有期労働契約122 2回更新された有期雇用契約につき、さらなる更新への合理的期待がないとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、2回更新された有期雇用契約につき、さらなる更新への合理的期待がないとされた事案を見ていきましょう。

ISS事件(東京地裁令和5年1月16日・労経速2522号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結したXが、Y社に対し、本件雇用契約は無期雇用契約であり、仮に有期雇用契約であり契約期間が満了しているとしても労働契約法19条によって更新されている旨主張して、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇用契約に基づき、令和2年10月から本判決確定の日まで毎月末日限り22万5000円の賃金の支払を求め、また、Y社が本件雇用契約の締結に当たって無期雇用契約である旨の労働条件を明示せず、Xを不当に解雇した旨主張して、不法行為に基づき、損害金150万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、11万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 本件雇用契約は2回更新され、その契約期間は通算して約8ヵ月となっているところ、Xは、Y社の求人情報に応募した当時29歳であって、ITエンジニア未経験者についての求人条件を満たしておらず、Y社の基幹業務を担当するITエンジニア職に就ける見込みが高くはなかったこと、Y社は、いずれの更新についても契約期間を記載した各雇用契約書を作成し、Xとの間で対面又はオンラインでの面談を行った上、2回目の更新に際して作成した雇用契約書にはXの署名押印を得るなどして、明示的に更新手続を行っていたこと、Xは、2回目の更新に際して、Y社代表者Aから、Xが従事していたライセンス管理業務に関する取引が終了する見込みである旨、営業活動を行って新しい仕事先を見つけられるよう最善を尽くすものの、最悪の場合雇用を継続することができない旨の説明を受けていたことに照らすと、Xにとって、本件雇用契約が2回目に更新された令和2年8月7日の時点で、本件雇用契約が更新されるものと期待することについての合理的な理由があったとはいえない。

更新回数が少なく、更新手続をしっかり行っていたこと等が考慮された結果となっています。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有期雇用契約に関する労務管理を行うことが肝要です。