守秘義務・内部通報10 障害福祉施設の従業員の内部通報を理由とする解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、障害者福祉施設の従業員に、県や市への通報により施設の信用を損ねたとする解雇が無効とされた裁判例を見てみましょう。

兵庫県・川西市事件(神戸地裁令和2年12月3日・労経速2451号52頁)

【事案の概要】

甲事件は、Y社の運営する障害者福祉施設である「a施設」に勤務していたXが、Y社の理事長であるY2及び被用者であるY3から、XをY社から排除する意図のもとにセクシャルハラスメント及びパワーハラスメントを受けたほか、虚偽の事実を流布され名誉を棄損されたとして、Y2及びY3に対しては共同不法行為に基づく200万円の損害賠償の連帯支払及び名誉回復措置を、Y社に対しては安全配慮義務違反、代表者責任又は使用者責任に基づく同額の損害賠償の連帯支払及び名誉回復措置を求めるとともに、Y社がXを平成28年10月24日付けで解雇したことに関連し、県及び市がY社と共謀の上、Xに対し不当な取扱いを行ってY社と一体となって本件解雇を招来したとして、Y社、県及び市に対し不法行為又は国家賠償請求に基づく210万円の損害賠償の連帯支払を、被告県及び被告市が障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律18条に反する情報漏示を行ったことにより損害を受けたとして、県及び市に対し国家賠償請求に基づく50万円の損害賠償の連帯支払をそれぞれ求めた事案である。

乙事件は、本件解雇が防止法16条4項、公益通報者保護法3条に違反し、又は解雇権濫用により無効であるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の地位の確認を求めるとともに、平成28年12月から本判決確定の日までの給与(月額17万7000円)と賞与(1回当たり34万4000円)の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
→バックペイ、付加金認容

Xのその余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 本件解雇が防止法16条4項の解雇禁止に違反する旨のXの主張は、前提を欠くものであって採用することができない。

2 本件解雇が保護法3条3号の解雇禁止に違反する旨のXの主張は、前提を欠くものであって採用することができない。

3 本件解雇には客観的に合理的な理由があるとまでは認められない。

4 解雇は、労働者を職場から排除し、その生活の糧を奪うという効果をもたらすものであるから、これに至る過程で、十分な指導・注意、場合によっては懲戒処分などがなされ、それでも改善されない場合に検討されるべき手段である。しかし、上記のとおり、Y社は、Xに対する十分な指導・注意を行わず、法人内部での検討も経ないで本件解雇に至ったものである
したがって、本件解雇には、社会的相当性があるものとは認められない。

判例のポイント4では、解雇に関する一般的な注意事項が述べられています。

段階を踏むという意識を持てるかどうかが鍵となります。

解雇を行う場合には、必ず顧問弁護士に相談をしつつ、慎重に対応していきましょう。