Category Archives: 有期労働契約

有期労働契約131 1年間の有期雇用契約の試用期間該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、1年間の有期雇用契約の試用期間該当性に関する裁判例を見ていきましょう。

TBWA HAKUHODO事件(東京高裁令和7年4月10日・労判1338号5頁)

【事案の概要】

Xは、令和4年3月1日から、Y社において、雇用期間を1年間、年俸450万円(月額37万5000円)とする契約社員として勤務していた(本件労働契約。本件労働契約の雇用形態、労働条件等については、後記のとおり争いがある。)。XとY社は、令和5年1月頃以降、本件労働契約の更新について交渉していたが、合意に至らなかった。その後、Xは、本件労働契約における雇用期間が満了した令和5年3月以降も引き続きY社において就業していたが、同年7月11日以降は就業していない。
本件におけるXの請求の要旨は次のとおりである。
(1) 本件主位的請求
本件主位的請求は、Xが、本件労働契約における1年間の期間の定めは試用期間を定めたものであり、本件労働契約は期間の定めのないものであって、試用期間経過後の令和5年3月1日からは正社員相当の賃金である年俸600万円(月額50万円)の請求権を有すると主張して、Y社に対し、
〈1〉年俸600万円で期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額50万円+遅延損害金の支払並びに
〈3〉令和5年3月分から同年6月分までの未払賃金合計50万円(月額賃金50万円と同37万5000円の差額の4か月分)+遅延損害金の支払を求めたものである。
(2) 本件予備的請求1
本件予備的請求1は、Xが、民法629条1項により本件労働契約は期間の定めのない労働契約として更新されたと主張して、Y社に対し、
〈1〉年俸450万円で期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額37万5000円+遅延損害金の支払を求めたものである。
(3) 本件予備的請求2
本件予備的請求2は、Xが、仮に民法629条1項による更新後の労働契約が1年間の期間の定めのあるものであるとしても、令和5年3月以降は労働契約法19条2号に基づき引き続き更新されている、又は仮に民法629条1項による更新自体が認められないとしても、本件労働契約は令和5年3月1日頃に明示若しくは黙示の合意により1年間の期間の定めのある労働契約として更新されており、令和5年3月以降は労働契約法19条2号に基づき引き続き更新されていると主張して、Y社に対し、
〈1〉労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、
〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月分から本判決確定の日までの賃金月額37万5000円+遅延損害金の支払を求めたものである。

原審は、Xの主位的請求について、〈1〉Xが、Y社に対し、年俸450万円(毎月37万5000円)の支払を受ける期間の定めのない労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び〈2〉賃金支払請求権に基づき、令和5年7月から本判決確定の日まで、毎月25日限り、37万5000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を求める限度で認容し、その余の主位的請求を棄却した(予備的請求1及び同2の各請求は、いずれも、認容された主位的請求の範囲内の請求である。)。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社が、Xに対し、本件労働契約の試用期間中である令和5年2月28日までに、本件労働契約について1年間の期間の定めのある契約として更新することを申し入れたことは認められるものの、これをもって、Y社が本件労働契約において留保された解約権を行使したと認めることはできない(なお、Y社がXに対して、契約期間について定めのある雇用契約書を交付したのは、上記試用期間経過後の同年3月1日以降のことである。)。
かえって、Xは、令和5年3月1日以降同年7月10日までの間、引き続きY社において就業していたことが認められるのであって、客観的に合理的な理由が認められる状況にもないことも考慮すると、Y社が、試用期間中に留保された解約権を行使したとは認め難いと言わざるを得ない。
したがって、Xが、Y社に対して、本件労働契約の試用期間の満了前に、本件労働契約における留保解約権を行使した事実を認めることはできない。

2 (原審:東京地裁令和6年9月26日)
本件においては、〈1〉Y社において、従前、正社員として採用する者に対しても、原則として最初の1年間は契約社員として期間の定めのある労働契約を締結し、この期間が経過した時点で適任と認められた者に限り、期間の定めのない労働契約を締結して正社員として雇用するという採用方法をとっており、これを変更した令和元年5月以降も、一定の場合には上記と同様の採用方法をとることが可能であったこと、〈2〉本件オファー面談の際、Y社の人事局長であったCが、Xに対し、本件労働契約における1年間の期間の定めが試用期間を設けるものであり、1年後には正社員となる旨の説明をしたこと、〈3〉Xは、これを踏まえて内定を受諾し、もって本件労働契約が成立したことが認められる。
これらの事情からすると、本件労働契約における1年間の期間の定めについては、Xの適性を評価・判断する趣旨・目的で設けられたものと認められるから、上記期間は、契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。
したがって、本件労働契約については、1年間の試用期間中における解約権が留保された、期間の定めのない労働契約であるというべきである(最高裁昭和48年12月12日、最高裁平成2年6月5日参照)。

有名な論点ですが、上記判例のポイント2は非常に重要ですので、しっかりと押さえておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約130 更新回数1回の契約社員の雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間がんばりましょう。

今日は、更新回数1回の契約社員の雇止めの有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

SBモバイルサービス事件(東京地裁令和7年1月15日・労経速2588号35頁)

【事案の概要】

Xは、Y社と有期雇用契約を締結していたが、Y社は、令和2年7月31日の契約期間満了をもって当該契約を終了させるとの対応をした。本件は、XがY社に対し、以下の請求をする事案と解される。
(1)本件麗止めが無効であるとして、XがY社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び令和2年8月1日から令和5年7月31日までの賃金717万3360円の支払
(2)令和2年8月1日から令和5年8月1日までの期間について、同一労働には同一賃金が支払われるべきであるとして、B社グラフィックデザイナーとXの賃金を比較した差額261万8640円の支払
(3)Y社において、パワーハラスメントを受けたとして、不法行為又は債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、損害賠償金2302万1570円(休業損害528万0390円、治療費・交通費195万9100円、パワハラ慰謝料300万円、逸失利益873万2080円、入院代慰謝料115万円、後遺障害慰謝料290万円)並びにうち休業損害及び治療費・交通費の合計723万9490円に対するXがパワーハラスメントにより適応障害との診断を受けたとする日である令和2年1月20日から年6%の割合による遅延損害金の支払
(4)厚生年金使用者負担分相当額65万8800円及び入社祝い金3万円の支払
(5)傷病手当金を受給していた際にY社から控除された1万7795円の支払
(6)A社の就業規則及びY社の知的財産に関する就業規則の開示

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件雇用契約が更新後に期間満了となる令和2年7月31日の時点において、更新の回数は1回で、約期間は通算で9か月にすぎない。また、更新に際しては、新たに雇用契約書が締結されており、同日の時点において、本件雇用契約の終了が期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視することはできず、本件雇用契約は労働契約法19条1号には該当しない。
さらに、前記の事情に加え、Xの令和元年11月19日から同年12月2日までの「WEB スキル基礎研修」の達成率は考しくなく、本件雇用契約の更新後も、Xの業務等の状況は芳しくなく、他の同僚がXに割り振られた業務を引き取る事態が発生しており、復職後も、クルーの「ランク1」にも達しないと判断される状況であったのであるから、本件雇用契約の更新後に期間満了となる令和2年7月31日の時点において、Xに契約の更新の合理的期待があったとは認められず、本件雇用契約は労働契約法19条2号に該当しない。
したがって、本件雇止めは有効であり、本件雇用契約は今和2年7月31日の経過により終了したものと認められる。
よって、Xの雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認請求、賃金の支払請求及び雇用が継続していることを前提とした同一労働同一賃金を根拠とする金員の支払請求はいずれも理由がない。

原告本人訴訟のため、主張や争点の整理が大変であったことが伺えます(上記事案の概要「以下の請求をする事案と解される」)。

更新回数が少ない事案であっても、上記のとおり、雇止めの合理的理由が存在することをしっかりと主張立証する必要がありますので、油断してはいけません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約129 定年後再雇用者への労働契約法19条2号による更新期待がないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、定年後再雇用者への労働契約法19条2号による更新期待がないとされた事案を見ていきましょう。

東光高岳事件(東京地裁令和6年4月25日・労経速2554号3頁)

【事案の概要】

本件は、A社との間で期間1年の有期労働契約(本件契約1)を締結していたXが、Aを吸収合併したY社に対し、本件契約1の期間満了時、Xには更新の合理的期待があり、本件契約1と同一の労働条件によるXの更新申込みをY社が拒絶したことは客観的合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないため、本件契約1の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約2)が成立した、また、同様の理由で、本件契約2の期間満了時、本件契約2の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約3)が成立した、本件契約3の期間満了時、本件契約3の内容と同一の労働条件で有期労働契約(本件契約4)が成立したと主張して、Y社に対し、以下の請求をした事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労契法19条2号の「更新」とは、従前の労働契約、すなわち直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することをいうと解される。
なぜならば、労契法19条2号は、期間満了により終了するのが原則である有期労働契約において、雇止めに客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で労働契約を成立させるという法的効果を生じさせるものであるから(同条柱書)、その要件としての「更新」の合理的期待は、法的効果に見合う内容であることを要すると解されるからである。
また、労契法19条2号は、最高裁判所昭和61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁(以下「日立メディコ最高裁判決」という。)の判例法理を実定法としたものであるところ、同判決は、雇用関係の継続が期待されていた場合には、雇止めに解雇権濫用法理が類推され、解雇無効となるような事実関係の下に雇止めがされたときは、「期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となる。」としており、これが条文化されたものであるから、ここでいう「更新」は、従前の契約の労働条件と同一の契約を締結することをいうと解しているものと理解できる
さらに、更新は、民法の概念としては、契約当事者間において従前の契約と同一の条件で新たな契約を締結することをいうと解されるところ(雇用契約につき民法629条1項、賃貸借契約につき同法603条、604条、619条1項、ただし、期間については従前の契約と同一ではないと解されている。)、労働契約(労契法6条)と雇用契約(民法623条)とは同義のものと解されるから、労働契約において民法の概念と異なる解釈をとる理由はない
日立メディコ最高裁判決が、更新の期待の合理的な理由を肯定するに当たり、有期労働契約が従前の契約に至るまで継続して締結されてきたことを考慮要素とする一方、これが同一の労働条件によるものであったかは重視していないこと、有期労働契約が継続して締結される場合の実態として、労働条件について順次の微修正が行われることは通常の事態であって、これが期待の合理性に大きな影響を与えるものとは解されないことから、過去の契約関係において賃金などの労働条件に若干の変動がある場合であっても従前(直近)の労働契約と同一の労働条件で更新されると期待することに合理的な理由があるといえる場合があると考えられる。そして、ここで検討している労契法19条2号の「更新」とは何かという問題は、期待の合理的理由の考慮要素としての過去の労働条件変動を伴う契約締結が「更新」に当たるかという問題ではなく、雇止めに解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めに客観的合理的な理由がなく社会通念上相当性がない場合には従前と同一の労働条件で契約の成立を認めるという法的効果を生じさせるための要件として、どのような労働条件の契約締結について合理的期待を要求するかという問題である。したがって、日立メディコ最高裁判決が、「更新」の期待の合理的な理由を肯定するに当たり過去の有期労働契約が同一の労働条件によるものであったことを重視しておらず、有期労働契約が継続して締結される場合の実態として、労働条件について順次の微修正が行われることは通常の事態であって、これが期待の合理性に大きな影響を与えるものとは解されないからといって、労働者が解雇権濫用法理を類推適用されるための要件としての期待の合理性の対象となる「更新」について、従前の(直近の)労働契約と同一の労働条件ではなくてよいという帰結に直ちになるものではない。
そして、仮に、労契法19条2号の「更新」を同一の当事者間の労働契約の締結と解し、労働条件を問わず同一の当事者間において労働契約が締結されると期待することについて合理的理由があれば解雇権濫用法理の類推適用がされるとした場合、使用者が、従前(直近)と同一の労働条件による労働契約の締結を拒否し、従前の労働契約より不利な労働条件での労働契約を提案し、労働者がこれを承知しなかった場合には、使用者の労働条件変更の提案に合理性があったとしても、雇止めの客観的合理的な理由、社会通念上相当性があるといえない限り、従前(直近)の労働契約と同じ労働条件による労働契約が成立する結果となり、有期労働契約の期間満了の都度、就業の実態に応じて均衡を考慮して労働条件について交渉すること(労契法3条1項、2項)は困難となるから、労働契約における契約自由の原則(労契法1条、3条1項、2項)に反する帰結となる。そして、このような場合において、原告主張のように、労契法19条柱書の雇止めの客観的合理的な理由、社会通念上相当性の審査において、使用者の労働条件の変更提案の合理性が斟酌され、使用者の労働条件の変更提案の合理性が肯定されるときには雇止めに客観的合理的な理由、社会通念上相当性があることが肯定され、雇止めが有効となるといった解釈をとる場合、雇止めについての解雇権濫用法理の類推適用を法制化した労契法19条柱書の適用において、その由来及び文言とは異なって、使用者による労働条件の変更提案の合理性といった考慮要素を新たに取り入れる結果となるが、そうすべき根拠は必ずしも明らかではない。無期労働契約においては、使用者が労働者に対し労働条件の変更提案を行い労働者がこれを拒否した場合に解雇するという変更解約告知について、解雇権濫用法理(労契法16条)の下、使用者による労働条件の変更提案に合理性があれば解雇を有効とするという解釈は未だ定着しておらず、使用者による労働条件の変更提案の合理性審査基準が確立していない今日において、有期労働契約において使用者による労働条件の変更提案に合理性があれば雇止めを有効とするという解釈を採用することは、有期労働契約における当事者の予測可能性を著しく害する結果となる。
以上から、労契法19条2号にいう「更新」は、従前の労働契約と同一の労働条件で有期労働契約が締結されることをいうと解するのが相当である。

この裁判例によれば、労契法19条2号の「更新」を直近に締結された労働契約と同一の労働条件で契約を締結することを解釈になりますが、はたして本当にそうでしょうか・・・?

労働条件を変更した有期雇用契約の再締結が更新に当たらないとなると、5年ルールはいとも簡単に潜脱できてしまう気がしますが。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約128 契約期間5年・更新4回での雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、契約期間5年・更新4回での雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

ドコモ・サポート事件(東京地裁令和3年6月16日・労判1315号85頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成25年9月4日に、期間を同年10月1日から平成26年3月31日までとして有期労働契約を締結し、その後、同契約を4回更新された後、4回目の更新期間満了時である平成30年3月31日にY社から雇止めされたXが、Xには労働契約法19条2号の有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、当該雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないため、従前の有期労働契約の内容で契約が更新され、平成31年3月31日に退職したことから同日に同契約が終了したと主張して、Y社に対し、同契約に基づき、平成30年4月分から平成31年3月分までの賃金として平成30年4月から平成31年3月まで毎月20日限り23万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 このようなY社における有期契約労働者に関する雇用制度及びその運用状況に照らせば、Y社では、有期契約労働者については、無期契約労働者へのキャリアアップ(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員へのキャリアアップ及びスタッフ社員からパートナー社員へのキャリアアップも含む。)の仕組みを設ける一方で、無期契約労働者の登用試験(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員への登用試験及びスタッフ社員からパートナー社員への登用試験も含む。)に合格しない者については、長期雇用の適性を欠くものと判断し、更新限度回数又は契約期間の上限により契約を終了するという人事管理をしているものといえる。そうすると、Y社の雇用制度においては、有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験に合格しない限りは、有期契約労働者として5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていないものといえる。

2 Y社における雇用制度及びその運用状況を踏まえると、Y社の有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験(旧雇用制度下においては、契約社員からスタッフ社員への登用試験及びスタッフ社員からパートナー社員への登用試験も含む。)に合格しない限りは、5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていないこと、また、Xにおいても、上記運用に沿った有期労働契約を締結し、その後の更新状況も同運用に沿ったものであるから、Xにおいて、本件契約が、更新限度回数4回を越えて、更に更新されるものと期待するような状況にあったとはいえないこと、加えて、Xは、平成28年度及び平成29年度に、エリア基幹職社員の採用募集に応募し、選考試験を受けたが、いずれの年度においても選考試験に合格できなかったことからすれば、Xが、平成30年3月31日の本件契約の満了時点で、本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めることはできない

無期契約労働者の登用試験を設けるという手法は、比較的よく目にしますが、試験の運用方法が恣意的な場合には、結論が異なり得ますので注意が必要です。

また、ここでも、更新上限回数を一番最初の契約のときに契約内容に入れておくことがポイントです。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約127 5年上限規定に基づく雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、5年上限規定に基づく雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

放送大学学園事件(徳島地裁令和3年10月25日・労判1315号71頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で契約期間を平成29年4月1日から同30年3月31日とする期間の定めのある労働契約を締結したXが、同年4月1日からの契約更新の申込みをしたにもかかわらず、Y社から、これを拒絶されたことに関し、上記労働契約には、労契法19条各号の事由があり、同拒絶が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとも認められないから、上記労働契約は、同条により、同日以降、更新されたものとみなされ、同31年4月1日からは、同法18条により、期間の定めのない労働契約に転換したと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、上記労働契約が更新されたとみなされる同30年4月1日以降の賃金に関し、改正前民法536条2項に基づき、同年5月から、毎月17日限り、未払賃金10万9620円+遅延損害金の各支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

1 本件訴えのうち、本判決確定の日の翌日から毎月17日限り10万9620円+遅延損害金を求める部分を却下する。

 Xが、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

3 Y社は、Xに対し、平成30年5月から本判決確定の日まで、毎月17日限り、10万9620円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件雇止めは、本件上限規定を根拠にされたものであるところ、本件上限規定は、平成24年法律第56号による労契法の改正(平成25年4月1日施行)への対応として定められたものであると認められる
ところで、上記改正後の労契法18条は、雇用関係上労働者を不安定な立場に立たせる有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、安定的な雇用である無期労働契約に移行させることで雇用の安定を図ることを目的とするものであるが、本件上限規定に係る本件決定は、上記労契法改正をきっかけとして、無期労働契約への転換が生じた場合にY社の財政状況がひっ迫するということを主な理由として、主に人件費の削減や人材活用を中心とした総合的な経営判断に基づき、更新上限期間を5年と定めたと説明されるにとどまり、Y社における有期労働契約の在り方やその必要性、本件決定がされるまでに相当回数にわたって契約更新されて今後の更新に対する合理的な期待が既に生じていた時間雇用職員の取扱いに関して具体的に検討された形跡はない。
そうすると、本件上限規定は、少なくとも、本件決定がされた平成25年当時、Y社との間で長期間にわたり有期労働契約を更新し続けてきたXとの関係では、有期労働契約から無期労働契約への転換の機会を奪うものであって、労契法18条の趣旨・目的を潜脱する目的があったと評価されてもやむを得ず、このような本件上限規定を根拠とする本件雇止めに、客観的に合理的な理由があるとは認め難く、社会通念上の相当性を欠くものと認められる。

有期雇用契約締結当初に更新回数の上限を設定しないと、本裁判例のような結果になります。

したがって、5年ルール適用直前になって同種の規定を契約書に盛り込んだとしてもうまくいきません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約126 69歳時点での雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、69歳時点での雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

エイチ・エス債権回収事件(東京地裁令和3年2月18日・労判1303号86頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、有期労働契約を締結して内部監査業務に従事していたXが、同契約は労働契約法19条2号に該当し、Y社がXの更新申込みを拒絶することは客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められず、これを承諾したものとみなされるとして、労働契約に基づき、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②令和元年4月分の賃金32万5000円並びに令和元年5月分以降本判決確定の日までの賃金月額32万5000円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、X自身として、冷却期間を置いたうえで回収部と対話の機会を見出し定期報告までに解決する必要があると考えていたことが推認され、さらに、Y社代表者から、C取締役経由で回収部と接触するよう指示されていたことを十分認識していたことが推認されるから、仮にXが、Y社代表者が社内で解決すると発言したと認識し、C取締役から回収部の監査について指導を受けたと認識していなかったとしても、Xは、回収部に対する監査実施の必要性とそのための工夫等の必要性を十分に認識していたというべきである。

2 Xは、一定の時期以降、回収部の監査について、なんらの具体的な対応策も取らないままに延期を繰り返していたといわざるを得ない。Xは、Xによる回収部の監査の延期自体がY社代表者に対する問題提起であり、Y社代表者が社内で解決すると言っていたことが実現されるのを待っていたという趣旨のことを述べるが、仮にY社代表者が社内で解決するという発言をしていたとしても、前述のとおりそもそもXの認識によってもY社代表者はXに対しC取締役を介して回収部とやり取りをするよう指示していたのであるから、Xが一方的にそれを実行せずに黙示的にY社代表者へ直接の対応を求めていたというのは、Y社代表者からすればおよそ理解不能なものである。

3 本件においては、Y社代表者やC取締役から事細かな業務改善指導がなかったとしても、前記の注意指導がなされれば、社会通念上相当な注意指導がなされたものといえると解するのが相当である。

第2定年が設定していない会社の場合、どのタイミングで雇止めにするかは悩ましいところです。

年齢にかかわらず、雇止めには合理的理由が求められますので、そう簡単に雇止めをすることはできません。ご注意を。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約125 女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、女性従業員に不適切な言動を繰り返すこと等を理由とする雇止めに関する裁判例を見ていきましょう。

ゲオストア事件(東京地裁令和5年6月14日・労判ジャーナル143号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結していたXが、Y社から上記有期雇用契約の更新の申込の拒絶(雇止め)をされたことから、Y社に対し、Xにおいて上記有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があり、当該雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとはいえず、労働契約法19条により、同一の労働条件で有期労働契約が更新されたものとみなされることを主張して、労働契約上の権利を有することの確認及び未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、令和2年11月9日、f氏がトイレ掃除をしているトイレのドアをノックし、トイレから出てきたf氏を追いかけて話しかけた上、わざわざf氏と話をするために再度来店し、f氏が会社のアシスタント社員(店長を補佐する役職)のh氏に立会を求めるなど、Xと話すことを嫌がっていることは明らかであったにもかかわらず、本店店舗から出ようとしたf氏にさらに話しかけており、上記行為は、従前からXの言動に不快感を抱いていたf氏に対し、恐怖や不快感を強く感じさせ、多大な精神的苦痛を与えるものであったといえ、その他にも、e氏やj氏などの女性従業員に対する不快感を与える行動が度々あったことや、Xとf氏及びe氏のシフトが重ならないように配慮していたにもかかわらず、Xが勤務終了後に、f氏が勤務している際に再度来店したり、Xが勤務日でない(シフトが入っていない)日にわざわざ本件店舗を訪れてf氏などに話かけていることなども併せ考慮すると、本件雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとはいえない。

訴訟において、上記事実を立証できるように日頃から準備をしておく必要があります。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約124 契約更新の合理的期待に基づく雇止め無効地位確認等請求が棄却された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、契約更新の合理的期待に基づく雇止め無効地位確認等請求が棄却された事案を見ていきましょう。

内藤証券事件(大阪地裁令和5年9月22日・労判ジャーナル142号40頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある労働契約を締結していたXが、Y社から雇止めを受けたことにつき、契約更新についての合理的期待があり、雇止めは客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められないから労働契約法19条2号により契約更新された、又は雇止めの意思表示が労働組合法7条に違反し無効であるなどと主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、民法536条2項により雇止め後の未払賃金を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの業務は、臨時的・一時的なものとはいえないものの、本採用に至ってからの契約更新の回数は1回のみであり、雇用の通算期間も2年3か月にすぎず、そして、契約社員契約書には、「契約満了後は、乙(X)の能力、業務成績、勤務態度等により、契約更新の有無を判断する」旨が明記されており、Xにおいても、欠勤の頻度を含む勤務態度等により、契約更新がなされない可能性があることを認識し得たものといえ、そして、Xの勤務期間2年3か月における、取得可能な有給休暇、リフレッシュ休暇を全て取得した上での欠勤日数は50日に及んでいるところ、人事考課の内容や、Xとしても欠勤が多いことを自覚し、契約更新に支障が出ることを懸念していたことが認められるから、Xには契約更新の合理的期待があったとは認められない。

2年3か月の間に、有給休暇等とは別に欠勤日数が50日に及んでいることを理由とした雇止めが認められた事案です。

欠勤理由等によっては、雇止めの合理的理由が認められないのではないかと考え、雇止めを躊躇する場面もあろうかと思いますので、是非、参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。

有期労働契約123 介護施設での虐待通報後の雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、介護施設での虐待通報後の雇止めの適法性に関する裁判例を見ていきましょう。

グッドパートナーズ事件(東京高裁令和5年2月2日・労判1293号59頁)

【事案の概要】

Xと人材派遣等を業とするY社は、平成31年2月3日、Xの就労場所を第三者が運営する介護付有料老人ホーム、雇用期間を同日から同年3月31日までとする有期労働契約を締結した。
本件は、Xが、Y社から同日をもって上記有期労働契約につき雇止めをされたところ、本件雇止めは違法な雇止めで無効である旨主張して、Y社に対し、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、②上記労働契約に基づき、同年4月分から令和3年12月分までの未払賃金合計1108万8000円+遅延損害金の支払、③令和4年1月分以降の未払賃金として月額33万6000円の支払並びに④不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料50万円+遅延損害金の支払を各求める事案である。

原審は、上記③のうち、判決確定後の賃金の支払を求める部分については確認の利益がないとして訴えを却下した上で、本件雇止めは無効であるが、XとY社の雇用契約は令和元年5月31日を終期とする有期労働契約であるから同日をもって終了し、本件雇止めによるXの精神的苦痛は本件雇止めの無効及びその後の未払賃金の請求が認められることにより慰謝されたなどとして、上記②の請求のうち平成31年4月分及び令和元年5月分の給与から、中間収入を控除した40万5570円+遅延損害金の支払を求める限度で許容し、その余の請求を棄却した。

【裁判所の判断】

原判決主文第2・3項を次のとおり変更する。
(1)Y社は、Xに対し、56万2244円+遅延損害金を支払え。
(2)Xのその余の請求を放棄する。

【判例のポイント】

1 平成31年4月分について、Xが別会社で稼働したのは同月のうち16日から30日までであるから、同月1日から同月15日までの間については中間収入の控除は認められないが、同月16日から30日までについては中間収入の控除が認められる。
なお、Xが原審において主張する中間収入控除後の未払給与額の計算方法では平均賃金の4割を超える部分を控除することにもなり得るものであるが、他方においてXは中間収入を控除する前の未払賃金額を全額請求していることを踏まえると、労働基準法12条1項及び最高裁昭和37年7月20日判決に忠実な形で上記のような計算方法を採ることを否定する趣旨ではないと解される。

中間収入控除後の賃金額について、高裁は、原審判断を修正しています。

最判昭和37年7月20日の判旨「連合国軍関係事務系統使用人給与規程並びに同技能工系統使用人給与規程の各休業手当に関する各条は、休業期間中における駐留軍労務者の最低限度の生活を保障するために特に設けられた規定であつて、軍の都合による休業が民法第五三六条第二項にいう「債務者ノ責ニ帰スヘキ事由」に基づく履行不能に該当し、労務者が政府に全額賃金の支払を請求し得る場合においても、その請求権を平均賃金の六割に減縮せんとする趣旨に出たものではないと解するのを相当する。」

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有期労働契約122 2回更新された有期雇用契約につき、さらなる更新への合理的期待がないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、2回更新された有期雇用契約につき、さらなる更新への合理的期待がないとされた事案を見ていきましょう。

ISS事件(東京地裁令和5年1月16日・労経速2522号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結したXが、Y社に対し、本件雇用契約は無期雇用契約であり、仮に有期雇用契約であり契約期間が満了しているとしても労働契約法19条によって更新されている旨主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇用契約に基づき、令和2年10月から本判決確定の日まで毎月末日限り22万5000円の賃金の支払を求め、また、Y社が本件雇用契約の締結に当たって無期雇用契約である旨の労働条件を明示せず、Xを不当に解雇した旨主張して、不法行為に基づき、損害金150万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、11万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件雇用契約は2回更新され、その契約期間は通算して約8ヵ月となっているところ、Xは、Y社の求人情報に応募した当時29歳であって、ITエンジニア未経験者についての求人条件を満たしておらず、Y社の基幹業務を担当するITエンジニア職に就ける見込みが高くはなかったこと、Y社は、いずれの更新についても契約期間を記載した各雇用契約書を作成し、Xとの間で対面又はオンラインでの面談を行った上、2回目の更新に際して作成した雇用契約書にはXの署名押印を得るなどして、明示的に更新手続を行っていたこと、Xは、2回目の更新に際して、Y社代表者Aから、Xが従事していたライセンス管理業務に関する取引が終了する見込みである旨、営業活動を行って新しい仕事先を見つけられるよう最善を尽くすものの、最悪の場合雇用を継続することができない旨の説明を受けていたことに照らすと、Xにとって、本件雇用契約が2回目に更新された令和2年8月7日の時点で、本件雇用契約が更新されるものと期待することについての合理的な理由があったとはいえない。

更新回数が少なく、更新手続をしっかり行っていたこと等が考慮された結果となっています。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。