を月額10万円減額するか、Y社の決定する他の支店に異動させるという制裁を課すものであること、②本件賞罰規定上の制裁措置として、実質的な降格と配転命令があったが、Y社は、Xが制裁対象となった後、繰り返し申請に基づく降格か自主退職かを選ぶよう求めるだけで、配転命令については言及していなかったこと、③Y社側から連日のように働き掛けたのに、Xが降格に応じようとしなかったため、異動先の内示も全くないまま、突如、本件配転命令を発令したこと、④Aは、Xに対し、本件配転命令発令後、直ちに異動先の長野支店に向かうよう指示し、これに応じないのであれば自主退職をするしかないと述べたことが認められる。

2 以上の事実によれば、まず、本件賞罰規定による制裁は、その発令要件との関係で過酷にすぎ、著しく不合理であるといわざるを得ない。また、本件賞罰規定は、制裁措置として「S社員」等への実質的な降格の他に配転命令を挙げてはいるが、Y社は、制裁対象となったXに対し、自主的な降格又は退職のみを勧め、Xがこれらのいずれにも応じずにいたところ、突如として本件賞罰規定に基づいて本件配転命令を発令し、これに応じないXに対して、やはり自主退職を促したというのであって、本件配転命令の根拠となった本件賞罰規定の目的は、専ら固定給の高い「M社員」を減らすという点にのみあったと認められる
・・・以上によれば、本件配転命令は、Y社が主張するように、Xの能力開発、勤労意欲の高揚に資する面が全くないわけではなく、業務上の必要性が皆無であったとはいえないことを踏まえても、Y社の権利の濫用によるものであって、違法であると認めるほかない。

3 法26条が、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合、使用者に対し、平均賃金の6割以上の手当を労働者に支払うべき旨を規定し、その履行を強制する手段として付加金や罰金の制度が設けられている(法114条、120条1号参照)のは、労働者の労務給付が使用者の責めに帰すべき事由によって不能となった場合に、使用者の負担において労働者の最低生活を上記の限度で保障しようとする趣旨に出たものであるから、法26条の規定は、労働者が、使用者の責めに帰すべき事由により、違法に配転命令の発令を受け、これにより、発令前の勤務部署に出勤することができなくなった場合にも、適用ないし準用されるものと解される(最高裁昭和37年7月20日)。
これを本件についてみると、・・・したがって、Y社のXに対する未払賃金額を算定するに当たっては、Xが他社から支払を受けた給与等を控除するべきであるが、その限度は、XがY社から支払を受けていた月額給与29万円の4割に当たる月額11万6000円にとどまる

会社に、高額の支払いが命じられています。

本件においては固定残業制を採用しているのですが、裏目で出ているケースです。

また、上記判例のポイントには載せていませんが、会社が途中で配転命令を撤回の意思表示をしていますが、裁判所は認めていません。

解雇事案においても途中で会社側が解雇を撤回することがありますが、撤回したからそれで無事終了というわけにはいかないことを理解しなければなりません。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

本の紹介565 私の名前は高城 剛。住所不定、職業不明。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
私の名前は、高城剛。住所不定、職業不明

ハイパーメディアクリエイター高城剛さんがさまざな質問に答えている本です。

自分とは全く違う人生を歩んでいる著者がどのように物事を考えているのか大変興味がありました。

読んでみると、やっぱり思っていたように、物事の見方が全然違う人なのだとわかります。

周りにはいないタイプの方です。 とても魅力的な方だと思いました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

僕は、誰でもひとつだけ世界一になれる可能性を持っていると信じている。それを、自分で知っているか、知らないのか、が大きな違いだ。僕もあなたも世界に一人しかいないし、僕もあなたも世界一になれる『なにか』を必ず持っている。だが、それを探し出す内面への旅は、とてもハードだ。しかし、いまこそ、そのときだと思う。他者との関係で、自分を作ってはならない。自分の可能性を、どんなに大変でも追求しなければいけない。なぜなら、すべての必要なことは、必ず自分の中にあるからだ。」(204~205頁)

「他者との関係で、自分を作ってはならない」という言葉は、胸に刻みたいと思います。

差別化を図るときに、他者との関係でそれを始めるのではなく、まずは、自分が得意な「なにか」を探し出すことから始める。

その後で、その能力、可能性を活かせるフィールドを見つける、または作り出す。

順番を逆にしてしまうと無理が生じるし、やっていて楽しくないわけです。

社会のことを知るよりも自分のことを知るほうが、よほど大変ではありますが。

解雇206(日本放送協会事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、アナウンス業務等の担当者に対する業務委託契約の解除が無効とされた裁判例を見てみましょう。

日本放送協会事件(東京地裁平成27年11月16日・労経速2274号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社によるフランス語のラジオ放送においてアナウンス業務等を担当していたXが、主位的に、Y社との間で労働契約を締結していたところ、東日本大震災に際して業務を行わなかったことを理由に不当に解雇されたと主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに(請求1)、上記労働契約及び不法行為責任に基づき、賃金及び損害賠償金の支払を求め(請求2、3)、予備的に、Y社との間の契約が業務委託契約であったとしても、その解除及び更新拒絶は無効であるとして、上記業務委託契約及び不法行為責任に基づき、業務委託料及び損害賠償金の支払を求めた(請求2、3)事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、514万3100円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xがその業務遂行の方法等についてY社の指示・指導等を受けていたとは認められず、Xは、依頼された業務を第三者に再依頼することも許されており、また、就業する際の時間的・場所的拘束の程度も緩やかであったことからすれば、XがY社の指揮監督下で労務を提供していたとはいえない
報酬の支払方法や公租公課の負担等をみても、Xが労働基準法、労働契約法上の労働者であることの根拠となる事情は見当たらず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって、本件契約は労働契約とは認められず、前記業務の内容や業務遂行方法等におけるXの独立性の強さに照らすと、本件契約は、準委任契約としての性格を有する業務委託契約と解するのが相当である。

2 平成23年3月15日は、同月11日に福島第一原発事故が起き、いまだ事態は収束の様相を見せておらず、東日本在住の多くの者が不安を感じながら日々の暮らしを送っていたことは公知の事実に属するともいえ、駐日フランス大使館のように、日本に在留する自国民に対し国外等への避難を勧める国も少なくなく、実際に多数の在日外国人が国外へ避難していたことは証拠のとおりであって、そのような折に、Xが、Y社から受託していた業務より生命・身体の安全等を優先して国外へ避難したとしても、そのこと自体は強く責められるものではない
Xの他に少なくともフランス語担当者6名が国外等に避難し、その間Y社の業務に就かなかったところ、これらの6名のうち、Y社が契約を解除し、又は次年度の契約を締結しなかった者はいないのであって、Xが福島第一原発事故による影響等を考慮して同月15日に避難したことを捉えて、「本業務の実施内容が不十分又は不完全であり、改善の見込みがない」(本件契約書16条3項1号)又は「その他本件契約を継続し難い事由が生じた」(同条項5号)に当たるものと解するのは均衡を欠き相当でない。

3 Xが連絡した時刻が業務開始予定の直前であるという点も、当時、上記のような混乱した状況下であったことに照らすとやむを得ないところがある上、前記のとおり、Xは、Y社に連絡をする前にDに代役を依頼するなど、自分が当日の業務に就かないことについて一定の手当てをしたといえるのであって、Dが当時ニュース放送のアナウンス業務を担当していなかったことからすればXの代役として適役とはいえないものの、Y社の業務に与える影響を小さなものとするよう一定の配慮をしたと評し得るものである。
しかも、Xは、Bにかけた電話の中で、当日出局できないが、Dに代役を依頼したことを伝えたところ、Bから、「分かりました。」とだけ伝えられて電話が終わり、その後もY社から出局要請等を受けなかったことからすれば、こうしたY社側の応答を受けたXとしては、当日の申出がY社に了承されたものと考えたとしても無理からぬところがある。
こうした経緯を踏まえれば、連絡の時期等を含むXの対応は万全なものではないにせよ、無責任であるとして非難するのも酷なところがあるのであって、やはり上記解除事由に当たるとはいえないというべきである。

4 Y社は、公共放送・国際放送の重要性、取り分け東日本大震災が発生したような緊急時におけるその役割の大きさを強調し、Xが長年Y社の業務を続け、その重要性を認識しながら、突然職務を放棄したのは無責任であって、X・Y社間の信頼関係は完全に破壊されたとも主張する。
なるほど、緊急時の海外向け・フランス語聴取者向けの情報発信が極めて重要な役割を担っていることを否定するものではないが、東日本大震災及び福島第一原発事故発生当時の状況に照らすと、生命・身体の安全を危惧して国外等への避難を決断した者について、結果的に危険が生じなかったとしても、その態度を無責任であるとして非難することなど到底できない。
国際放送の重要性に思いを致し不安の中で職務を全うした者は大きな賞賛をもって報いられるべきであるが、そうした職務に対する過度の忠誠を契約上義務付けることはできないというべきである

会社としては難しい判断だったと思いますが、結論としては裁判所の判断に賛成です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。