Monthly Archives: 7月 2016

本の紹介579 1日に10冊の本を読み3日で1冊の本を書くボクのインプット&アウトプット法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
1日に10冊の本を読み3日で1冊の本を書く ボクのインプット&アウトプット法

久しぶりに千田さんの本です。

インプット・アウトプットといっても、知識に関することだけではなく、人脈、仕事、お金、人生といったあらゆることに関するインプットとアウトプットについて書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

せっかく多くの人に出逢っても、人脈が長続きしない人が多い。長続きしない理由は簡単だ。あなたが退屈だからだ。この世で何が辛いかといって、一緒にいて退屈な相手と無駄な時間を過ごす以上に辛いことはない。」(65頁)

個人的にはこの「人脈」という言葉の響きが好きではないですが、ともかく人のつながりの根底には、「この人と一緒にいたい」という「好き」とか「楽しい」というプラスの感情が存在します。

単に打算的な考えのもとで人のつながりを保つのは、やはり無理があります。

さまざまな会に参加しても人のつながりがなかなか広がらない人がいる反面、一切会合には出席しなくても広範囲にわたる人のつながりを持っている人も存在します。

どこまでいっても最終的にはその人の人間力なのでしょうね。

不当労働行為147(日本ロール製造事件)

おはようございます。

今日はパイプ事業部縮小に伴う組合員の雇用及び労働条件に関する団交における会社の対応が不当労働行為に当たらないとされた命令を見てみましょう。

日本ロール製造事件(中労委平成28年1月6日・労判1134号94頁)

【事案の概要】

本件は、パイプ事業部縮小に伴う組合員の雇用及び労働条件に関する団交における会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 本件団交において、Y社は、パイプ事業部は続ける、雇用は守ると回答するだけでなく、事業契約についての説明会を行うとともに、事業計画についての書面も組合に提出し説明する等、OEM先との交渉中であることを踏まえ、本件団交当時にできる範囲の具体的な説明をしており、加えて、パイプ事業部の経営状況も可能な限り説明していたのであるから、こうしたY社の対応は、不誠実なものとはいえない。

2 Y社は、4月18日の団交において、パイプ事業部は続けていく旨回答しているが、5月9日の団交において、パイプ事業部の事業計画がはっきり決まっていない、パイプ事業部を存続させるために努力している、雇用を守べく努力している等と回答していることからすると、4月18日のパイプ事業部は続けていく旨の会社の回答は、パイプ事業部を存続させるために努力することを明言したものとみるのが相当である。

3 Y社はOEM先と交渉中であり、それが確定しないとパイプ事業部の具体的な事業計画を立てられる状況になく、組合員の労働条件や処遇への影響も不確定で十分に説明できるような状況にはなかったと認められる。このような状況の下で、パイプ事業部の存続と赤字脱却のための将来展望について、会社が本件団交でした以上の説明を求められるとすることはできないから、会社の対応が不誠実とはいえず、組合の主張は採用できない。

会社とすると「できる限り」の説明をすることが求められます。

ときに、組合から回答困難な質問が投げかけられることもありますが、会社として、回答できないと判断した場合には、その理由を説明しなければなりません。

説明に合理性が認められる場合には不当労働行為にはあたりません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介578 最強の時間(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ブライアン・トレーシーが教える 最強の時間

ブライアン・トレーシーさんの本です。

一昨日、「最強の営業」という本を紹介しましたが、今回はタイムマネジメントに関する本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人は習慣で行動する生き物だ。・・・効率の悪い人は、誤って悪い習慣を身につけてしまった人たちだ。そのせいで、彼らは悪い行動習慣に生活を支配されている。会社に着くと、時間の無駄でしかない何の価値もないことにとりかかる習慣が身についてしまっている人は多い。オフィスに入ったとたん、同僚を見つけておしゃべりする、新聞を読む、メールをチェックする、コーヒーを淹れる、といったことを行う。そういう人はたいてい、そのままダラダラと1日を過ごす。・・・残念ながら今日では、会社で働く人のほとんどに、組織や自身のキャリアアップにとって無意味なことに多くの時間を無駄にする習慣が身についている。あなたはそうなってはいけない。」(79頁)

オフタイムの時間の過ごし方については、個々の習慣が強く反映されますね。

もっとも、みんながみんな、成功したい、天下をとりたいと願っているわけではないので、オフに何をしようとそれは完全に自由です。

与えられている時間はすべて自分のスキルアップに使いたいと願う人ばかりではないからね。

反面、成功することを決意している人にとって、休日な平日の早朝等の時間をいかに使うかは重大な関心事です。

時間の流れの早さを嫌という程見せつけられ、その中で時間は無限でないことを学ぶのでしょう。

日々の10分を無駄に過ごすか、力をつけるための準備にあてるのか。

その習慣をつくれるかどうかで結果は大きく変わってきます。

有期労働契約67(ラボ国際交流センター事件)

おはようございます。

今日は、Y社に労働契約法の潜脱の意図を有していたとは認められず、雇止めが有効とされた裁判例を見てみましょう。

ラボ国際交流センター事件(東京地裁平成28年2月19日・労経速2278号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の有期雇用職員であったXが、平成26年3月31日をもってY社に雇止めされたところ、Xは、Y社に対し、同雇止めの無効を主張して、地位確認、賃金請求及び損害賠償請求をする事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 契約更新手続が極めて形式的なものであったとは認められず、かえって、毎期毎にXY社間で新たな労働条件での契約更新がなされてきたものと認められることから、期間の定めが形骸化していたとは認められない。また、Xは、「なぜこれだけやっているのにあなたは社員ではないの?」と質問されるとのことであるから、「社会通念上」Y社の正社員と同視できる状況にあったとも認められない。よって、XY社間の雇用契約が、同条1号における期間の定めのない労働契約と社会通念上同視できるとは認められない。
もっとも、本件は「当該有期雇用契約が更新されることについて合理的な理由がある」(労働契約法19条2号)ものと認められる

2 Xは、担当業務の遂行能力には秀でたものがあったと思われるが、Y社の他の職員との協調性には問題が認められる。また、仕事を1人で抱え込む状態が長期間継続すると、何らかの問題がXの担当業務に発生したときに、Y社全体として責任をもって適切に対処することが困難となる弊害がある。そして、Y社の事業運営上の問題点に鑑みれば、Y社の事業運営上もXによる専任体制を維持することが困難となっていたことは明らかであり、Y社において、XY社間の雇用契約の見直しを迫られたことにはやむを得ない事情があったというべきである

3 なお、本件は労働契約法19条2号の事案であり、同条1号における「期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できる」ものでもないのであるから、解雇(同法16条)における判断と同程度の厳格な判断を求められるわけではない

4 なお、Xは、本件雇止めは、労働契約法18条・19条を潜脱する意図で実施されたと主張し、これに沿う証拠として、C氏のメールを提出する。同メールには、「新労働契約法の施行が今年4月1日。1年間雇用し、1回更新すると、労働者に、無期雇用の期待が生まれるため、本来は、来年3月で雇止めをするのが、組織運営上は望ましい。」、「こうした確約をとらずに、2015年3月末を迎え、その時になって、私には無期雇用の権利があると主張されるとかなりやっかいなことになるので」との記載がある。
・・・C氏のメールは、C氏の個人的意見の域を超えず、Y社組織全体としての意見とは認められない。
・・・そうすると、Y社が労働契約法の潜脱の意図を有していたとは認められず、Xの当該主張は採用できない。

2号事案です。

多くの場合、この2号事案ですが、上記判例のポイント3は、使用者側・労働者側ともに理解した上で主張立証をすることが求められます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介577 最強の営業(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。
ブライアン・トレーシーが教える 最強の営業

有名なブライアン・トレーシーさんの本です。

営業担当でなくても、とても参考になります。

仕事に対する向き合い方等、テクニックという言葉では片付けられない内容です。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

一流のセールスマンになると決意しよう。どんな代償も犠牲も厭うことなく、可能な時間をすべて費やし、上位10~20%に入るほど稼げるようになるまで努力するのだ。上位10%に一度も入れないのは、一度も入ると決意していないからだ。そういう人たちは、大金を稼ぎたいと思ったり、夢に見たり、そうなりたいと願ったりはするが、どんな犠牲を払ってでもトップセールスマンになってやると決意したことは一度もない。」(217頁)

成功しないのは、成功すると決意していないからだ。

願うだけでなく、決意する。

願うことは誰でもできますが、決意することは誰にでもできることではありません。

「どんな代償も犠牲も厭うことなく、可能な時間をすべて費やし」努力を続けることは、誰もができることではないです。

多くの人は、土日はゆっくり休みたい。夏休みは1日でも多いほうがいい。でも成功したいと願うのです。

願うのは自由ですが、それで成功できるのなら、それこそみんな成功できてしまいます。

周りが休んでいるときにどれだけ汗を流すことができるか。

今も昔も将来も、この原理原則は変わることはないと信じています。

不当労働行為146(高槻市(交通部)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、組合との協定締結拒否と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

高槻市(交通部)事件(大阪府労委平成28年1月8日・労判1134号93頁)

【事案の概要】

本件は、道路交通法により免許停止となった市営バス乗務員である非常勤職員の失職に関する協定締結に応じなかった市の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 市はX2とは協定を締結しながら、組合と協定を締結しない理由として、平成25年4月1日付けの改正により非常勤職員就業要綱に1日免停で失職しないことが盛り込まれたことを挙げる。
しかし、非常勤職員就業要綱は、使用者たる市がその考えにより設定、変更するものであるのに対し、協定書は労使間の合意であり、その内容を変更しようとすれば、協定の相手方である組合の意向を無視することはできないのであるから、組合が両者の性質は異なるとして、協定化を求めるのには理由があり、非常勤職員就業要綱が従前からの組合の要求を満たすように改正されたからといって、市が組合からの協定締結申入れに応じる必要はないというものではない

2 以上のとおりであるから、市が組合との間で、X2協定書と同内容の協定を締結しないことは、組合員の労働条件に関する組合からの要求事項について協定化を拒み、正当な理由なくX2に比して均衡を欠く扱いをしたものというのが相当であって、かかる行為は組合を弱体化するものであり、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法7条3号に該当する不当労働行為である。

他組合との比較で労使協定を締結しないことが支配介入にあたると判断されています。

複数組合が存在する場合には、注意が必要です。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介576 戦略は歴史から学べ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
戦略は歴史から学べ―――3000年が教える勝者の絶対ルール

歴史上の偉人の発想をベースに、現在起こっている問題を見たときに、どのように対応するのがよいかが書かれています。

示唆に富む内容であり、とても参考になります。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

機会活用戦略を知る者は、ある情報やトレンドから事態の『行き着く先』を予測して勝利を待ち構えることができる場所を独占します。・・・今の情報による流れはどこに行き着くのか。最終的にどんな展開と結末になるのか。事態を傍観するだけでは、勝利は目の前を素通りしてしまいます。機会を上手くつかむためには、カエサルのように、流れに先回りして勝利を待ち構えることが不可欠なのです。」(53頁)

ある情報を触れたときに、「へー」と思って終わる人と、「ということは・・・」と先を考える人がいます。

「ということは・・・」と考える人の中にも、考えて終わる人と、実際に動く人がいます。

どのグループが成功する可能性が高いか。

当然、実際に動く人たちは、リスクを負ってやるわけです。

その分、うまくいったときのリターンは大きいわけです。

多くの人が気がつく前に、成功する人たちは先回りして、時代が追いつくのを待ち構えているのです。

世の中にはそういう人たちがいるのです。

不当労働行為145(富士美術印刷事件)

おはようございます。

今日は、組合活動による会社の信用毀損に基づく損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

富士美術印刷事件(東京地裁平成28年2月10日・労経速2277号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Xらに対し、ビラ等の内容が虚偽であって、Xらの行為によりY社の信用が毀損され、その結果、Y社は取引先との取引が打ち切られるなどの損害を被ったと主張して、共同不法行為に基づき、損害賠償金2200万円+遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Xらは、Y社に対し、連帯して350万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xらが所属する労働組合は、団結権及び団体交渉権が保障されており、組合員である労働者のために、その労働条件を始めとする経済的地位の維持、向上を目指して活動することが認められていることに鑑みれば、労働組合が配布したビラ等の文書、掲示した幟及び横断幕等の表現が、結果的に他者の名誉又は信用を毀損しても、表現内容の真実性、表現自体の相当性、表現活動の動機、態様、影響等一切の事情を考慮し、正当な組合活動として社会通念上許容された範囲内のものであると判断される場合には、違法性が阻却されると解すべきである。

2 ・・・以上のとおり、本件各表現の内容が重要な部分において真実であることの証明がなく、また、その内容の重要な部分を真実と信ずるにつき相当な理由があるとは認められないにもかかわらず、表現活動が行われたことからすると、その余の表現自体の相当性、表現活動の動機、態様、影響等について検討するまでもなく、本件各表現は、仮に組合活動であるとしても、正当な組合活動として社会通念上許容された範囲を超えており、違法性は阻却されないというべきである。

3 A社がY社との取引を打ち切った理由については、Y社が倒産する恐れがあると判断したことが原因であるのか、Y社において争議行為が行われていることが原因であるかが判然としないところ、他に、A社との取引中止に関する事情を裏付ける証拠はないことからすれば、Xらの行為とA社との取引中止による損害との間には、相当因果関係が認められない
・・・また、Xらの行為を見たA社以外の取引先数社から、Y社との取引を打ち切られたものの、その理由については特に告知されていないことが認められる。そうすると、上記数社がY社との取引を中止した理由については不明というほかなく、Xらの行為と上記数社との取引中止の間にも、相当因果関係が認められない。

4 本件各表現の態様及びビラ等の内容は、・・・これらの行為は約1年半の間、不特定又は多数の人が認識し得る態様で多数回にわたり繰り返されていること、現に、Y社の取引先は、Y社の本社を訪問した際に、幟、横断幕及びXらによる演説などを見て、Y社に対し、倒産したのかと問い合わせることがあり、Y社は、その度に説明に追われたことなどの諸事情を考慮すれば、本件各表現の結果としてY社の信用が毀損されたことによる損害は350万円であると認定するのが相当である。

組合活動に対する使用者側の対抗手段としては、まずは差止めの仮処分が考えられます。

それに加えて、今回の裁判例のように損害賠償請求をするということです。

ご覧のとおり、裁判所が認定してくれる金額は、それほど高額にはならないことを予め理解しておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介575 好きなことだけして生きていけ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
好きなことだけして生きていけ

「好きなことだけして生きていけたらどれだけ幸せか・・・」と思う方がほとんどではないでしょうか。

タイトルからするとそんな感想を持ってしまいがちですが、本の内容はいたって真面目です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

3時間かけて終わらせている人よりも30分で終わらせる人のほうが楽しそうに、しかも質の高い仕事をしている。傍からみたらどんなに単純作業にみえても、桁違いのスピードを目指した瞬間、知的作業になる。30分で終わらせる名人には、3時間かけて終わらせるその他大勢には一生かかってもみえないものがみえている。・・・仕事を好きになりたければ、仕事のスピードをアップさせることだ。周囲から浮いてしまうくらいのスピードに達した時、あなたの人生は一変する。」(106~107頁)

仕事をスピードを上げることは、決して雑になることを意味していません。

仕事が早い人は、一定の型を持っています。

どこから手をつければよいのか、どのような手順で進めていけば効率がいいのか、というのを経験からわかっているのです。

それともう1つ。

いかに早く仕事をするか、という意識を持ち、仕事が早い人の真似をすることですね。

よくこのブログにも書いていますが、独りよがりな仕事のしかたでは、一向にスピードは上がりません。

いわゆる「すごい人」の真似をするのですよ。

「すごい人」と一緒に食事をしながら、どういうところに気をつけているのかを聞きまくるのです。

また、実際に、その人が仕事をしている姿を見て、学ぶのです。

こういう日頃の準備ができれば、必ず状況を変わります。

是非、試してみて下さい。

労働者性16(Mコーポレーション事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、クラブママの契約の性質と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

Mコーポレーション事件(東京地裁平成27年11月5日・労判1134号76頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の経営する接待飲食店(クラブ)において稼働していたXが、Y社に対し、主位的には、Y社との間に労働契約が成立しており、Y社による解雇は権利を濫用したものとして無効であって、Xは解雇後も賃金請求権を失わないと主張して、労働契約に基づき、平成26年3月1日から同年11月26日までの間の賃金+遅延損害金の支払を求め、予備的には、Y社との間に業務委託契約(準委任契約)が成立しており、Y社による解約によって損害を被ったと主張して、民法656条、651条2項に基づき、損害賠償金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、198万3079円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは、あらかじめ顧客に本件クラブへの来店を勧誘し、来店の約束を取り付けた上で、本件クラブに来店した顧客を接待していたものであり、Xの顧客が来店する予定のない日には、基本的には、本件クラブに出勤する必要がないものとされていた。また、Xは、Xの顧客が来店しているときには、基本的に当該顧客の接待に従事していた上、Xの報酬は、Xの顧客に対する売上げのみに基づいて計算するものとされており、XがXの顧客以外の来店客を接待しても、報酬が増額されることはなかった。
これらの事情からすれば、本件契約において、Xが行うものとされていた主たる業務は、Xの顧客に本件クラブへの来店を勧誘し、これに応じて来店した顧客を接待することであり、Xには、何よりも、できるだけ多くの顧客を勧誘して本件クラブに来店させることが期待されていたものと認められる。
・・・Xが挨拶や接客の方法等についてY社から具体的な指示や指導を受けていたとも認められないことからすると、Xが上記の付随的業務について店長のDから一定の指示を受けていたことをもって、XがY社の指揮命令を受けて本件契約上の業務を遂行していたとまで評価することはできない

2 ・・・本件契約について、XがY社の指揮監督下において労働し、その対価として賃金の支払を受ける旨の労働契約であったと評価することは困難であり、Xは、労働基準法及び労働契約法上の労働者に該当しないというべきである。

3 Y社は、Xが、①本件契約の締結に当たり、月額300万円以上の売上げを約束していたにもかかわらず、Xが本来例外的な位置付けであったはずの安い料金システムを多用したため、上記約束を1回しか実現しなかった、②人気のあるホステスを原告の顧客に安価に飲ませている席に優先的につかせるように差配し、本件クラブ固有の来店客の不興を買うとともに、原告が本来期待できた売上げを減少させた、③クリスマスパーティなどのイベントにも非協力的な態度をみせた、④本件クラブのホステスの同伴客をY社の同意なく自己の顧客に切り替えた、⑤Bがこれらを改善するように再三注意したのに、これらの行動と態度を改めることがなく、その結果、本件クラブの他のホステスや従業員の不満も増し、店内の雰囲気は極めて悪くなったとして、本件解約が民法651条2項ただし書の「やむを得ない事由」に基づくものであると主張する。
しかしながら、上記①について、Xは、月額300万円の売上げを約束した事実及び安い料金システムを多用した事実をいずれも否認しているところ、Xが月額300万円以上の売上げを約束し、これが本件契約の内容になっていたというのであれば、本件誓約書にその旨と300万円の売上げが達成できなかった場合の取扱いが記載されてしかるべきであるが、本件誓約書にそのような記載は認められないし、Xが安い料金システムを多用したとの事実についても、客に対する請求伝票等の客観的資料を提出することで容易に裏付けることが可能であると解されるのに、そのような資料は提出されていない。そうすると、・・・上記①に係る事実を認めるには足りない。
上記②については、Xがこれを否認している上、Bも、証人尋問において、ホステスをどの席につかせるかは基本的には店の判断で決めることであり、ホステスや「クラブママ」が自らの判断で他のホステスを自分が接客する席につかせることはできないことを認める証言をしているのであって、上記②に係る事実を認めることはできないというべきである。
上記③ないし⑤についても、Xはこれらの事実を否認しているところ、Bの上記証言及び陳述書の記載を裏付けるに足りる客観的資料は提出されておらず、これらをそのまま採用することは困難であり、ほかに当該事実を認めるに足りる証拠はない。
以上によれば、Y社の上記主張に係る事実はいずれも認めるに足りず、本件解約が民法651条2項ただし書の「やむを得ない事由」に基づくものであるとは認められないというべきである。

クラブママの労働者性が否定された事例です。

また、委任契約の中途解約について「やむを得ない事由」の有無が判断されていますが、事実認定のしかたが参考になります。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。