Daily Archives: 2016年6月15日

解雇205(甲化工事件)

おはようございます。

今日は、遺失金着服を理由とする懲戒解雇処分が有効とされ、会社の損害賠償請求が認められた裁判例を見てみましょう。

甲化工事件(東京地裁平成28年2月5日・労経速2274号19頁)

【事案の概要】

第1事件は、Y社と雇用契約を締結したXが、Xは、Y社から、Y社において遺失金が発生したところXが本件遺失金を着服し、私的に費消したことを理由い、懲戒解雇処分を受け、平成26年9月1日をもってY社を解雇されたが、本件処分は無効である旨を主張して、Y社に対し、Xが本件契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、あわせて、本件契約に基づき、給与及び賞与+遅延損害金の支払を請求した事案である。

第2事件は、Y社が、Y社において本件遺失金が発生したところXは本件遺失金を着服し、私的に費消した旨、また、上記本件遺失金が発生したのはXによる本件営業所の現金の管理等に過失があったからである旨を主張して、Xに対し、不法行為に基づき、平成24年3月30日から同年6月24日までの本件遺失金相当額及び弁護士費用+遅延損害金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Xの請求をいずれも棄却

XはY社に対し、342万9210円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Xは本件営業所の経理担当責任者として本件営業所の経理事務に従事していたところ、本件営業所において少なくとも平成24年3月30日から平成26年6月24日までの間に311万7464円の本券営業所の金員を故意に着服し、私的に費消したものというべきである。
Xの上記行為は、本件就業規則の規定にいう懲戒解雇の事由に当たるものというべきである。

2 XのY社における職位、Xが上記行為を行った期間及びXが着服、費消した金額にかんがみれば、XがY社から上記行為を理由に懲戒解雇を命じられることもやむを得ないというべきであって、本件処分の相当性に欠けるところはないというべきであるし、また、本件処分は労働基準法20条1項但書の「労働者の責に帰すべき事由に基づき解雇する場合」に当たるものというべきである。

3 仮にXがY社から本件ヒアリングにおいて本件退職届を作成して提出するよう強く要求されていたとしても、その後の時間の経過及びXの代理人弁護士の立会いをも勘案すれば、Xには、本件処分に関し、弁明の機会が十分に与えられていたというべきである

4 以上の検討に照らせば、本件処分は有効なものというべきである。

横領事案の場合には、社内のうわさに基づいて懲戒解雇をしてはいけません。

しっかりと調査をし、事実確認を行った上で、弁明の機会を与え、その上で、懲戒解雇をしましょう。

手続を行う際は、顧問弁護士等のアドバイスを受けることをおすすめいたします。