Daily Archives: 2016年6月7日

解雇203(本牧神社ほか事件)

おはようございます。

今日は、神社の神職らの免職等が有効とされた裁判例を見てみましょう。

本牧神社ほか事件(東京地裁平成28年1月25日・労経速2272号11頁)

【事案の概要】

本件は、宗教法人であるY社の神職であるXらが、免職され、あるいは、休職期間満了により退職扱いとされたこと等を巡り、XらとY社との間等で、雇用契約上の地位等の有無が争われ、併せて、パワーハラスメント等を理由とする損害賠償責任の有無や未払賃金の有無等が争われている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社が主張する免職事由のうち、D代務者への不信をあおり、Y社からの排斥を企てた点と給与の無断増額の点については、Y社に生じた混乱や与えた損害の程度、意図的に行われたものであること等、その重大性や悪質な態様を勘案すれば、改めて注意・指導を与えその改善の機会を与えずとも、免職・解雇をするだけの客観的・合理的な根拠が認められるものというべきである。

2 確かにY社の定める懲戒規程によれば、神社の職員に職務上の義務違反があった場合には懲戒委員会の審査を経て懲戒処分を行うものとされている。しかし、X1の行為は、懲戒事由に当たるか否かにかかわりなく、本件規程の手続によることなく免職を行うことができる。また、弁明の機会の付与については、免職に当たり必ずその機会を付与しなければならないかはひとまずおくとしても、平成24年7月8日開催の責任役員会の席上、X1は部屋の外で聞いていたから免職の理由の説明は不要であるとして、これを制した上、免職の理由に対する意見・反論を述べていること、統理と県神社庁の長との間で協議を経ていないとする点についても、協議の方法や内容についての具体的な定めが見当たらないことからすれば、少なくともX1の免職に、それを無効とするような手続上の瑕疵は認められないというべきである。

懲戒処分をする際、一般的には適正手続(弁明の機会の付与)が保障されていることが有効要件とされていますが、今回の裁判例のように、若干心許ない状況にあっても、懲戒事由が存在することが明らかである場合には、裁判所は適正手続については大目に見てくれる傾向にありますね。

とはいえ、実務においては、適正手続を軽視するのはよくありません。

ちゃんと弁明の機会を与えるようにしましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。